愛犬に新しいことを教えようと何度も号令をかけるとき、いたずらをしている愛犬を叱るとき、そんな大事なシーンで愛犬が大あくびをしたことがありませんか?人の話を聞いていないのかな?飼い主をバカにしている?とむっとしてしまいますよね。
しかし愛犬は飼い主さんの話に飽きているのではありませんし、決してバカにしているのでもありません。「どうか落ち着いてください、ボク(ワタシ)は不安でどうしたらいいかわかりません」と必死に訴えています。
これはカーミングシグナルといって、自分だけでなく相手も落ち着かせようとする犬の言語の1つです。あくびをすることでイライラしている飼い主さんを落ち着かせようとし、不安な自分の気持ちをなだめています。
犬のカーミングシグナルには地面を前足でかいたり、背中を向けたりするなど他にもたくさんあります。さまざまなカーミングシグナルを使って、群れで暮らす犬は犬同士の争いを避けてきました。
カーミングシグナルは犬同士では伝わっても、人間には「ふざけている」「バカにしている」などと誤解されやすいものも多くあります。あくびもその1つといえるでしょう。
もししつけをしているときやいたずらを注意をしているときに、愛犬があくびを始めても叱らないでください。決して怠けてたり飼い主さんをバカにしたりしているわけではない、ということを知っておきましょう。もしかしたら飼い主さんもご自分で気づかないうちにイライラしたり、焦っていたりしたかもしれません。
犬はそれだけ飼い主さんの表情や声を観察しています。犬があくびをしたら、愛犬とゆっくり休憩してみましょう。きっと愛犬も自分の思いが伝わってほっとします。絆もぐっと深まりそうですね。
「飼い主さんがあくびをしたら、続いて愛犬もあくびをした」これはたまたま偶然のできごとではなく、本当に飼い主さんのあくびが移った可能性があります。人から人へあくびが移ることは、多くの方が経験していると思います。チンパンジー同士など、あくびが移る種がいることがわかっていますが、異なる種である人から犬にあくびが移る、ちょっと不思議ですね。
今まで人のあくびが犬に移ることについては十分検証されていませんでしたが、2013年東京大学の研究チームが検証しました。その結果人のあくびは犬に移ることが判明し、しかも犬の知らない人のあくびよりも飼い主さんのあくびの方が移りやすいということも明らかになりました。
実は「あくびが移る」ということにはさまざまなことが関わっています。人間の4歳以下の子どもには、他の人のあくびが移ることがありません。2歳から7歳の子どもにあくびをする人のビデオを見せたり、あくびのお話を読み聞かせたりすると、年齢が上がるに従ってだんだんあくびが移るようになっていくそうです。
つまり他の人のあくびが移ることと発達には関わりがある、ということです。あくびが移るには他の人へ「共感」が必要であり、共感するだけの知性も必要です。そのため愛犬にあくびが移るということは、飼い主さんへ共感する能力や知性があるということになります。
あくびが愛犬に移ったら、この子は共感してくれているのだな、絆が深まっているのだなと思ってください。より絆が深まるように、普段から愛犬と見つめ合い触れ合いましょう。もしなかなかあくびが移らなくても犬によって個体差があるので、気にしないでくださいね。
もちろん眠たいときや疲れたときも犬はあくびをします。特に緊張する場面ではなく1~2回のあくびなら眠いのだなとそっとしておきましょう。車酔いや体調不良のときも連続してあくびをすることがあります。車酔いの場合は、車を停めて休憩しましょう。
叱ってもいない、車にも乗っていないのに頻繁にあくびをするときは、体調不良や病気の前ぶれのこともあります。一度かかりつけの動物病院を受診すると安心です。
犬があくびをするのは眠いときだけではありません。あくびをすることで、飼い主さんと自分の気持ちを落ち着かせようとすることもあります。バカにしていると怒らないでくださいね。
また犬に飼い主さんのあくびが移ることもあります。これは飼い主さんへの共感があり、絆が深まっている証です。ただ頻繁にあくびをするときは体調不良が隠されていることもあるので、続くときは受診してください。