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獣医師
齋藤厚子
最適なフードで健康をサポート。フード変更のタイミングとは?

食事と健康

生き物にとって食事は生命を維持するために欠かすことはできません。
そしてヒトでもよく言われているように、食事が体の成長・健康に与える影響は大きく、好ましくない食生活が原因で生活習慣病などが引き起こされてしまう場合もあります。

犬や猫には生活習慣病という言葉はあまりなじみがありませんが、食事が健康状態に影響を与えることはヒトと同じです。
そのため、ペットの健康を守るためには飼い主さんが愛犬・愛猫の健康状態に適した食事を選択することが重要になってきます。

多くの場合は総合栄養食のドライフードを与えていると思いますが、年齢や体の状況によっては食事内容を変更することが必要になったり、食事を変更することで持病の管理がよりうまくできるようになることもあります。

では食事はどんな時に変更を検討するべきなのでしょうか?
また、何を指標に変更を行うのでしょうか?
ここからは少し具体的に変更のタイミングについてお示しします。

ライフステージに合わせたフード変更

① 成長期
犬や猫の成長は人に比べると非常に早く、一般的な体格の犬猫では約1年で成長期が終了し、成犬・成猫になります。
たった一年で大人になることを考えるとその成長スピードたるや相当なものですよね。

その成長期には骨や筋肉だけでなく体を構成するあらゆる成分や器官(皮膚や被毛、血液、脂肪、臓器、脳など)も成長したり増加させなくてはならず、その変化は劇的です。
そのために必要なエネルギーや栄養分を補充するとなると、相当量の食事を摂取しなければなりません。
しかし子犬や子猫は体が非常に小さい上に、消化器の消化・吸収能もまだ未熟なため、消化・吸収性に優れたかなり高栄養に設計された食事が必要です。

成長期用のフードは各フードメーカーから多種多様に販売されていますが、同じ成長期であってもその中で細かくステージ分けされています。

離乳期前後の子犬・子猫用では、ベビー用として柔らかいウェットタイプや非常に粒の小さなドライフードなど、そこから少し成長した子猫期にはパピー・キトン用の少し粒のサイズが大きくなったもの、成長期の後半に食べるフードを経て、徐々に成犬・成猫用のフードに変更していきます。

この期間は目安となるのは主に月齢です。
メーカーごとにフードの袋に「□カ月まで」や、「〇カ月~△カ月未満」などといった表記があります。

それぞれの月齢用のフードは単に粒の大きさが変わるだけでなく、その月齢ごとに必要な栄養成分を考慮し、また消化・吸収能がまだ未熟な犬猫の胃腸に適した設計で作られています。
そのため、月齢を参考にフードも段階的に切り替えていくことでより健康的な成長をサポートすることができます。

大型犬や大型猫では成長期が長い品種もありますので、その場合にはその間成長期用のフードを与えることになります。

ただし、成長期用のフードは嗜好性が高く、高栄養・高タンパクであることが多いため、必要以上に与えたり、成長期を過ぎてからも食べさせ続けると太ってしまいます。
成熟したら成犬・成猫用のフードに変更しましょう。

② 成犬・成猫期の食事
1歳を過ぎたら栄養バランスの取れた成犬・成猫用の維持期のフードに切り替えます。
健康上の問題がなければ、7歳~10歳頃まではこの時期のフードで維持できます。

ただし、避妊・去勢手術をするとホルモンの変化によって体の代謝が変化することから、一般的には太りやすくなってしまいます。
そのため、そのような代謝の変化を考慮した避妊・去勢手術後用のフードというものも販売されるようになりました。

太りすぎは糖尿病などの病気のリスクを上げるほか、将来的に自関節疾患などを引き起こす原因となるため、適切な食事管理と適度な運動で理想的な体型を維持しましょう。

③ シニア期の食事
犬と猫、また同じ犬猫でも大型か小型かによって多少寿命の長さは異なりますが、7歳を過ぎたことからはヒトでいう中年~高齢期に入りつつあることを意識しましょう。
7歳くらいではまだまだ元気に走り回れる犬猫の方が多いですが、内臓や関節などには少しずつ加齢性の変化が出始めます。

一見しただけではわからない変化も多いですので、この頃からは年に1回程度健康診断を受けることをお勧めします。
特に検査上問題がなかった場合でも、フードはシニア用にすることを検討しましょう。

衰えが出やすい部分として関節の動きや腎臓や心臓の機能に負担がかかるようなケースが多いため、シニア用のフードではそれらをケアするような成分が配合されているものが多くなります。

たくさんのメーカーから販売されているシニア用フードを一度店頭で見比べてみて、気になる部分をケアすることができるフードにしてみると良いでしょう。

④ ハイシニアの食事
近年はご長寿と呼ばれるほど長生きな犬猫が増えてきています。
犬では15歳、猫では20歳を超えるような子もちらほら見かけるようになりました。

ここまで高齢になると、筋力の低下や歯の問題によって硬いものを噛むことが難しくなったり、歩くことがおぼつかなくなってしまうことも多く、食事も少ししか食べられなくなってしまうことが多くなります。

ハイシニア用のドライフード等もありますので、噛む力が残っていればバランスの取れた総合栄養食を続けることをお勧めします。

ですが、実際にはだんだんと食が細くなってしまうため、嗜好性の高い食べられるものを少しでも食べさせる方が良いというケースも多くなります。
場合によっては缶詰や液状のフード、ゆでたお肉などを用意し、食べる楽しみをできるだけ損なわせずに過ごさせてあげるのも良いでしょう。

治療を目的としたフード変更

先にも述べましたがペットの健康管理をするうえで食事は最も重要です。
そのため、ペットの健康状態や体の状態に問題が生じた場合、その問題の解決方法として大きな役割を持つのもまた食事です。

治療目的や病気の再発予防で行うフードの変更には、しっかりとした目的の設定と正しいフード選びが大切ですので、まずは一度病院で健康診断を受けてみましょう。
そのうえでどんな食事が治療に役立つのかをかかりつけの病院で相談し、フードを決めると安心です。

以下にいくつかその具体的な例を挙げてみましょう。


① 肥満の改善
肥満の改善や予防のために食事を変更する、というケースは比較的多くみられます。
「肥満は万病の元」と言われるように、糖尿病や心臓病、関節疾患などの原因となるだけでなく、麻酔をかけて手術を行う場合には麻酔リスクを高くしてしまい、命に関わることもあるのです。
それを改善するためには、まずは飼い主さんがペットが肥満傾向にあること、その原因がご自身にあるということを認識しなくてはなりません。

肥満傾向の犬猫の多くは食べすぎが原因です。
おやつを必要以上にあげている場合はそれを減らすことが一番ですが、効果的に肥満を改善するためには食事療法も行うと良いでしょう。

肥満の場合に選択される食事は低脂肪・低カロリーで食物繊維などによって満腹感を得やすいタイプの食事です。
減量用、ライトタイプなどといった表記のあるものを選ぶことで、給仕量を極端に減らさずに摂取カロリーを抑えることができます。

カロリー設定は目標とする体重に合わせて行いますが、肥満の程度によって最終的に理想体重に達するまでに要する段階設定、期間は異なりますので、まずは動物病院で相談し、食事内容と食事量を決めてもらうようにしましょう。


② アレルギー疾患や食物不耐症の治療
動物のアレルギー疾患は近年増えつつあるように思います。
皮膚の痒みなどを起こすような場合もあれば、消化器症状として現れるものもありますが、食物に対してアレルギー反応を起こしてしまっている場合には食事を変更することが治療そのものになります。

まずはどんな食物に対してアレルギー反応が起こっているのかを調べ、その成分を含まない食事に変更する必要があります。
アレルギーの検査は血液検査などが必要になりますので、正しく診断してもらうために動物病院でまずは検査を受けましょう。

アレルギーの原因物質が判明したら、その成分を含まない食事を探して変更します。
あるいはアレルギーの原因となりやすいタンパクをあらかじめアレルギーの原因にならないレベルまで分解してある加水分解食やアミノ酸フード、低分子フードなどを選択するケースもあります。

食事選びは治療の肝になりますので、自己判断では行わず、かかりつけの獣医さんと相談しながら行うようにしましょう。

③ 尿石症の治療・再発予防
尿石症は年齢にかかわらず発症する疾患です。
初期には尿中に結晶がみられる程度ですが、気づかずに進行すると膀胱や腎臓に結石が形成され、頻尿や血尿の原因となる他、結石が尿道や尿管で閉塞すると急性腎不全に陥り命の危険につながる場合もあります。

その発症には生まれ持った体質的な要因もありますが、中には食事内容が好ましくないために発症するものもあります。

いずれの場合も治療や再発予防のために食事療法が必要です。

この病気は健康診断などで尿検査やレントゲン検査を受けていれば早期発見・早期治療ができます。
尿検査で結晶が認められた場合やレントゲン検査で結石が見つかった時点で尿石症に対応した食事に切り替えることを勧められると思います。

結石の種類によっては食事の変更によって溶解することができるものもあります。
溶解療法が可能かどうか、いつまでその食事を続け、維持期の食事にはいつ切り替えるのかはかかりつけの先生に確認しましょう。

④ 種々の疾患の治療補助として
動物の病気には様々な病気がありますが、多くのフードメーカーはそのような疾患の多くに対応したフードを研究し開発・販売しています。

例えばお腹の調子を崩しやすい犬猫用には食物繊維の配合バランスを調整したフードや、腸内細菌を健康に保つためのプロバイオティクスが配合されているもの、消化管に負担をかけやすい脂肪分を低くした低脂肪フードなどがあります。

また腎臓病や心臓病の犬猫用にはリンやナトリウムを制限してあるものや、負担となりやすいタンパク質を高消化性にして負担を軽減するような工夫がされています。

糖尿病用のフードでは食後の血糖値が急激に上昇しないように設計されていたり、膵臓に負担をかけないために低脂肪のものが多くなっています。

このようなフードをうまく活用することで、病気の治療効果を高めることができ、病気と闘いながらもより良い食生活を送ることができます。

これらのフードを取り入れるタイミングは、疾患の兆候が見られた時がベストです。
理想的には健康診断などで疾患を早期発見し、進行を早い段階から遅らせるために食事を切り替えると良いでしょう。

おやつを与える場合は…

食事は健康の維持のためにも治療の補助としても大きな役割を持つことがお分かりいただけたかと思います。

ここでもう一つお話ししておきたいのが「おやつ」についてです。

おやつは本来、健康管理上は必要ないものですが、しつけのご褒美としてあるいはペットとのコミュニケーションツールとして役立つものでもあります。

特別な疾患、例えばアレルギー疾患などの治療のために食事療法を行っているようなケースでは、おやつを与えることでおやつに含まれる成分がアレルギー反応を起こして治療に影響してしまうことなどが懸念されますので、基本的におやつは無し、というのが鉄則になっており、どうしてもという場合には食事として与えているフードをおやつとして与える、という方法をお勧めされることが多いかと思います。

しかし、そこまで厳密な食事管理が必要ではない場合、一日の摂取カロリー内であればおやつを与えることはそこまで悪いことではありません。
肥満の原因にならないように与える量を決め、ご褒美などとして与えるようにすれば問題ないでしょう。


おやつを与えるうえで忘れてはいけないのは、おやつの種類と量に気を付けることです。
とくにジャーキーなどは嗜好性が高く、人気のおやつですが、ものによっては脂肪分が多く含まれていたりすることから、高脂血症などの原因となってしまう場合もあります。
中には人の食べるものを日常的に「おすそ分け」してもらっている犬猫もいるようですが、これも全くおすすめできません。
ヒトの食べ物は糖分・塩分・脂肪分などが体の小さな犬猫にとっては多く、健康を害する原因になってしまいます。

おやつは食事の代わりにはなりません。
おやつを食べることで食事が進まなくなってしまっては本末転倒ですので、あくまでも食事をしっかりと食べた上でご褒美などとしておやつを与え、量も与えすぎないように気を付けましょう。

また近年は機能性のおやつも沢山販売されています。
歯磨き効果のあるもの、関節保護成分が含まれているもの、ストレスを軽減する成分が配合されているものなど、愛犬・愛猫のお悩みに合わせてチョイスしてみるのも良いかもしれません。

終わりに

食事を切り替えるタイミングは愛犬・愛猫の生涯の中で何回か訪れます。

病気の治療やその補助として勧められる食事に関しては、おそらくかかりつけの病院から提案されることも多いと思いますが、年齢に伴って変化する体に合わせた食事の変更は飼い主さんの判断で行うことがほとんどです。

私たちよりも何倍も速いスピードで年を取っていくペットたち、一日でも長く一緒に過ごすために、時々健康診断を受け、食事内容も見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか?

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