梅雨と健康状態の変化
寒い冬が終わりようやく過ごしやすい陽気が続くようになった春の後にやってくるのが『梅雨』ですね。
梅雨の間は、春の終わりから夏の初めにかけて日本列島に停滞する梅雨前線の影響により、曇りや雨の日が長く続きます。
梅雨に突入すると、気圧の変化、気温の上昇、湿度の上昇、日によってあるいは朝と晩の寒暖差が大きくなりやすく、ヒトでは自律神経の乱れ、それに伴う血行不良や気分の落ち込みに加え、湿度の上昇によって汗をかきにくい環境となることから体温調節や水分代謝がしにくい状態に陥りやすいと言われています。
動物も同様で、上昇し始めた気温が長引く雨によってガクンと下がったり、湿度が上昇することによって体に不調が起こりがちです。
皮膚の弱いワンちゃんネコちゃんの場合、気温や湿度の変化に体がついていかず、皮膚の状態が不安定となりがちです。
また湿度の高い環境下ではフードの劣化なども起こりやすく、食中毒にも注意が必要です。
さらに、雨のためにお散歩をお休みしたり散歩時間が短くなることによってストレスが溜まったり、太りやすくなってしまう可能性もあります。
こうした気候の変化は避けられないものですが、体の変化として起こりうる事態を想定しておくことで、その影響を小さくできる可能性はあります。
皮膚疾患
気温の上昇に加え、雨の続く梅雨の時期は湿気が急上昇するため、体調不良によって皮膚の状態も変化しやすくなります。
またこの時期の気温の上昇や湿度の上昇は、細菌や真菌などが増殖するのに適した環境でもあります。
皮膚には外界から身を守るバリア機能があるため、通常は皮膚の表面に常在する雑菌などに容易に侵入を許すことはありません。
しかし体調不良によってそのバリア機能が低下すると、皮膚に常在している細菌や真菌などの増殖・侵入(感染)を許してしまうことがあり、注意が必要です。
特に、皮脂がべたつきがちな脂漏性の皮膚の犬猫や、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎の犬猫では症状が悪化しやすいと考えられます。
皮脂を好んで増殖するマラセチアという真菌の一種が増殖するとマラセチア性皮膚炎をおこし、皮膚表面の細菌感染によって膿皮症などを起こすことがあります。
皮膚の状態によってシャンプーなどのスキンケアの頻度を変えたり、ケア用品を切り替えるなどして、皮膚の状態が悪化しないように早めに対応しましょう。
また、可能であれば室温や室内の湿度をエアコンなどで程よく調節し、気温差や湿度の上昇による体調の悪化をできるだけ小さくとどめましょう。
指間炎
雨の日のお散歩によって足先が濡れることから起こるトラブルもあります。
それは指間炎です。
犬や猫は肉球を除いて、四肢の先端まで毛で覆われています。
雨の日にお散歩に出た後、濡れた足先、特に指と指の間に生えている毛が濡れたままだと、そこが蒸れて炎症を起こし、気にして舐めることによってその炎症がさらに悪化するという悪循環に陥りやすく、気づいたら肉球の間が真っ赤に腫れてしまっていることがあります。
そうならないために、雨の日のお散歩の後は濡れた足先をタオルでよく拭いて水気をとり、必要であればドライヤーで軽く乾かしてあげましょう。
泥汚れがついている場合には足先だけ軽く洗ってあげるのも良いでしょう。
ペット用の靴も販売されています。
初めは嫌がるかもしれませんが、慣れれば雨の日のお散歩で大活躍すると思いますので検討してみてはいかがでしょうか。
外耳炎
体の皮膚だけでなく、耳の中の皮膚の炎症、つまり外耳炎にもなりやすい季節です。
理由は皮膚に起こる変化と同じで、湿度が高いことによって耳の中の状態も変化しやすく、皮脂でべたついた耳の中では皮脂を好んで増殖するマラセチア菌が異常に増えることによって外耳炎に陥りやすくなります。
耳の中に毛が多く生えるワンちゃんや、普段から外耳炎を起こしやすい犬猫では、この時期には特に臭いの変化や耳の中の汚れ具合をチェックしましょう。
もし耳をしきりに掻いている、頭を繰り返し激しく振る、などという場合には耳の中に痒みがあるサインですので、できるだけ早く一度病院で診てもらいましょう。
フードの劣化
湿度の高い時期は食事管理にも注意が必要です。
梅雨時期~夏にかけては、カビや細菌が増殖しやすい気温と湿度になります。
湿度の高い時期は食パンにカビが生えやすいことを想像していただければわかりやすいかと思いますが、ドライフードやおやつなども開封して日にちが経つとカビが発生したり酸化して劣化してしまいます。
特に大容量の袋でドライフードを購入している場合は、開封してから使い切るまでにある程度期間が必要になるため要注意です。
また健康志向の高まりから防腐剤などの食品添加物を使用していないフードも増えつつあり、そのようなフードではよりフードの管理に気を付ける必要があります。
劣化したフードを知らずに与えていると食中毒を起こし、吐き気や下痢などの消化器症状を示すことがあるだけでなく、肝臓などの内臓にも障害を起こし長期的な治療が必要になることもあります。
フードを開封してから使い切るまでにあまり時間がかからないように、フードを購入する際はペットの体格・食事量を考慮してあまり大きな袋で購入せず、小分けの袋や長くても1か月以内には食べきれるようなサイズのものを選ぶようにしましょう。
開封したフードの袋はきっちりと閉じるか、密閉できる容器に入れて保存することをお勧めします。
また保管場所も高温多湿にならないような冷暗所での保管を心がけ、毎日フードを与える時には見た目や臭いなどに変化がないかどうか気を付けましょう。
食べ残したフードもそのまま置きっぱなしにせず、ある程度時間を決めて下げるようにしましょう。
運動不足
お天気が不安定なこの季節、大雨が降っているとお散歩をお休みしたり、短くしたりすることが多くなると思います。
天候に合わせて無理のないようにお散歩を調整するのは問題ありませんが、それが長期化してくると運動不足になりがちです。
散歩のような適度な運動は肥満を予防するだけでなく、筋肉量を維持して関節などの状態を健康に保ち、ストレスの発散にもなることから、心身を健康に保つために不可欠と言っても過言ではありません。
外でのお散歩が難しい場合には、代わりに屋内のドッグランや自宅での室内遊びなどで運動不足にならないように工夫しましょう。
ドッグランなどを利用する場合には、予防接種を定期的に受けているかどうかチェックされるなど、施設毎にルールがあります。
お互い安心・安全に遊ぶためにルールを守り、予防接種などはあらかじめ済ませておくと良いですね。
自宅での室内遊びだけでも猫や小型犬であれば十分に体を動かせるでしょうが、思わぬ怪我をするケースもありますので気を付けましょう。
滑りやすい床にはマットなどを敷いたり、障害物の多いところでは激しく走ったり跳ねたりさせないようにする、ヤケドや転落の危険があるところにはゲートを設置して立ち入らせないようにするなどといった工夫が必要です。
また爪が伸びすぎていないか、足の裏(肉球の間)の毛が伸びて滑りやすくなっていないかどうかなど、体のチェックもしておきましょう。
雨の日のお散歩
雨が降っていても雨対策をしていればお散歩は可能です。
激しい雷雨の日はお勧めしませんが、しとしとと降る雨の日の景色を楽しみながらのお散歩もなかなか良いものです。
ですが、そのためには人も動物もちゃんと準備をしておくことが重要です。
レインコートや傘、雨の日仕様のお散歩バッグ、帰宅したときに体を拭くタオルの用意など、家を出てから自宅内に入るまでの流れを想定して用意すると良いでしょう。
犬用の雨具も様々なタイプのものがあります。
ただすっぽりと上から被せるだけのレインポンチョ、お腹への泥はねを考慮して腹部までガードしてくれるレインコートやエプロン、体だけでなく四肢もある程度包んでくれるフルカバータイプ、リードにワンちゃん用の傘がついているものなど、様々なアイデア商品が販売されています。
最も濡れやすい足も、防水のドッグブーツを履くことができれば濡れを防ぐことができます。
これらをフル装備できれば体が濡れないため、体を冷やすこともなく快適にお散歩できるかもしれません。
レインコートがあれば毛の濡れが少ないため、お散歩から帰ってきた後の飼い主さんの手間も減らすことができます。
服を普段から着慣れている子であればどんなタイプでも着られると思いますが、服が苦手な子の場合はすっぽり被せるポンチョタイプのものや傘付きリードを選ぶなど、愛犬の許容範囲を考慮して選ぶようにしましょう。
デザイン性も高いものが多いので、雨の日コーデを楽しみながら準備してあげても良いかもしれませんね。
終わりに
『梅雨』と聞くとなんとなくジメジメして憂鬱な暗いイメージを持ってしまいがちですが、苦手意識を持たずにどう楽しく過ごすかを考えてみましょう。
室内遊びでは外で走り回るのとは違った、少し頭を使うようなゲームなどをしてみるのも愛犬・愛猫の新しい一面を発見するきっかけになるかもしれません。
雨でぬれた緑の中をお散歩するのも、いつもと違った景色を見ることができなかなかいいものです。
雨の日コーデをばっちり決めて日本ならではの季節の変化を楽しんでしまいましょう。