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犬猫の心臓病と食事管理。療法食で効果的に進行抑制を。

犬猫の心臓疾患にはどんなものがあるの?

犬や猫の心臓病には、生まれながらにして心臓に異常(奇形)がある先天性心疾患と加齢等に伴っておこる後天性の心臓疾患があります。

犬の心臓病はすべての犬の10~15%に起こるといわれており、10歳以上の犬では約30%に心臓病が存在するとも言われています。
そんな犬によく見られる後天性の心疾患としては、僧帽弁閉鎖不全症や拡張型心筋症、肥大型心筋症などが挙げられます。

一方猫では、犬ほど心疾患の発生率は高くありませんが、特定の品種では遺伝的に肥大型心筋症が起こりやすい傾向があり、特に猫の心筋症では動脈血栓塞栓症や突然死が起こることも少なくないことから注意が必要です。
また純血種以外の猫でも心筋症を発症することがあります。

これらの心臓疾患はひとたび発症してしまうと完治することはできず、治療を行っても進行を完全に止めることはできません。
さらに多くの場合、初期にはあまり目立った症状を示さず、呼吸が荒い、疲れやすい、頻繁に咳をするなどといった顕著な症状が現れて初めて病院を受診し診断されるため、診断時にはすでにある程度病気が進行してしまっています。

しかし早期発見できれば、より効果的に進行を遅らせたり症状を軽減することができます。
早期発見のためには、定期的に健康診断を受けることと、愛犬・愛猫の些細な症状を見落とさないことが重要です。

犬猫の心臓疾患にはどんなものがあるの?

心臓疾患の管理と食事の関係

心臓疾患の診断は、聴診、レントゲン検査、超音波検査、心電図検査、血液検査などを行って下されます。

心臓疾患の中には、体のホルモンバランスの崩れが原因で心疾患を発症している場合や、心臓疾患があることで二次的に他の臓器の不調を招いており、使用する治療薬の種類や量を変更したり、同時にそれらの臓器のケアも行わなければならないケースがあるため、多くの場合は心臓の検査だけでなく全身状態の総合的な評価も併せて行います。

治療の方法は心臓疾患の病態や進行の程度によって異なり、先天性の奇形などでは外科手術が選択肢に含まれることもありますが、一般的には投薬による内科治療を行います。
症状が重くなるほど治療薬は増え、運動の制限やよりシビアな食事管理も必要になります。

心臓疾患の治療としての食事療法は、以前はある程度病気が進行してから始めることが推奨されていましたが、今では早期から始める食事療法の重要性が見直され、初期の心臓疾患に対応した犬猫用のフードも多くのメーカーから販売されるようになってきました。


食事管理が果たす効果は決して小さくはなく、心臓にかかる負担を減らすだけでなく、心臓の健康をサポートしてくれる成分を加えることでより効果的に進行を抑制できるように配慮して作られているものが多く見られます。

心臓疾患の管理と食事の関係

心臓疾患フードの特徴

心臓病の犬猫用に作られたフードはどんな特徴があるのでしょうか?

どのメーカーにも共通して言える大きな特徴としては、ナトリウムの含有量を制限しているという点です。

ナトリウムは体の水分バランスの調整・維持に関わっており、普段は一定の濃度に保たれています。
ナトリウムを多く摂取してナトリウム濃度が上がると、体はその分血液中の水分量を増やして濃度を下げようとするため、結果として血液量が増えることになります。
心臓は血液を全身に送りだすポンプの役割を果たしているため、血液量が増えるとその仕事量が増え、心臓に余分な負担をかけてしまいます。
そのため心臓の機能を評価し、ある程度の段階を超えたらその程度に応じてナトリウムの摂取量を制限することが推奨されています。

例えば犬の僧帽弁閉鎖不全では、進行段階を初期から重症例まで大きく4段階に分け、その2番めの進行ステージから徐々にナトリウム摂取量を減らすことが勧められており、重症例ではよりシビアにナトリウムの摂取を制限するように指導されます。

このように心臓に負担をかけないためにナトリウムの含有量が調整されたフードが心臓疾患の維持・管理に使用されています。

その他の成分は各販売メーカーによって様々ですが、中でもよく見られる成分には以下のようなものがあります。

・タウリン
タウリンはアミノ酸の一種で、心臓の働きをサポートする成分の一つです。
細胞の内外へのカルシウムの移動を調整しており、筋肉の収縮には必要不可欠です。
心臓の収縮にも非常に重要な役割を果たしており、心筋に存在するアミノ酸のうち少なくとも40%はタウリンが占めています。

タウリンの欠乏は拡張型心筋症の発生に関連していることもわかっています。

猫はタウリンを体で合成することができず、食事で補わなければいけませんが、一昔前のキャットフードにはタウリンが添加されていないものがあり、タウリン不足による猫の拡張型心筋症が多発していました。
現在はほぼ全てのキャットフードにタウリンが添加されるようになったため、猫の拡張型心筋症は激減しました。

このタウリンを適度に添加することで「ポンプとして血液を送り出す」という心臓の重要な仕事をサポートできます。
また抗不整脈作用や、活性酸素による影響を抑える強い抗酸化作用も持っているとされています。


・L-カルニチン
L-カルニチンもアミノ酸の一種で、食事として摂取する他、体内ではアミノ酸のリジンとメチオニンを材料に肝臓で合成されている成分です。

L-カルニチンは体内でエネルギーを産生するのに主要な役割を果たしており、心臓の活動と脂肪燃焼に欠かせない栄養素です。
骨格筋や心筋の細胞内に多く存在する他、肝臓や腎臓、脳などにも分布しており、エネルギーを生み出す原動力となっていますが、年齢とともに体内で作られる量が減少し、高齢になるとその量は減ってしまうことがわかっています。

L-カルニチンは脂肪を細胞内のミトコンドリアに運ぶ役割を果たしており、この作用によって脂肪をエネルギーとして利用できるのですが、L-カルニチンが不足すると脂肪が蓄積されがちになるため肥満となり、心臓の負担になる可能性があります。

不足しているL-カルニチンを補給することで心臓が働くためのエネルギーの産生をサポートし、脂肪燃焼により肥満を予防する効果が期待できます。


・EPA、DHA
オメガ3系不飽和脂肪酸の一種で、魚介類に多く含まれる成分です。
抗凝血作用や血管拡張による降圧作用、血液をサラサラに保つ効果などがあり、血流を改善することで心血管系の健康維持に役立ちます。

また心臓病の犬ではDHAやEPA濃度が低いことが報告されており、これらを補給することで食欲不振や悪液質の一部が改善したという報告などもあります。


これらの成分が添加されている以外の特徴としては、肥満を予防するために低カロリーの設計になっているものが多く見られます。

肥満は心臓に大きく負担をかけるだけでなく、関節や他の内臓にも負担となり様々な疾患を誘発する原因となります。
しかし心臓疾患を発症してからは運動によって減量することは難しくなるため、食事による体重管理が非常に重要となります。

もともと低カロリーの食事であれば、食事量を極端に減らすことなく減量や肥満の予防ができ、体重管理が容易になります。

心臓疾患フードの特徴

心臓病とうまく付き合っていくために…

後天性の心臓病は完治することはない病気ですが、その付き合い方によっては目立った症状を示さずに長く元気に生活することが可能なケースも多く見られます。

心臓病とうまく付き合っていくために、以下のようなことに気を付けましょう。
・定期的に検診を受ける
・お薬は処方された用法・用量を守って継続して飲ませる
・おやつは極力控え、ヒトの食べ物は与えない
・心臓病のステージに合った食事を選ぶ
・呼吸や食欲の変化に気を付ける

特に大事なのは定期的に検診を受けることです。
同じ年齢の同じ犬種の犬が同じ心臓病に罹患していても、その進行の程度はその子その子によって全く異なります。
また処方されているお薬(特に利尿剤)の副作用が現れて減薬やお薬の変更を余儀なくされるケースもあります。

病院へ何度も足を運ぶことは大変ですが、一度病気が進行してしまうと取り返しがつかないこともありますので、できるだけ指示された間隔で検診を受けるようにしましょう。

また若くて元気な犬猫であっても、品種によっては心筋症などを発症してしまうことがあります。
心臓病の好発品種となっている犬猫の場合は、若い内から健康診断を受け、早期発見に努めましょう。

心臓病とうまく付き合っていくために…
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