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獣医師
齋藤厚子
犬と猫の腎臓病。早期診断と効果的な治療のために知っておきたいこと

犬と猫の腎臓病

腎臓は体の左右に1つずつある臓器です。
主な役割は体内で作られた老廃物を血液から漉しとることで、老廃物は尿として尿管・膀胱・尿道を通り排泄されます。
尿を生成する際に体の電解質やミネラル分、水分バランスを調整したり、血圧を調節するホルモンや血液の造血を促すホルモンの分泌なども行っており、体の調子を健康に保つために欠かせない臓器です。

ところが、犬も猫も加齢あるいは様々な理由で腎臓の機能が低下してしまうことがあります。

その中で最も多い『慢性腎臓病』は、持続的な腎機能の低下によって老廃物がうまく排泄できなくなる病気で、進行すると腎臓は萎縮して小さくなってしまいます。

慢性腎臓病が起こる原因は様々で、加齢性変化のほか、品種によっては遺伝性疾患として、あるいは心疾患、糖尿病など他の疾患に続発して起こる場合や、尿路疾患(膀胱炎や尿路結石、急性腎障害など)、高カルシウム血症、歯周病、感染症、腎毒性のある薬剤の使用がきっかけとなって発症するケースなどがあります。

症状としては、水をたくさん飲んで色の薄い尿をたくさんする『多飲多尿』がみられることが多く、症状の進行に伴って脱水や食欲不振、体重減少や筋肉量の低下、元気がなくなる、口内炎、高血圧、貧血などが起こるようになり、全身状態は徐々に悪くなります。

さらに進行すると『尿毒症』という体に老廃物が多く溜まった状態となり、強い吐き気による流涎や嘔吐、消化管出血、強い口臭(アンモニア臭)、活動性の低下や沈鬱状態、神経症状(チック様症状や頭部振戦、行動の異常、けいれん発作など)を示すことがあります。

徐々に痩せて元気がなくなっていく様子を見ているのは飼い主さんにとって辛いものです。

そうならないためにもできるだけ早期に正しく診断し、悪化させないようにケアしていくことがとても重要です。

腎臓病を見つけるための検査

腎臓病の治療には早期発見が重要ですが、腎臓は予備能力の高い臓器と言われており、腎臓の一部分で機能障害が起こっても機能が残っている他の部分がそれを補って働くため、腎臓の機能が半分以上障害されても血液検査で数値の異常が現れません。

初期にはほぼ無症状のことが多いため、症状が現れて血液検査などで異常を検出できる頃にはある程度腎臓の障害は進行してしまっています。

ではどのような検査をしていれば早期発見できるのでしょうか?

腎臓病を検出できる検査には、身体検査による脱水の評価や腎臓の触診の他、血液検査、尿検査、超音波検査、レントゲン検査などがあります。
どれか一つを受けていれば良いというものではなく、その検査で何が検出できるのかを踏まえた上で組み合わせて受けることが必要です。

元気にしているけど健康診断を受けたら腎臓の項目に少し異常値がみられた、という場合はそのまま様子見にはせずにもう少し詳しく検査してもらいましょう。

血液検査でわかる腎臓の異常

様々な病気を検出できる最も一般的な検査は血液検査です。
中には血液検査では検出できない病気もありますが、健康診断などではまず血液検査が行われるように、比較的起こりやすい病気を対象として幅広く異常を検出できます。

血液検査では腎臓の機能に関わる項目として、尿素窒素(BUN)、クレアチニン、リン、カルシウム、電解質(Na、K、Cl)と血球計算(貧血の有無をみるため)などが以前からよく使用されています。
さらに近年はSDMA(対称性ジメチルアルギニン)、シスタチンCなどといった項目が新たに測定されるようになり、早期診断に一役かっています。

BUNやクレアチニンは体の中で作られる老廃物です。
腎臓病の初期にはまず尿素窒素が少しずつ上昇し、進行とともにクレアチニンも徐々に上昇します。
ただしBUNの数値は脱水の有無や食事内容に影響を受け、クレアチニンは体の筋肉量の影響を受けます。
高タンパク食を食べている場合や食後の検査ではその影響で高めの数値になってしまうことがありますので注意が必要です。

リンやカルシウム、電解質は、腎臓で尿中への排泄量が調節されており、腎機能が低下するとそのバランスが崩れて数値に変化が出てくる項目です。
腎臓病の進行に伴い、高リン血症や高カルシウム血症、電解質の中では特にK(カリウム)の上昇や低下がみられることがあります。

さらに近年犬猫の腎臓病の早期発見に役立つ項目として注目されてきているのがSDMAやシスタチンCなどのマーカーです。

SDMAはアミノ酸の一種の代謝産物で、腎臓で濾過されて尿中に排泄される物質です。
クレアチニンの上昇よりも早く腎機能低下を検出できる可能性があるとされており、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)が数年ごとに改訂する犬猫の慢性腎臓病の治療のガイドラインにも採用されている項目の一つです。

シスタチンCは血液中に含まれるタンパク質の一種で、腎臓で分解されて尿中に排泄される物質です。
クレアチニンと異なり体の筋肉量に影響されないマーカーとして、体重20kg未満の犬において慢性腎臓病の早期診断のために測定されることがあります。

このようなマーカーをうまく活用することで、従来よりも早く腎臓の機能低下を検出できるようになってきています。

尿検査で検出できる腎臓の異常

尿検査は腎臓病の診断をする上で重要な検査です。
というのも、尿を生成することが腎臓の主な働きであり、腎臓の機能に異常があれば尿にもその変化が反映されるからです。

変化としては、尿の濃さ(尿比重)が薄くなることや尿蛋白(微量アルブミン)が検出されるようになること、尿中に円柱と言われるものが多く検出されること、腎臓に結石がある場合は潜血反応がみられることなどがあります。

尿は腎臓の中でいくつかの段階を経て生成されます。
まずは毛細血管の塊である糸球体という部分から水分と共に体の老廃物がこしとられ、原尿という薄い尿ができます。
原尿はその後尿細管という部分を通過する際に必要な水分や糖質、電解質、アミノ酸などが再吸収されて濃縮され、最終的に排泄される尿となります。

腎機能が低下すると、水分を十分再吸収できずに薄い尿がたくさん出るようになったり、本来排泄されるはずのないタンパク質が尿中に漏れてしまったりするのです。

尿検査で尿比重が低下している場合や尿蛋白が認められた場合、それが腎臓病によっておこった変化なのかどうかを調べることで、腎臓病の早期発見につながります。

画像診断でわかる腎臓の異常

血液検査や尿検査で腎臓の異常が疑われた場合、画像診断を受けることが大切です。
血液検査で腎数値が上昇していれば慢性腎臓病というわけではなく、それ以外の病態が存在して腎数値が上昇していることも多々あるからです。

例えば尿路に結石などができて閉塞していたり、中には腎臓の構造に異常が生じていること(腫瘍や先天性の腎疾患)などが隠れていることがあり、その場合には治療の方法が異なります。

画像診断としてはレントゲン検査、超音波検査などが挙げられます。
レントゲン検査は腎臓の大きさや形の異常、結石の有無等を確認することに長けており、超音波検査は腎臓の内部構造を評価することが得意です。

とはいえ、レントゲン検査で結石を認めなくても超音波検査をしたら小さな結石が確認されることもありますし、超音波検査では見落としてしまう可能性のある尿管結石がレントゲン検査ではっきりと映る場合もあり、症例ごとにどの検査が診断に最も役立ったかは結果を見てみなければわかりません。

それぞれに得意な分野がある一方、その検出には限界もあるため、できれば画像診断はレントゲンと超音波検査の両方を実施することをお勧めします。

慢性腎臓病と高血圧

上記のような検査をしたうえで慢性腎臓病と診断された場合、気を付けたいのが高血圧です。

腎臓は体の水分量の調節を行い、血圧の調節に関わる物質(レニン)も分泌しています。
慢性腎臓病によって腎臓の血流や機能が低下すると、体の水分調節がうまくできなくなり、高血圧を発症してしまうことがあります。

腎性高血圧を放置してしまうと、様々な臓器に二次的に障害が起こる可能性があります。
中でも影響を受けやすいのが眼の網膜で、高血圧によって網膜に伸びる毛細血管が破綻して眼底出血を起こし、網膜剥離から失明に至ることがあります。

その他にも心臓や脳、腎臓自身に負担をかけ、心筋の肥大や神経症状、腎機能のさらなる低下を助長してしまいます。

そのため、慢性腎臓病の場合には血圧を測り、高血圧の兆候が見られた場合には治療が必要になります。

慢性腎臓病の治療

慢性腎臓病の治療には様々な方法があります。
慢性腎臓病によって機能が低下したり萎縮してしまった腎臓を元に戻すことはできないため、残っている腎臓の機能をできるだけ温存して進行を抑制する治療と、慢性腎臓病によって現れている症状があればそれを緩和する治療を行います。

行われる治療としては以下のようなものがあります。
・水分を十分摂取させる
・食事療法
・高血圧の治療
・蛋白尿を抑制する治療
・食欲不振に対する治療(食欲増進剤)
・吐き気に対する治療(吐気止め、消化管粘膜保護剤など)
・腎性貧血に対する治療(造血ホルモンの注射、鉄分・葉酸補充など)
・点滴による水分補給(皮下点滴あるいは静脈点滴)
・リン吸着剤や活性炭などの投与

慢性腎臓病は進行の程度によって4段階のステージに分けられ、それぞれのステージに推奨される治療方法があります。


ステージ1:腎臓病に関する症状は見られない最も初期の段階
治療としては、脱水症状を起こさないように水分摂取に気を付けること(いつでも新鮮な水が飲めるように環境を整える)、高血圧や蛋白尿の有無について注意しながらモニタリングし必要に応じて投薬を開始する、定期的な血液検査で腎機能を評価する、必要に応じて療法食の開始を検討することなどが挙げられます。

ここで気を付けたいのは、腎臓病の療法食についてです。
腎臓病の療法食はタンパクやリンを制限したものが多く見られますが、初期の慢性腎臓病においては過剰にタンパクやリンを制限することはあまりよくありません。

体の筋肉などを維持するためにはタンパクはある程度必要ですし、リンを制限しすぎて低リン血症になってしまうと、それによって高カルシウム血症を招いてしまうことがあるからです。

シニア用フードや早期の腎臓病食などでマイルドに制限する方が良い場合もありますので、血液検査でタンパクやリンを制限する必要があるのかどうかを調べた上で、かかりつけの獣医さんの指示に従いましょう。


ステージ2:無症状~軽度の多飲多尿がみられる時期
血液検査でBUN、クレアチニンやSDMAの軽度上昇がみられるようになります。
ステージ1の治療に加え、症状として食欲不振や悪心などある場合にはそれらに対する治療として消化管粘膜の保護剤や制吐剤、食欲増進剤などが使用されます。
また、この頃には腎臓病療法食への切り替えも検討します。


ステージ3:食欲の低下や吐き気、多飲多尿などが認められる時期
血液検査では中程度の腎数値の上昇が認められ、食欲不振、嘔吐、脱水、下痢、貧血など様々な症状が現れます。
ステージ2までの治療に加え、貧血の程度によっては造血ホルモン剤の補充(注射)や、貧血の改善をサポートするために葉酸や鉄分の補給ができるお薬の投与なども検討します。

また脱水も顕著になってくるため、必要に応じて皮下点滴などで水分を補給するとともに電解質の異常があればその補正も行い、体の調子を整えます。


ステージ4:慢性腎臓病の中で最も症状が進行した状態
重度の高窒素血症が認められる時期です。
尿毒症によって食欲が廃絶してしまうことが多く、脱水は重度となり、積極的な点滴治療を行う必要があります。
食べることが難しくなると体はみるみる衰弱してしまうため、栄養管理・投薬のために経鼻カテーテルを付けることなども検討することがあるでしょう。

この時期には食事内容は療法食にこだわらず、食べられるものを少しでも食べてもらうことに重点を置いてケアしてあげましょう。

筋力が落ちるとトイレまでの移動もかなり負担になるため、トイレをベッドの近くに移動したり、ベッドでしてしまっても大丈夫なように吸水性の良いペットシーツを敷いておいてあげると良いでしょう。
また体温維持などもうまくできなくなることがあるため、寒い時期には保温に努め、暑い夏には熱中症にならないように気を付けましょう。


上記のような治療はIRISという研究グループから示されたガイドラインに基づいていますが、腎臓病治療にはガイドラインには記載されていないお薬やサプリメントが効果的な場合もあります。

例えば腎臓の血管を広げつつ炎症をおさえ腎臓の萎縮や線維化を抑制するお薬や、消化管内でリンを吸着しつつ尿素窒素をエサとして取り込むことで腎数値の上昇を抑える乳酸菌サプリ、腎臓の機能低下を抑えつつ筋肉や体重の低下を予防できるアミノ酸サプリ、老廃物の吸着に優れたヤシ殻活性炭やキトサンなどを含みリンの吸着や貧血のケアもできるサプリメント(ウィズペティの毎日腎活)などがあります。

これらは体に大きな負担をかけずに補助的に腎臓をケアすることができ、初期の段階からも使用できるため腎臓病の進行をより効果的に抑制できます。

また食欲増進剤や制吐剤も効果の高いものが登場し、これらをうまく使うことによって、ステージが上がってもQOL(生活の質)を極端に低下させることなく治療できることも増えてきました。

沢山のお薬を飲ませることはペットにとっても飼い主さんにとっても負担になってしまいますので、全ての治療を必ずしもする必要はありませんが、選択肢が増えたために一つの治療が難しくても他の治療で進行を抑えることが可能になってきました。

沢山ある治療方法の中で、どの治療が一番必要でその方法であれば継続できそうか、獣医さんとじっくりと話し合って最適な治療方法を見つけてあげましょう。

終わりに

高齢の犬や猫が血液検査を受けたときに腎数値の上昇が認められることは割とよくあることですが、その結果だけで年のせいだとか慢性腎臓病だと思い込まないように気を付けましょう。

確かに高齢の動物では加齢による慢性腎臓病は多いですが、中には腎結石や尿管結石、あるいは腎臓の腫瘍、膀胱の腫瘍、尿道閉塞による急性腎不全や中毒性物質の摂取による急性腎障害のケースもあります。
このような場合は治療方法が異なります。

症状が認められたのはいつからか、最近の食欲や水を飲む量、おしっこの量に変化がなかったかどうか、痩せてきたと感じていたかどうかなど、日ごろの様子で気になっていたことがあれば病院でしっかり伝えましょう。
診断の重要な手掛かりになります。

血液検査は腎臓の機能に問題があることを検出できる検査の一つですが、正しく診断するためには尿検査や画像診断など他の検査が必須です。
とりあえず腎臓病の療法食に変えて様子を見ましょう、というのはお勧めできませんので、血液検査や尿検査で何らかの異常がみられた場合は一通り検査を受けて正しい診断をしてもらうようにしましょう。

そうすることでより効果的な治療ができるようになり、愛犬・愛猫ともより長く一緒に過ごすことができるようになるでしょう。

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