気候の変動に注意!
ひたすら暑い夏本番に比べ、夏の終わりに近づくと暑さがまだ残りつつも朝晩は少し涼しさを感じるようになり、夜の寝苦しさも減ることから『過ごしやすくなってきた』と感じる方も多いでしょう。
そのような過ごしやすさから夏バテ気味だったヒトも犬も猫も、秋が近づくと食欲が増すなどといった変化が起こりがちです。
しかしこの時期は『残暑』と呼ばれる通り暑さが抜けきらなかったり、かと思えば雨の日や朝夕には気温が下がったり、台風が来たりと、気温や気候が目まぐるしく変わります。
涼しくなってきても夏バテの影響が抜けきらないことがあるのにはこうした気候の不安定さが影響しています。
気温や気圧の大きな変化は自律神経の不調を招き、ヒトでは頭痛、倦怠感、やる気が出ない、寝付けない、なんとなく体調が悪いなどといった症状が起こりやすいようですが、犬や猫においても消化管の働きなどに不調をきたし、吐いたり下痢したりなんとなく調子が出ないということが多く見られます。
このような症状を近年は夏バテになぞらえて『秋バテ』とも呼んでいます。
気候の変化によって生じる寒暖差の激しい時期を、どうやって乗り切ればよいのでしょうか?
まずは室内の環境温度をうまく調節するように努めましょう。
できれば夏の暑い時期から、夏バテしない程度に室内の温度や湿度をエアコンなどで調節してあげると良いでしょう。
ただし暑いからとにかく冷やす、ということではなく、『適度に』調節することを心がけましょう。
室内環境を整えることで体調が崩れないようにすることも必要ですが、動物自身の体が気候に合わせてある程度順応して調節する力を付けることも重要です。
暑さが続くことで体に蓄積する疲労もありますが、極端に冷やしすぎると胃腸の働きが悪くなってしまうことがある他、気候の変化に対して身体が順応できなくなってしまい、ちょっとした気温・気圧の変化などに影響されやすくなってしまう可能性があるのです。
完全に室温をコントロールするというよりは気候の変化を小さくしてあげるように室温を調節してあげると良いでしょう。
また朝夕と日中の寒暖差も大きくなり始める時期です。
お散歩を日差しの強くない朝や夕方に毎日継続することで、動物自身の体も季節を感じ取り気候の変化に少しずつ慣れていくことができるでしょう。
尿路疾患が起こりやすい
夏真っ盛りには犬も猫も比較的水をたくさん飲みますが、涼しくなるにつれて飲水量は徐々に減少します。
飲水量が減ると尿量が減るため、夏に比べるとおしっこの濃度が濃くなり、もともと尿石症や尿路結石ができやすいワンちゃんネコちゃんでは尿中に結晶や結石が析出して膀胱炎様の症状を示すケースが多く見られます。
中でも特に注意が必要なのは、尿石症など尿路疾患の罹患歴のあるオス猫です。
尿中に結晶が析出しやすくなるのは犬も猫もオスもメスも同じですが、オス猫は尿道が細くて長いため、結石でなく結晶であっても尿道閉塞を起こしてしまう危険があり、閉塞時に対処が遅れると急性腎不全や命の危険があります。
それらを予防するためには、いつでも水が飲めるように十分な量の水を用意し、適宜新鮮なものに入れ替えること、尿石症の罹患歴のある動物では尿石症に対応した食事を食べるようにしておくこと、水をあまり飲まない子の場合はドライフードを水でふやかしたりウェットフードなどを活用して積極的に水分摂取を促すことなどが効果的です。
オス猫では運動不足が下部尿路疾患の発症リスクになるとも言われているため、室内での運動ができるようにキャットタワーを設置したり、おもちゃで遊びに誘って運動を促してあげましょう。
また発症の多いこの時期に尿検査を定期的に行い、状態を把握しておくと早めの対策・治療につながります。
毛の生え変わりによるトラブル
季節の変わり目は換毛、つまり毛の生え変わりによって抜け毛が非常に多くなる時期ですので、それに伴うトラブルも起こりがちです。
換毛期は自然に抜けた毛が毛の表面にとどまってフェルトのような毛玉を作ってしまったり、毛づくろいの際に抜け毛を飲み込んでしまうことで消化管内に毛玉が形成され、通過障害を起こしてしまう『毛球症』などに注意が必要です。
特に長毛種の犬猫では毛玉ができやすく、毛玉の下にある皮膚への風通しが悪くなることで皮膚のトラブルに発展することもあります。
また毛玉で体が覆われた状態では残暑の暑さで熱中症になってしまう危険性も高まります。
これらを防ぐためには、こまめなブラッシングであらかじめ抜け毛を取り除き、必要に応じてシャンプーをしてあげると良いでしょう。
ブラッシングをさせてくれないワンちゃん、ネコちゃんの場合は皮膚の状態が悪化する前に毛玉除去を兼ねてトリミングで毛を短くしてもらうともつれにくくなります。
皮膚の状態、毛の状態を見ながら愛犬・愛猫に合った方法でケアしてあげましょう。
秋の味覚にもご用心!
暑い夏から過ごしやすい涼しい気候へと切り替わるこの時期は、『食欲の秋』とも言われる通り、夏バテで低下気味だった食欲が盛り返して反動で太りやすくなってしまう傾向があります。
さらに収穫の秋へと移行するこの季節は、果物や野菜などが旬を迎える時期にもあたります。
特に甘みの強いサツマイモやカボチャ、リンゴなどの果物の収穫時期でもあることから、人の食卓にもそれらの食材で作られた料理が並ぶことが多くなり、少しだけ…と愛犬や愛猫にもおすそ分けをしてしまうことはないでしょうか?
しかし中には犬猫に与えるのは好ましくないもの(ブドウなど)や、糖質が多くカロリーオーバーを招くものが多いため注意が必要です。
欲しがるままに与えてしまうとあっという間に肥満傾向になってしまうため、与える際にはその種類や量について今一度考えてもらう必要があるでしょう。
ヒトが与えるもの以外では、散歩中に落ちている木の実や生えているキノコなどに接触する機会も多くなることに注意が必要です。
普段見慣れないものを見つけると、初めは興味から臭いを嗅いだりする程度ですが、そのうちに誤ってそれらを口にしてしまうこともあります。
木の実などの多くは消化することができないうえ、大きさによっては消化管閉塞の原因になってしまう他、自生しているキノコの中には有毒成分を含むものもあるため、食べてしまわないように気を付けましょう。
感染症にも気を付けて
徐々に過ごしやすい気候になっていくため、運動が好きなワンちゃんにとっては外遊びが楽しい時期でもあります。
うだるような暑さから解放されて、広い野原やドッグランで思いっきり走り回るワンちゃんも多いかもしれません。
またアジリティーの大会など、いろいろなイベントも開催されることが多く、たくさんのワンちゃんが集まる機会も増えがちです。
そんな時に注意したいのがワンちゃん同士の接触で伝播しやすい感染症や、ノミ・ダニなどの外部寄生虫です。
これらは事前に予防薬を投与したり定期的なワクチン接種で予防できますので、多くの動物が集まる場所に連れていく際には、愛犬・愛猫の予防がしっかりされているか今一度確認しておきましょう。
終わりに
これからの季節は、残暑から本格的な秋に向けて気温の変化が大きく、体調管理が難しい時期です。
しかしそのような気候の変化を感じ、季節ごとの景色の移り変わりを楽しむのも秋の醍醐味です。
お天気のいい日は外の空気をたくさん吸って季節を感じながらゆっくりとお散歩を楽しむのも良いでしょう。
食欲の秋だけでなく運動の秋も楽しみながら、このあとやってくる寒い冬にも負けない健康な体作りに努めてみてはいかがでしょうか?