ワンちゃんが登場する本
・文字が一切ない絵本『アンジュール ある犬の物語』
ガブリエル・バンサン ブックローン出版
車から突如、飼い主に捨てられる犬。車を追いかけ、吠え、あきらめと落胆の中たった一匹でさまよう……その犬が最後に出会ったのは?
鉛筆だけで描かれた素朴な絵。文字はひとつもありません。犬が好きな人なら、絵を見ているだけで胸が張り裂けそうな展開です。素朴なタッチの絵であるにもかかわらず、犬の思いや慟哭、そして喜びが手に取るように伝わってきます。不思議と何度も読み返したくなる絵本です。
・古き良きイギリス・ヨークシャーを思う『ドクター・ヘリオットの愛犬物語 上・下』
ジェイムズ・ヘリオット著 畑正憲訳 集英社
ジェイムズ・ヘリオットは1939年、イギリス、グラスゴー獣医大学を卒業した獣医師。彼の実体験を小説にした本はたくさん出版されていますが、そのなかからワンちゃんのお話だけを集めたのが『愛犬物語」です。北海道弁を入れた畑正憲さんの翻訳もユニークです。
1940~50年ごろのイギリス、ヨークシャー地方が舞台。「ダロウビー」という架空の町を設定していますが、おそらくモデルの街があるのでしょう、リアルで情景が目に浮かぶようです。
獣医師や牧場主、お金持ちのマダム……登場人物はクセのある、そしてユニークな人ばかり。犬たちも、もちろんすべて個性的です。主人公のヘリオット先生の奮闘ぶりに爆笑したり、ホロリと涙をこぼしたり。読後は、愛犬を抱きしめたくなることでしょう。
・犬の心を勉強する入門書『犬のココロをよむ―伴侶動物学からわかること』
菊水健史・永澤美保 岩波科学ライブラリー
著者は、犬の社会行動学研究者としても名高い動物行動学の研究者。犬との接し方やコミュニケーションの取り方を、わかりやすく解説してくれています。長い間ワンちゃんを飼っている人も、目から鱗の内容があるでしょう。特にトイレの教え方は、ほかのしつけ本には載っていない内容です。
大の犬好きでもある著者が飼っていたワンちゃんもたびたび登場するので、親しみがわきます。飼い主さんも簡単に実践できる実験が紹介されているので、試してみてはいかが?
ネコちゃんが登場する本
・100万回は読みたい『100万回生きたねこ』
佐野洋子 絵・著 講談社
大変有名な絵本なので、読んだ経験のある方も多いでしょう。読むたびに沸き立つ感情は異なるので、何度も読んでしまう絵本です。
100万回死んで、100万回生きた猫の物語。あるときは船乗りの猫、どろぼうの猫、小さな女の子の猫。誰の猫もない、自分のことが好きな猫。死んでもまったく平気。どんなにかわいがられていたとしても、悲しくもありません。しかし、あるとき美しい白い猫に出会って一変します。そして最後はとうとう……
大人向けと言われていますが、子どものころから読むと、自分の心の成長が感じ取れるかもしれません。
・写真と楽しむ『500匹と暮らした文豪―大佛次郎と猫』
大佛次郎記念館監修 小学館
文豪、大佛次郎が大の猫好きだったのはご存知でしょうか。一緒に住んだ猫は、500匹にも上り、戦時中でも10匹以上の猫が敷地内にいたとか。次郎はもちろん、奥方もすべての猫に愛情を注いでいました。置物や猫の絵馬、絵画など猫グッズの収集家でもあったようです。なんと歌川国芳の浮世絵までありました。
文章と写真でつづられたこの本は、大佛次郎の猫への愛情がぎゅうぎゅうに詰まっています。特に、猫たちが並んでご飯を食べる姿を見つめる大佛次郎の温かいまなざしには、読者も癒されるでしょう。
・猫にまつわる10の物語『ドクター・ヘリオットの猫物語』
ジェイムズ・ヘリオット著・大熊栄訳 集英社
ワンちゃんのところで紹介した、ジェイムズ・ヘリオットの「猫物語」。ジェイムズ・ヘリオットの生前最後に出版された本で、とっておきの猫のお話が集まっています。訳者は畑正憲さんではなく、大熊栄さんです。
くすっと笑いたくなったり、涙があふれたりと、ネコちゃんがますます好きになってしまうでしょう。登場する猫は、文章を読むだけでもありありと目に浮かぶようです。ページのところどころに現れる、リアルで温かみのある猫の挿絵も楽しませてくれます。
ジェイムズ・ヘリオットの著書は、世界中で人気があります。今回紹介した以外に、獣医としての奮闘記なども日本語訳されているので、本屋さんや図書館などで探しぜひ手に取って読んでみてください。
まとめ
今回は、ワンちゃんネコちゃんが登場する本して、絵本とノンフィクションに近い小説やノンフィクションを紹介しました。肩がこらずリラックスして読める本としておすすめです。読後はあらためて、ワンちゃんネコちゃんへの愛情を確信すると思います。