・スキンシップになる
ブラッシングも愛犬・愛猫にとってもちろん快適ですが、人の手で撫でられることはスキンシップになります。愛犬・愛猫たちは、温かく優しい人の手に撫でられることが大好きになっていくでしょう。
・血行が良くなる
人間でもマッサージのあとは血行がよくなって体が軽くなります。凝りやこわばりも解消されることを経験されたオーナー様もいらっしゃるのではないでしょうか。愛犬・愛猫も同じように、体の血行がよくなり緊張もほぐれていきます。興奮することがあった日はマッサージでほぐしてあげましょう。
・動物病院での診察がスムーズに
人の手で体を触られることに慣れていると、獣医師も診察しやすくなります。診察しやすくなると、それだけ病気も発見しやすく、治るのも早まるメリットがあります。
・人も愛犬・愛猫も癒される
愛犬・愛猫の体をマッサージすると、人も癒されます。不安感やストレスを抱えていたのに、マッサージしているうちに気が楽になった、ほっとしたということ、ありませんか?これは決して気のせいではなく「オキシトシン」というホルモンの働きと考えられます。
オキシトシンは、恋人や夫婦間など親しい人との触れ合いで分泌が増えます。犬や猫などを愛情こめて撫でることで、人にも犬や猫にも分泌されることが研究でわかっています。絆も深まっていきますよ。
・病気を見つけやすい
触っていると、皮膚や被毛の様子がよくわかります。腫れ、皮膚の傷や赤みなど、異変に気づきやすいのがマッサージの大きなメリットです。特に長毛種では、皮膚の異常がぱっとみただけではわからず、触ってみて初めて気づくこともあります。
また愛犬・愛猫が触られていやがる、痛がるなどの反応からも、病気や体調不良を見つけやすくなります。
・マッサージのタイミングに気を付ける
マッサージは愛犬・愛猫がぼんやり座っている時間、甘えてくる時間、お休み前のひとときが向いています。おもちゃで遊んでいる、走り回ったあとで息が上がっている、食前食後などはリラックスしにくく、避けたほうがいいでしょう。
猫の場合は夢中になって外を見つめているときも、マッサージには向いていない時間です。また愛犬・愛猫ともぐっすり眠っているときはそっとしておきます。
・力は入れすぎない
あまり力むと、痛がってマッサージを嫌いになってしまう可能性も。柔らかく触るようにしてください。大型犬や毛がかための子には、つい力が入りやすいので気を付けてください。
・アクセサリーは外す
指輪やブレスレットは被毛に引っかかったり、皮膚を傷つけたりするなど思わぬケガをさせる恐れがあります。アクセサリーは必ず外してからマッサージしましょう。長すぎる爪も危険です。
・嫌がったらすぐやめる
身をよじるなどの反応が出たらすぐにマッサージは中止しましょう。また犬の場合は、あくびが緊張や不安のサインの場合が多くあります。あくびを始めたら、いったん休憩してください。猫はしっぽを「ばたんばたん」と大きく振り始めたら、いらいらのサインです。マッサージは終わりにしましょう。
愛犬・愛猫へのマッサージのコツ
・愛犬・愛猫がお手入れできない場所からスタート
マッサージに慣れていない愛犬・愛猫にはいきなり全身ではなく、少しずつ始めることがポイント。頭のてっぺんや、胸のあたりなど、愛犬や愛猫が自分でお手入れしづらい場所からマッサージするのがおすすめです。お尻周辺や足の先など苦手な場所を触るときは、おやつを用意しておくのもおすすめです。
・優しく声をかけながらマッサージ
「気持ちいいね」「いい子だね」と優しく声をかけながら、マッサージしてあげましょう。オーナー様がゆったりした気持ちでマッサージすると、愛犬・愛猫もリラックスできます。
・抱っこでマッサージも
できればマッサージのとき抱っこの練習もしておきます。抱っこができるようになると、動物病院で診察台にあげるときや、万が一の災害で避難するとき、高齢になってから運ぶときも楽です。
・うまくいかないときは動物病院に相談
愛犬が唸る、愛猫が咬みついてくるなどマッサージがうまくいかないときは、無理強いせず動物病院に相談しましょう。触られるのが苦手な犬や猫もいますし、痛みがあり何か病気が隠されている可能性もあります。マッサージ教室を行っている動物病院もあるので、問い合わせてみましょう。
マッサージタイムを、日課にしていきましょう。無理強いせず、ゆったりした気持ちで触ることが大切です。愛犬・愛猫はもちろんオーナー様も癒される毎日のマッサージで、絆をさらに深めていきましょう。
肥大型心筋症は心臓の筋肉が分厚く肥厚することによっておこる心臓の病気です。
心臓の動きには拡張と収縮という2つの時期があり、拡張期に心臓の内腔が広がることで心臓の中に血液を満たし、収縮期に心臓がギュッと縮まることによって中に満たした血液を肺や全身に送り出します。
肥大型心筋症は、心臓の筋肉が肥厚するため心臓がのびにくくなり、拡張機能が落ちてしまうことに加え、心臓の内腔自体が狭くなってしまいます。
肥大は特に左心室と呼ばれる部屋で顕著で、狭くなった内腔には十分に血液を満たすことができなくなるため、1回の心拍で全身に送り出せる血液が少なくなってしまいます。その為、それをカバーするために心臓は心拍数を増やして何とか全身への血流を維持しようとします。しかし、心拍が早くなればなるほど、心臓への負担は大きくなり、運動などには耐えられなくなります。
初期にはあまり症状は見られません。ある程度進行して、呼吸器症状が出始めて気づくことが多い病気です。
肥大型心筋症になると、左心室に血液が入っていかない一方で、その手前にある左心房に血液がうっ滞するようになり、左心房が大きく拡大していきます。左心房は肺から戻ってきた血液を受ける部分ですので、左心房の血流うっ滞はやがて肺にも影響を及ぼすようになり、肺水腫や胸水の貯留など、呼吸困難につながる症状がみられるようになります。
ここまでくると安静にしているのに呼吸が早い、舌が青っぽい(チアノーゼ)、咳が出る、あるいは猫では普段あまり見られない開口呼吸がみられるようになります。より重篤になるとぐったりと横たわり、起き上がることもできなくなってしまうことがあります。
また、血流がうっ滞した左心房の中で血栓と呼ばれる血の塊ができてしまうことがあります。これが全身へ流れる血流にのって流れてしまうと、太い大動脈を通り、下腹部で左右の足に分岐する部分で詰まってしまう『血栓塞栓症』をおこすことがあります。血栓が詰まると激しい痛みと急性に起こる後ろ足の麻痺によってペット自身が苦しがって暴れるような状態になります。
この状態は非常に危険な状態で、命に関わる緊急事態です。
肥大型心筋症の原因としては遺伝的なものが疑われていますが、はっきりとは解明されていません。
特定の品種で好発しやすい傾向があり、よく知られている猫種としてはメインクーン、ラグドール、スコティッシュフォールド、アメリカンショートヘア、ノルウェージャンフォレストキャット、ペルシャなどです。オスの方がメスに比べて発生が多いようです。
犬では発生はあまり多くありませんが、ジャーマンシェパードやダルメシアン、ポインターが好発犬種として知られています。しかし、好発猫・犬種だけでなく、日本猫や雑種でも発生は見られます。
発生年齢は様々で、1歳未満の若齢からおこるものもありますが、一般的には中年齢以降での発生が多く見られます。
好発品種として知られている品種の場合、数年に一度ペットドックを受けることをお勧めします。初期の肥大型心筋症は診断が難しく、心雑音なども顕著ではないため、症状が出て初めて検査・診断されることが多いのが現状です。
しかし、レントゲン検査や心エコー検査を受けることによって、症状が出る前に偶発的に発見できることもあります。早期発見できれば、経過を見ながらお薬を早い段階で始めることができ、進行の抑制につながります。
検査としては血液検査、レントゲン検査、超音波検査(心エコー)がメインです。
血液検査では心臓に負担がかかっていることで血液循環が悪くなり、腎臓や肝臓など他の臓器にも影響が出ていないかを調べます。と同時に、高齢の猫では甲状腺ホルモンの分泌が過剰になって心肥大が起こることもあるため、ホルモン検査なども行われます。
レントゲン検査では、心臓の形や大きさ、肺水腫がないか、胸水がたまっていないかどうかなどをチェックします。
心エコー検査では心臓の壁の厚さや左心房の大きさを計測したり、収縮・拡張機能を測定したりと、心臓の動きをリアルタイムに見ながら心臓を評価していきます。血栓などができていないかどうかも重要なポイントになります。
心エコー検査時、心臓の動きに異常があったり、頻繁に倒れるなどの症状がある場合には心電図検査なども行われます。
このような検査を経て、治療に必要なお薬を検討していきます。
肥大型心筋症の治療は内服薬による治療です。
残念ながら、一度肥大してしまった心臓は元に戻ることはありません。心臓にかかっている負担をできるだけ軽減し、二次的に起こる肺水腫や血栓などに対して予防的な治療を行うことで、できるだけ進行を抑制し、苦しくならないように管理していくことが目的となります。
治療薬にはいくつか種類があり、症状の有無や肺水腫・胸水の有無、血栓症のリスクなどによっていろいろな組み合わせで処方されます。
主なものとしては血管を拡張させて血圧を下げ、心臓の負荷を減らす血管拡張薬、頻脈がある場合に心拍数を抑えるために使用するβ遮断薬、尿量を増やして循環する血液量を減らすことで心臓の負荷を減らし、肺水腫の治療としても使用される利尿薬、不整脈が頻発する場合には抗不整脈薬、血栓症の発生を予防する抗血栓薬などが処方されます。
症状が重症化すればするほど、お薬の種類も量も増えていきます。小型犬や猫ではたくさんのお薬を飲ませることが困難なこともあり、投薬に必死になりすぎてペットを苦しくさせてしまうこともあります。そのような場合は獣医師に相談し、お薬の量や剤型を変更してもらったり、優先順位の高いものを選んで処方してもらうようにしましょう。
心臓病の治療は生涯続きます。ペットにとっても飼い主さんにとっても続けられる方法でなければ、お互いに負担になってしまいます。投薬が大変な時は、遠慮せずに獣医師や看護師に相談し、この病気とうまく付き合っていく方法を探しましょう。
心エコー検査で血栓がある、もしくはその兆候があると指摘された場合は特に注意が必要です。血栓が血管に流れていき、詰まってしまうと、後躯麻痺や突然死の危険があるからです。抗血栓薬は欠かさず飲ませ、できるだけ安静に過ごしましょう。
万一、血栓が血流にのって流れてしまった場合、大動脈という太い血管は通過できますが、多くは下腹部で左右の足に向かって分岐する部分で詰まってしまいます。これが『血栓塞栓症』という状態です。
血栓が詰まると激しい痛みが生じ、片方または両方の後ろ足が麻痺して立てなくなってしまいます。血栓が詰まった方の足は冷たくなり、発症したペットは痛みと苦しさからパニックになり、介抱しようとした飼い主さんが噛まれたりけがをすることもあるほどです。
このような状態のときは緊急処置が必要ですので、深夜であっても夜間の救急動物病院へ行くなど、迅速な対応が必要です。
治療は心臓や痛みのケアをしながら、血栓を溶かす治療を点滴で行いますが、これは時間との戦いでもあります。
血流が遮断された状態が長く続くと、うまく血栓が溶けてくれた後に再灌流障害(血流が遮断された部分に蓄積した有害物質が全身に流れることによって他の臓器に様々な障害を起こすこと)をおこし、それが命に関わることもあります。また、血栓溶解療法自体がうまくいかず、そのまま命を落とすケースもあります。
治療がうまくいき、無事退院できたとしても安心はできません。
一度血栓症を起こした子は、一年以内に再発する可能性が高いため、より積極的に抗血栓療法を行う必要があります。
血栓溶解療法薬は非常に高価です。また、同じ治療が2回目もうまくいくとは限りません。できるだけ血栓ができないように予防することがとても重要です。
肥大型心筋症はある程度進行してしまうと生存期間が短く、血栓症などの発症が伴うとペットも飼い主さんも非常に苦痛を強いられる病気です。
そのような思いをしないためにも、数年に一度、ペットドックなどで健康状態をチェックしてもらい、早期発見・早期治療につなげられるようにしてあげたいものです。
「環境エンリッチメント」あまり聞きなれない言葉かもしれません。環境エンリッチメントとは「動物福祉の立場から、飼育動物の幸福な暮らしを実現するための具体的な方策」と定義されています。では犬や猫にとって幸福な暮らしとは何でしょうか。
健康で飼い主さんと暮らすことはもちろん、犬や猫の本能が刺激され、ストレスや退屈をを解消できる暮らしだと考えらえれます。動物園や水族館では、動物たちの環境エンリッチメントを重視した展示が増えています。例えばヒグマの餌をチップの下に隠して餌を探しながら食べさせたり、木やプールを設置して遊んだりできるようにしている動物園があります。
他にもオラウータンのロープ渡りは有名です。またホッキョクグマの餌を、氷の中に入れて与えている動物園もあります。ペンギンエリアには波があるプールを設置して、自然に近い環境を作っている水族館も。動物園や水族館に行ったときは、意識して見学してみてください。
犬や猫も本来の習性や行動が満たされる環境に置かれると、退屈な時間やストレス・不安が減少すると言われています。大げさにする必要はなく、生活環境を少し工夫するだけで、環境エンリッチメントは可能です。例えば猫は高い場所に行けるようにする、犬はフード探しゲームなどで刺激を受けることができます。
犬は嗅覚を使ったゲームで探す欲求が満たされます。フードを詰めることができるおもちゃを、家の中に隠すゲームはおすすめです。匂いをかぎ分けて探す喜び、見つけたときの充足感は犬ならでは。狩猟本能がある犬なら、フードを見つけたら飼い主さんに報告するようになるかもしれません。
野生の猫は、食料となる小動物の狩りに1日の多くを使っています。そのため食事の回数は、1日複数回です。フードを何回かに分けて、与えるようにしてみましょう。さらに転がすとフードが出てくるおもちゃを使って、狩猟本能を刺激してあげましょう。少しずつ食べるので、早食いや肥満予防もできますよ。
犬は本来、群れで暮らす社会性のある動物。愛犬にとって、飼い主さんやその家族は群れのメンバーです。そのため、家族が出かけてしまった日中を1匹で過ごすことは退屈で、苦痛に感じがち。留守番中に吠えたり、破壊活動をしたりしている場合は、1匹で過ごす時間がストレスになっている可能性があります。
当然飼い主さんは、1日中犬と一緒にいるわけにはいきません。それでも毎日一緒に遊ぶ時間を取る、たっぷり運動をさせることが重要です。ひっぱりっこゲーム、取ってこいゲームなどで一緒に楽しく過ごすだけでもかなり効果的です。留守番中も、おやつを入れるおもちゃで遊べるようにしてあげましょう。
猫は高いところを上り下りすることが大好き。キャットタワーがあれば、運動不足やストレス解消になります。部屋や外を見渡せるように設置すると、なおよいでしょう。キャットタワーに小部屋が付いているタイプは、潜むことができるので人気です。壁に取り付けるキャットウォークもあると、猫は喜び
ます。
キャットタワーやキャットウォークを置くスペースがない場合は、出窓や本棚、タンスなどを上手に利用します。物を置かないスペースを作り、ケガをしないようにしてあげましょう。窓辺に置くと、小鳥や虫を眺められるのでおすすめです。
犬はかつて、体の大きさにちょうど合った木のうろや洞穴で生活していました。家では体の大きさにあったクレートを用意し、好きな敷物を敷いて犬の巣穴にしてあげましょう。パーソナルスペースができることで、犬は落ち着いて過ごすことができるようになります。
猫も狭くて暗い場所が大好き。見知らぬ来客や何かに不安を覚えたときも、入り込める場所があると静かに過ごすことができます。クレートは便利ですが、ほどよい大きさのダンボールに敷物を入れるだけでも十分です。
犬も猫も、それぞれの特性にあったおもちゃを用意します。おもちゃは知能を刺激し、退屈を解消してくれるグッズです。年齢は関係なく、シニア犬やシニア猫にも与えて遊びましょう。飼い主さんとのコミュニケーションツールとしても、おもちゃは重要です。
犬はロープなど噛むことができるおもちゃ、またパズルになっているような知育おもちゃもおすすめです。他にもボール、噛むと音がなるおもちゃなどを与えましょう。噛むおもちゃは、固すぎるものだと歯を傷めるので気を付けてください。
猫には狩猟本能が刺激される、ひらひらするおもちゃや、ネズミなど小動物のおもちゃがいいでしょう。猫が興奮するように、おもちゃの動かし方を工夫して遊んでください。
どちらの場合も、安全な素材を使っているもの、壊れにくいもの、誤飲する危険性が少ないものを選びます。出しっぱなしにすると、すぐに飽きてしまいます。必ず片づけて、飼い主さんがおもちゃ遊びのコントロールをすることが大事です。
環境エンリッチメントは、本当に少しの工夫でできることがお分かりになったと思います。これだけでもストレスが解消され、犬も猫も生き生きとした時間を過ごすことができます。何より飼い主さん自身も、楽しくなりますよ。
犬のトレーニングと聞くと、対象は大型犬だと思っている方が多いかもしれません。しかし、大型犬はもちろん、小型犬にもトレーニングは必要です。一昔前は、犬は番犬として外に繋ぎ飼いされていることが一般的でした。その頃の犬には、不審者の侵入を知らせるために吠えたり、場合によっては侵入者に襲いかかったりすることが求められていました。そのため、あまりトレーニングに重きが置かれていなかったのです。
しかし、今や室内飼いの犬が増え、人と一緒に暮らすことのできる犬が求められています。また、鳴き声や犬の行動が原因となる近隣トラブルも避けなければなりません。犬と一緒に暮らしている方が、犬と共に快適に暮らせることも必要ですが、近隣の方達や、散歩やドッグラン、動物病院などで出会う人や犬などともうまく過ごすことが求められているのです。特に、大きな自然災害が増えてきている最近では、避難所で一緒に暮らせるかどうかは、その犬の生涯を大きく左右する問題となるでしょう。
そのためには、幼犬の頃の簡単なしつけだけではなく、人間社会の一員として暮らすことのできる犬にするために、きちんとしたトレーニングを受けさせることが必要なのです。
ヨーロッパでは、犬を飼い始めることはトレーニングを始めることを意味しています。飼い犬が他人に障害や損害を与えた場合のペナルティが大きいため、ごく普通のこととしてすべての飼い主が一定水準のトレーニングを受けているのです。
ヨーロッパでは、最もトレーナーにふさわしいのはその犬の飼い主であるという考え方が一般的です。そのため、訓練所に犬を預けてトレーニングをしてもらうのではなく、一定の期間スクールに通い、飼い主と愛犬が一緒にインストラクターから指導を受ける方式が普及しています。
また最近では、「叱る・罰する」ことはせずに「褒める」ことで犬の良い点を強化していくトレーニング法が一般的になりました。
これらの考え方は、最近の日本にも普及しつつあります。愛犬と一緒にトレーニングを受けられるスクールもできてきましたし、トレーニングも、叱るのではなく褒めることで良い点を強化していく方法が一般的です。
犬と一緒に暮らしている飼い主さんは、スクールなどをうまく利用して、ぜひ愛犬に基本的なコマンドを出し、愛犬が喜んでそれに従うような関係になってください。
基本的なコマンドは学習済みという前提で、今回はご自宅で飼い主さんが愛犬と絆を築くために必要な、ごく基礎的なプログラムを紹介します。
使うコマンドは「おいで」「お座り」「伏せ」「待て」の4つです。これらのコマンドを使って、このプログラムでは『愛犬が喜んで飼い主さんのコマンドに従い、落ち着いて自分の場所にじっとしていられるようになること』を目的にしています。
このプログラムは、ご褒美として愛犬が大好きなおやつを使います。褒めるときに与える1回の量は少量なので、小さいものか、またはちぎって小さくできるものを選んでください。1回のプログラムで使うご褒美の目安は15個ほどです。これを、すべて片手で持てるくらいの大きさにしましょう。
しっかりと目標が達成できるまでは、1日最低2回は練習しましょう。タイミングは生活リズムに合わせて構いませんが、理想は、食餌前のお腹をすかせているタイミングが良いでしょう。1回の練習時間は10分を目安としましょう。
このプログラムを実施するときには、下記について注意してください。
1. コマンドを出す口調
命令口調ではなく、話しかけるように、ゆっくりと優しい声で出しましょう。
愛犬を緊張させないようにしてください。
2. ご褒美をあげるタイミング
コマンドを出す前にご褒美をあげてはいけません。そうしてしまうと、おやつをもらわないと動かないようになってしまいます。
また、コマンドに従った場合、ご褒美は3秒以内に与えてください。時間が経ってから与えても、それがコマンド成功に対するご褒美だということが愛犬には伝わりません。
3. 飼い主さんの態度
プログラムの最中に余計な言葉を掛けたり愛犬を撫でたりしてしまうと、愛犬はプログラムに集中できません。特に最初のうちは、飼い主さんの方が愛犬と対面するように位置どり、お互いにプログラムに集中しましょう。
4. 愛犬への励ましを忘れずに
特に最初の頃は、コマンドの意味を分かっていてもうまくできないことが多いかもしれません。そのような時は、合間に愛犬が得意なコマンドを混ぜて、励ましながら進めるようにしてあげましょう。愛犬が楽しみながら練習できることが大切です。
5. 上達してきたときの対処方法
最初の頃は、コマンドを上手に実行できる都度、ご褒美をあげましょう。愛犬がきちんと学習し、簡単にできるようになってきたら、少しずつご褒美をあげる回数を減らしていきます。いつご褒美をもらえるのかわからない状況の方が、愛犬は学んだことを忘れなくなるからです。ご褒美の頻度は、様子を見ながらうまく調節しましょう。
6. うまくできなくても叱らないこと
トレーニングの時間は、愛犬にとって楽しい時間でなければなりません。叱って言うことをきかせても、叱る人がいない時には言うことを聞かない犬になってしまいます。コマンドをきちんと実行すると褒められるので嬉しい、楽しいと思ってもらうことが大切です。
7. 練習場所
室内飼いの場合は、ソファやベッドのような愛犬のお気に入りの場所ではなく、床の上で行ってください。
きちんとコマンドに従えるようになったら、外などの興奮しやすい場所でもトレーニングを行い、どこでも落ち着いて飼い主さんと行動できるようにしていきましょう。
基本セットは、下記の1〜4の組み合わせと終了の5です。最初のうちは、うまくできないかもしれませんが、繰り返し練習することで、うまくできるようになっていきます。うまくできるようになったら、この4つのコマンドを複雑に組み合わせて練習しましょう。
1. 呼び寄せる
くつろいで落ち着いた状態の愛犬を呼びます。
何度も名前を呼ぶのではなく、1度だけ呼ぶようにしましょう。
2. お座り
おやつを持った手を後ろに隠してから、「お座り」とコマンドを出しましょう。
コマンドに従った場合は「よし」などと声を声をかけながらすぐにご褒美を1つだけ与えます。
もしもお座りをしないとか、興奮してどうにもならなくなってしまった場合は、プログラムをすぐに終了してください。愛犬がおやつを欲しがっても無視します。30分は無視しましょう。その後、愛犬が落ち着いたら再開します。
3. 伏せ
お座りができたら、次は「伏せ」のコマンドを出しましょう。
上手にできたら、すぐにご褒美をあげます。
もし、愛犬がまだ「お座り」と「伏せ」を区別できない状態の場合は、少し場所を移動して、改めてそこで「お座り」をさせるのでも構いません。
4. 待て
次のコマンドは「待て」です。飼い主さんは、「待て」のコマンドを出したら1歩後ろに下がりましょう。愛犬がそのまま一緒について来ずに、その場で待っていられれば合格です。ご褒美をあげてください。
愛犬が待っていられずについて来てしまった場合は、「お座り」のコマンドを出します。従った場合はすぐにご褒美をあげます。
「待て」ができるようになって来たら、5秒、10秒、15秒と待ち時間を少しずつ伸ばしていきます。
また、待てをさせる時の飼い主さんの位置も、少しずつ愛犬から距離を置くようにしていきます。
最終的には、飼い主さんが隣の部屋などの見えない場所に行っても落ち着いて5分ほど待っていられるようになることを目指しましょう。
5. 終了
トレーニングにはメリハリが必要です。終了する時は、はっきりと終わりだということを知らせます。
また、愛犬が気持ちよく終了できるように、最後は愛犬が必ずうまくできるコマンドを出すようにしましょう。
最後のコマンドがうまくできてご褒美をあげたら、「終わり!」と言いながら手を軽く叩いて愛犬を解放し、思う存分撫でてあげましょう。
このプログラムは、本当に基礎的なことしか行っていません。しかし、このプログラムを毎日練習することで、飼い主さんと愛犬の絆は深まります。
愛犬が楽しみながらトレーニングをするためには、飼い主さんが楽しんでいなければなりません。飼い主さんの緊張は、愛犬にも伝わります。自宅でトレーニングをすることについて、あまり難しく考える必要はありません。前述の注意事項さえ守れば、きっと愛犬との絆を築くことができるはずです。
何回か練習を重ねるうちに、愛犬は落ち着いてコマンドに従えばご褒美がもらえることを学習します。最初のうちはうまくいかないことの方が多いかもしれませんが、諦めずに根気よく続けましょう。