「吐き戻し」とは?
食べたものは口から食道を通って胃に運ばれますが、この口から食道、または食道から胃に入るまでの間において食べたものが逆流して口から吐き出されることを「吐き戻し」、医学的には「吐出(としゅつ)」と呼びます。
多くの場合はフードなどを食べている間や食べた後すぐに見られます。
「吐き戻し」と「嘔吐」の違い
「吐き戻し」の場合は胃に入る前に食べたものが吐き出されてしまうため、多くの場合は消化されておらず元の形を保ったものが吐しゃ物となります。
また、少し専門的な違いとなりますが酸性の胃液が存在している胃に到達する前に吐き出されているため、吐しゃ物のpHがアルカリ性ならばそれは「吐き戻し」であると考えることもできます。
反対に「嘔吐」の場合は食べたものが胃に運ばれた後に胃から吐き出されるため、多くの場合は消化されている、または消化途中のドロドロした元の形を保っていないものが吐しゃ物となります。
なお、状況によっては胃液や胆汁などの液体が吐しゃ物として「嘔吐」では見られることがあります。
「吐き戻し」が起きた時に考えられる原因
①食べる時の姿勢が良くない: 猫の口から胃までは一本道のようにほぼ真っ直ぐに繋がっているため、フードボウルなどの食器が低い位置にあると食べる時の姿勢が頭を下げる前かがみとなり、食道が曲がってしまいます。
食道が曲がることによって食べ物が胃までスムーズに到達することができずに滞ってしまい、吐き戻しの原因となります。
②早食いや1回に食べる量が多い:猫は習性として食べ物を噛むということはあまり行わず、丸呑みすることが多いといわれています。また、個体差はありますが猫の胃の大きさは約0.3リットルであり、私たち人間の胃が約1.3リットルなことと比べてかなり小さめのサイズとなります。
よって空腹感が強いことなどによる早食いや1回に食べる量が多すぎると、食道から運ばれた食べ物が胃に入りきることができずに吐き戻してしまうこともあります。
③何かしらの疾患:「吐き戻し」を引き起こす疾患としては食道や胃の入り口であり噴門(ふんもん)などの臓器そのものに異常がある場合(器質的異常)と、臓器の働きに異常がある場合(運動機能異常)の2つに大きく分けることができます。
猫においては器質的異常として誤飲による異物や消化管型リンパ腫、運動機能異常としては巨大食道症などを挙げることができます。
「吐き戻し」の対策
①食べる時の姿勢を改善する:一般的に猫が食べやすい高さは地面から5~8㎝が目安といわれていますが、個体差があるため全ての猫に当てはまるとはいえません。
可能ならばフードなどを食べている時に猫の頭が下がっておらず、口から背中のラインが水平になる姿勢を保つことができる高さに調整してあげましょう。
②食事の回数を増やす:猫はもともとお腹が空くたびに単独で狩りをして、捕まえた獲物をその都度食べるというスタイルで生活していたと考えられています。
よってそのスタイルに沿うようにフードの与え方としては規定量を測定し、それを1日3回~4回分に分けて決まった時間に与えるという方法がおすすめとなります。お仕事の都合などで食事の回数をこまめにわけることができない飼い主さんの場合は自動給餌器などを活用しても良いでしょう。
③早食い防止用の食器に替える:食欲がとても旺盛で早食いをしてしまう猫の場合は、中に突起などが設置されていて食事時間を延ばしてくれる早食い防止用の食器に替えてみることもおすすめです。
④動物病院を受診する:「吐き戻し」以外の症状が見られる、急に「吐き戻し」をするようになったなどの場合は疾患が隠れている可能性もあるため、動物病院を受診したほうが安心です。
まとめ
猫が「吐く」という行為には「吐き戻し」と「嘔吐」の2種類が存在し、多くの場合は吐しゃ物によって見分けることができます。もし判断に迷うならば、吐しゃ物や吐しゃ物の写真を持参するとともに吐いた時間や状況などをメモした上で獣医師に相談してみましょう。
また、食べる時の姿勢や食事の回数などを改善しても「吐き戻し」が治らない場合も動物病院を受診するようにしてくださいね。