猫は人に合わせて鳴き方を決めている
猫と飼い主のコミュニケーション方法
猫は単独行動を好む動物で、犬と比べると社会性に乏しいと考えられています。たしかに猫は祖先からの習性を色濃く引き継いでおり、群れやリーダーについての感覚は犬や人とはだいぶ異なっているように感じます。
しかし一方で、動物行動学者達の研究により、猫は自分以外の猫に愛情を感じる能力があるということが分かっていますし、人間とも愛情深い関係を構築することができると言われています。実際に猫と一緒に暮らしている方は、そう実感されていることでしょう。
猫と人とのコミュニケーションは、基本的には猫の母子間でのコミュニケーション方法がそのまま使われているようです。尻尾をピンと立てて近寄ってきたり、前足で飼い主の体の柔らかい部分を踏むように揉んでみたりと子猫のように振る舞ったり、母猫が子猫にしたり、仲間同士でするグルーミングのように、飼い主の顔や手を舐めてくれます。
このように、猫のコミュニケーションはしぐさや、尻尾、目、耳などを使うことが多く、これらの様子から飼い主が猫の気持ちを察することができます。しかし、猫同士のコミュニケーションで最も大切な要素はにおいです。そのため、猫はマーキングといって自分の縄張りに自分のにおいをつけるため、頭を擦り付けたり爪研ぎをしたり、高い位置におしっこをかけたりします。
ところが、人はなかなか猫の要求には気がついてくれませんでした。そこで猫が生み出したのが、声を使ったコミュニケーションです。
猫同士のコミュニケーションでは、声はほとんど使われません。相手を威嚇する時のシャーッとか低いウゥゥゥという唸り声、発情期の鳴き声くらいで、私たちがよく耳にするニャーという声はほとんど使われてはいないようです。
子猫ですら、離乳するまではニャーとは鳴きません。ニャーと鳴き始めたら、母猫にではなく飼い主に対して色々なニャーを聞かせ、飼い主がよく反応してくれる鳴き方を覚えていくのです。
このようにして、猫達はどのような状況の時にどのようなトーンでどういう鳴き方をし、そこにどういうしぐさを伴えば、飼い主が自分の要求していることを叶えてくれるのかを学習していきます。逆に飼い主側も、猫の鳴き声や周囲の状況やしぐさから、猫の要求を読み取れるようになっていきます。つまり、お互いに学習しあい、猫と飼い主とのオリジナルなコミュニケーションを形作っているわけです。
猫が鳴き声を出すのは飼い主の注意を引きつけたいから
ポール・ギャリコの「猫語の教科書」という小説をご存知でしょうか。猫が猫のために書いた、快適な生活を手に入れるためにいかにして人間をしつけるかについて書かれた教科書の話です。これを読んでいると、人がいかに猫達の策略にはまり、それを喜んで受け入れているかということが分かります。
猫が鳴き声でコミュニケーションを取るのは主として人に対してだけであり、飼い主の反応を見ながらどう鳴けば注意を引きつけられるのか、自分の要望を伝えることができるのかを学習しているのだということを知り、やはり人は猫にしつけられている要素が強いのだということを思い知らされました。
声を使うことに関するそもそもの発端は、人の方にあると考えられています。というのも、ペットを飼っている人のほとんどが、人間に話しかけるようにペットにも話しかけているという調査結果があるからです。そこで、猫達も飼い主の注意を引きつけたい時には声を使うことを選んだのでしょう。
そう考えると、無口な飼い主の家の猫は無口で、始終怒鳴り合ってばかりいる家の猫は、やはりしょっちゅう大声で鳴きわめいているのかもしれません。
いずれにしろ、一緒に暮らしている猫があまりにもしつこくニャーニャーと鳴き続けているようであれば、猫の要求に飼い主が気づいていない証拠です。猫に関心を向け、何に困っているのかに気づいてあげましょう。せっかく猫が飼い主に合わせてコミュニケーションをとってくれているのですから、飼い主もそれに応えてスムーズなコミュニケーションを図るべきでしょう。
猫と言葉で上手にコミュニケーションを取るには
せっかく愛猫が飼い主との間にだけ有効なコミュニケーションを図ろうとしているのです。飼い主もその想いに応える努力をしなければ、一方通行になってしまい、コミュニケーションは成立しません。では、猫と上手にコミュニケーションを取るための方法を考えてみましょう。
✔︎理解するためによく観察すること
愛猫の鳴き声を理解するためには、鳴いている時の状況やその前後のしぐさをよく観察し、愛猫の気持ちを察することが大切です。ニャーと鳴いているのは飼い主の注意を引いて何か要望を伝えたいためです。そのことを前提に、愛猫の立場で考えてみましょう。
✔︎話しかける時に目をじっと見つめないこと
猫は、長時間目を見つめられると脅かされていると感じます。飼い主が愛猫に話しかける時には、ゆっくりと瞬きをしながら、長時間見つめないように注意しましょう。
✔︎言葉、語調、態度に一貫性を持たせること
愛猫に話しかける時の態度には一貫性を持たせましょう。たとえば「ダメ!」と言いながら愛猫の頭を撫でてしまっては、何の効果もありません。「やって欲しくない」ということを伝える時はいつでも、同じ言葉を強い語調で真剣に短く言いましょう。すると、その全体の様子で猫は理解するようになります。言葉ではなく、猫が威嚇する時のようなシャーッという音を出すのも良いでしょう。
上手にコミュニケーションを図り絆を深めよう
猫には、相手に意地悪をしてやろうという気持ちはありません。問題行動には必ずその行動をする理由があります。理由が分かれば、予防もできます。愛猫が飼い主にとっての問題行動を起こす場合、おそらく愛猫はその前後に何らかの信号を発しているはずです。せっかく猫達が生み出してくれた声を利用した飼い主とのオリジナルなコミュニケーション手段を活用しない手はありません。
愛猫の様子をよく観察し気持ちを理解してあげることで、愛猫のストレスを減らし、快適な環境を提供してあげましょう。そうすれば、飼い主と愛猫だけにしか分からないコミュニケーションを通して、より深い絆を築いていけるはずです。
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