犬の健康診断の目的とは
近年は、動物医療の発達に伴い犬の平均寿命も伸びてきています。
犬の成長は人間の4~7倍早いと言われており、小型犬であれば11歳で人間の年齢にすると還暦に値します。そのため老化も早く、病気の進行も早くなりがちで、病気の早期発見がとても大事になるのです。
健康診断で血液検査を行うことによって病気の早期発見・早期治療が可能になります。
体重測定や聴診、触診などの簡単な健康診断であれば生後間も無くしてワクチン接種や不妊手術などで行うことが多いですが、その後も可能な限り1年に1回を目途に健康診断を受けると良いでしょう。
犬は1年で4歳程度歳を取りますので、7歳くらいでシニア期に入ります。シニア期になると増えてくる病気が多くあるため、7歳を超えたころからは1年に2回程度健康診断を受けることが理想とされています。
犬の健康診断の種類
一言で健康診断と言っても内容は様々です。
・触診…身体を触って健康状態の変化を探します。身体にあるリンパの大きさや、腫瘍が無いかどうかなどを確認し、異常があればその他の検査を行います。
・聴診…主に心臓の雑音を確認するために行います。心臓病などの場合、犬では雑音が確認できることが多く、早期の段階からの治療がとても大事となります。
・レントゲン検査…主に胸部・腹部のレントゲンを撮影します。心臓の大きさや結石の有無、骨格まで様々なことがわかります。
・超音波検査…心臓の検査や肺の検査の場合は胸部の超音波検査、肝臓や腎臓、腸などの検査の場合は腹部の超音波検査が行われます。レントゲンよりも動きなどより詳しく見ることができます。
・血液検査…臓器や機関が正常に動いているかどうか、どこかに異常が生じていないかどうかを調べる検査です。各臓器ごとに複数の項目があり、それぞれの値を見ながら診断します。また血液の中の赤血球や白血球の数を数える血球計算も行われます。
血液検査の項目
血液検査の項目は非常に多くあり、何がどの臓器に影響しているのかがとても重要になります。そこで、影響を与える臓器や検査項目ごとにまとめて、ご説明していきたいと思います。
①完全血球計算
CBC(Complete Blood Count)と言われる検査です。専用の機械を使って、血球の大きさや数を調べます。体の中の状況判断に重要な判断材料となります。
・赤血球数(RBC)…赤血球の総数。低いと様々な原因による貧血、高いと脱水や赤血球増加症などが疑われます。
・ヘモグロビン濃度(HGB)…赤血球の主成分である血色素であるヘモグロビンの濃度を調べます。ヘモグロビンは酸素を運ぶ重要な役割を持ちます。
・ヘマトクリット値(HT)…簡単に言うと「血液の濃さ」を表します。血液中に占める赤血球の容積の割合を示します。低いと貧血、高いと脱水症状などによる血液凝縮が疑われます。
・平均赤血球容積(MCV)…赤血球ひとつが持つ、平均的な容積です。
・平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)…赤血球ひとつが持つ、平均的なヘモグロビンの量です。
・平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)…赤血球に含まれるヘモグロビンの量を平均した値です。
・総白血球数(WBC)…血液の中の白血球の総数です。炎症や感染、体内の異物などで増加し、ウイルスの感染などで減少します。
さらに好中球・リンパ球・単球・好酸球・好塩基球と呼ばれる白血球の数を調べることによって貧血の種類や寄生虫感染の有無などを判断することができます。
②肝臓に関係する血液検査項目
・アルカリフォスファターゼ(AST)…肝臓および骨から分泌される酵素で、肝臓の疾患や閉塞性黄疸などを示す際に異常値が現れることがあります。
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)…主に肝臓と筋肉で見られる酵素で、肝臓の損傷や疾患を示すための指標として使用されます。
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・アルブミン(ALB)…肝臓が合成する主要なタンパク質で、肝機能の低下やタンパク質合成の問題を反映することがあります。
・ビリルビン(TBil)…肝臓で生成された胆汁に関連し、肝臓の機能障害や閉塞性黄疸を示すための指標です。
③腎臓に関係する血液検査項目
・尿素窒素(BUN)…腎臓が尿中に排出するべき尿素の量を示します。腎機能の低下はBUNの上昇を引き起こすことがあります。
・クレアチニン(CREA)…筋肉の代謝によって生成される物質で、腎臓からの除去によって体から排出されます。腎機能低下はクレアチニンの増加を引き起こします。
・尿酸値…プリン体の代謝物で、腎臓が排泄します。腎臓の機能低下は尿酸の異常値を引き起こすことがあります。
・SDMA…腎臓から排泄される細胞の代謝産物である対称性ジメチルアルギニンのことです。食事や筋肉量などの影響は受けず、腎機能のわずかな低下で上昇します。
おわりに
いかがでしたでしょうか?今回は健康診断で行われる血液検査の項目別に、簡単にご説明させていただきました。
多くの動物病院では健康診断の結果表に参考標準値や異常値、それが何を示すのかが記入してあると思いますので、血液検査の結果と合わせて確認できると良いでしょう。また、少しでも不明点や疑問点があった場合にはしっかりと獣医師と相談し、治療についてアドバイスを受けましょう。
犬の健康に健康診断は不可欠です。
長く健やかに一緒に生活するため、元気なうちから動物病院で健康診断を受けるようにしましょう。