
ペットと一緒に旅行
最近はペットと泊まれる宿やキャンプ場などが増え、愛犬・中には愛猫と一緒に旅行を楽しむご家庭も増えてきたように思います。
しかし飼い主さんが一緒とはいえ、長距離の移動に加え初めて訪れる場所など、いつもと全く違う環境に置かれることで不安を感じているペットも少なくありません。
そのような緊張状態では、乗り物酔いや熱中症の他、ちょっとしたことでパニックになり思わぬ怪我をしてしまったり、元気・食欲がなくなったり、下痢や吐き気などの体調不良を起こしてしまうことがあります。
またキャンプやレジャー施設など屋外での活動時間が長くなると、ノミやダニがついたり、蜂に刺される、蛇に噛まれるなどといった自然界ならではのトラブルも考えられます。
そのような場合、すぐに病院を受診した方が良いケースもあります。
宿泊先の近くに動物病院があるかどうかや診療日・休診日などについてあらかじめ調べておくなど、備えをしておくことで万が一の時にも慌てず対応できます。

旅行中に起こりうるトラブル
旅行中には様々なトラブルが起こることがありますが、比較的多いものとして以下のようなものが挙げられます。
・乗り物酔い
・熱中症
・誤食
・持病の悪化
・怪我
・下痢や吐き気
・他の犬猫とのケンカ・咬傷
・脱走
これらの中には愛犬・愛猫の性格や体質、普段の生活の中での行動からある程度予測できるものも含まれています。
持病のある子や環境の変化で体調を崩しやすい子の場合などは、普段飲んでいるお薬を欠かさずに飲ませられるように病院で処方してもらうとともに、旅行に連れて行っても大丈夫な状態かどうかをかかりつけの先生にも相談するようにしましょう。
治療中の病気がある場合は、それまでの経過がわかるように直近の血液検査などの検査結果や投薬内容がわかる診療明細などをスマートフォンなどに画像として持っておくと、万が一の時にもより安心です。

乗り物酔い
犬も猫も、乗り物酔いをすることがあります。
普段から車などでお出かけすることに慣れている子であれば大丈夫なこともありますが、車での長時間の移動やフェリーで半日~1日かけての移動などは特に乗り物酔いが起こりやすいと考えられます。
予防策としては出発の一時間前くらいまでに酔い止めを飲ませておく、出発前にはあまりたくさん食べ物を食べさせない、揺れの少ない移動ルートを選ぶ、こまめに休憩するなどといったことが挙げられます。
犬や猫が乗り物酔いを起こした場合には、元気がなくなる、呼吸が速くなる、涎をたくさん垂らす、嘔吐するなどといった症状が見られます。
車での移動中にそのような症状がみられた場合には、パーキングエリアなど安全に休憩できる場所に車を停め、可能であればリードを付けて少し外の空気を吸わせてあげると良いでしょう。
酔い止めを飲ませ忘れていた場合は吐き気が落ち着いてから飲ませてあげ、症状が落ち着いてから出発するようにしましょう。
吐き気が強く、酔い止めを飲ませても吐いてしまうような場合は、必要に応じて最寄りの動物病院を探して受診し、注射で吐き気止めを打ってもらう必要があるかもしれません。
一度乗り物酔いが生じてしまうと投薬自体が難しくなることがあるため、初めての旅行で乗り物酔いするかどうかわからない場合であっても、できればペット用の酔い止めを用意して予防的に飲ませてあげる方が良いでしょう。

熱中症に対して
熱中症は夏季に起こるイメージが強いと思いますが、それほど暑くなくても起こることがあります。
例えば緊張・興奮しやすい犬猫が、狭いキャリーケージに入ったままで飛行機や車内などの普段とは全く異なる環境下に長時間置かれると興奮によって体温が上がることがあり、その時に水分をうまく摂取できなかった場合にも起こることがあるのです。
特に注意が必要なのは飛行機を乗り継いで遠方に旅行する場合です。
飛行機に搭乗する際、ペット達はクレートなどに収容された状態で預けることとなり、飼い主さんの目が届かなくなります。
飼い主さんと離れる不安に加え、大きな音、離着陸時の振動、気圧の変化など、ペット達には非常に大きなストレスがかかります。
基本的に飛行機内では貨物室内に置かれるため、飛行中に様子を見に行ったり客室乗務員に給水をお願いすることもできません。
そのため、預ける前にいつもと変わった様子がないかよく観察し、水分補給などは予め十分しておくようにしましょう。
乗り継ぎ便がある場合は、可能であれば一度飼い主さんの元にペットが戻ってくるように時間を調整し、ペットたちの様子をよく観察して途中で水分補給できるようにすると良いでしょう。
パグやブルドッグなどをはじめとする短頭種の犬は、気道が狭く呼吸が苦しくなりやすいことから熱中症の発症リスクが高いため、飛行機には搭乗できないことがあります。
飛行機に乗れるかどうかはあらかじめよく確認する必要があるでしょう。
飛行機だけでなく、車での長距離移動も同様です。
目の届くところにいるので油断しがちですが、例えばちょっと買い物をするために立ち寄ったお店でエンジンを切って車に残していってしまうと、暑い時期では数分で社内の温度は上昇し、車に戻ってきたときにはぐったりしてしまっているということもあります。
こまめに体調を確認し、決して人の不注意で愛犬・愛猫の体調不良を招かないように気を付けましょう。

ケガや病気の際は…
旅行中にケガをする、体調不良を起こしてしまうことも考えられます。
その程度は様々だと思いますが、状況によってはすぐに病院を受診した方が良い場合もありますので、近隣の動物病院は事前に必ずチェックしておくようにしましょう。
ケガにもいろいろありますが、特に気を付けた方が良いものとして、蜂や蛇など毒のある生物との接触や、骨折・脱臼等が疑われるような状態が挙げられます。
① 蜂に刺された場合
蜂に刺された場合は患部の腫れと痛みだけの場合もありますが、複数個所刺された場合やアナフィラキシーショックを起こした場合には重篤な状態になり命に関わることがあります。
そのため、蜂に刺されたとわかっている場合には必ず病院を受診しましょう。
病院に行くまでに時間がかかる場合は以下の様な応急処置をしながら病院へ向かいましょう。
・針が残っていたら抜く
・流水でよく洗う
・患部を冷やす
針が残っていた場合は、指でつまんで抜くと残っている毒液を注入してしまうことがあるため、カードや爪などで弾き飛ばして抜く方が良いとされています。
痛がって応急処置ができない場合は無理せず、できるだけ早く病院へ向かいましょう。
アナフィラキシーショックは急性のアレルギー反応が起こることで呼吸困難や血圧低下、チアノーゼ(舌が青くなる)、意識が朦朧とするなど重篤な症状が現れる状態で、処置が遅ければ命を落とすこともあります。
通常は蜂に刺されるのが2回目以降、という状況で起こりますが、過去に刺されたことがあるかどうかを飼い主さんが把握できていない場合もあるため、万が一に備えて必ず病院を受診しましょう。
② 蛇に咬まれた
日本にはマムシやヤマカガシ、ハブなどといった毒蛇がいます。
草むらや山の中を歩いている時に蛇を見かけた場合は、愛犬が飛びついていかないようにリードを短く持ち、静かにその場を離れましょう。
ペットが蛇に咬まれる状況として多いのは、草むらに鼻先を入れて臭いを嗅いでいる時に咬まれてしまうケースや、誤って蛇を踏んでしまって四肢を咬まれるケースです。
アオダイショウなどは無毒の蛇なので咬まれてもその部分の痛みがあるだけですが、先に挙げた毒蛇の場合は「出血毒」を持つため、咬まれた部分に強い腫れや内出血が現れるほか、中には全身症状を示し重篤な状態になることがあります。
愛犬が蛇に咬まれた時、蛇の種類がわからないことも多いと思いますが、毒蛇の場合は毒液を注入する長い牙があるため、咬まれた部分に2本(3~4本のこともあり)の牙の痕が残るのが判断材料になります。
毒蛇に毒液を注入されてしまうと、患部の痛みや腫れがみられ、徐々にその腫れが広がります。
痛みから元気がなくなり、症状が重くなると発熱や内出血、赤色尿、咬まれた部分からの出血が止まらない、吐き気・下痢、呼吸困難など重篤な症状が現れ、咬まれた部位によってはあるいは初期治療が十分でない場合には命に関わることもあります。
毒蛇に咬まれた可能性が高い場合は、動物を興奮させると毒液の回りが早くなるとも言われているため、安静にして直ちに病院へ向かいましょう。
無毒の蛇の場合も、蛇の歯に付着している細菌の感染などが起こり化膿することがあるため、病院を受診して投薬治療を受けましょう。
③ 骨折や脱臼
慣れない土地で遊んでいるうちに転んだり転落したりすることで、大怪我をしてしまうこともあります。
四肢のいずれかが着地できなくなったり、手足がブラブラしているような状態のときは骨折や脱臼が疑われますので、近隣の病院で検査・応急処置をしてもらい、場合によっては旅行の日程を切り上げて早めに帰り、かかりつけの病院や自宅近くの病院で外科治療を受けなくてはならないかもしれません。
④ 体調不良
旅先で多い体調不良では持病の悪化の他、食欲不振や下痢・嘔吐などの消化器症状を示すものが多く見られます。
消化器症状は慣れない環境でのストレスや、旅先で普段食べていないものを口にするなどといったことが原因となることが多く一過性で回復することも多いですが、長引かせないためにもできれば病院を受診しておく方が良いでしょう。
持病が悪化したと考えられる場合、それまでの治療経過がわかった方が適切な治療を受けられる可能性が高くなります。
処方されているお薬の種類や投与量などがわかるように、お薬を持参するか診療明細などをスマートフォンなどに記録しておき、いざというときに確認できるようにしておきましょう。

脱走対策は万全に!!
慣れない環境下では、普段大人しい愛犬・愛猫も思わぬ行動をしてしまうことがありますので、旅行に連れていく場合には脱走にも気を付ける必要があります。
脱走は動物が何らかの原因でパニックになってしまったときにキャリーケージから飛び出してしまう、リードが外れてしまう、屋外施設で遊んでいる時に柵の隙間や柵を越えてしまうことなどで起こることがありますが、必ずしも外にいる時に起こる訳ではありません。
例えば、ご実家に愛犬・愛猫を伴って帰省している際に逃げてしまうということもあります。
旅先で泊まる宿泊施設は、必ずしもペットたちの脱走対策がされているとは限りません。
ペットには必ず首輪やハーネスを付け、リードを離すことがないように気を付けましょう。
また、万が一に備えて迷子札を付け、マイクロチップの登録状態も確認しておきましょう。
もしペットが脱走してしまい、飼い主さんが自力で愛犬・愛猫を見つけることができない場合は、最寄りの動物管理センターや保健所、市役所・区役所、警察署、近隣の動物病院などに連絡し、収容されたという情報がないかどうか確認するとともに、保護された場合に連絡がもらえるようにペットの写真、愛犬・愛猫の特徴、マイクロチップの登録情報、連絡先などを伝えましょう。
しかしこれはあくまでも万が一の場合であって、飼育している犬猫を脱走させてしまうことがないようにしっかりと管理しなくてはならないことを肝に銘じておきましょう。

万が一に備えてできる事前準備
ペットとの旅行時には、様々な状況を想定してペットに必要なものを準備することも必要ですが、訪問先・宿泊先の近隣に動物病院があるかどうか、最寄りの動物病院は当日診療日となっているかどうかなどを予め調べておくことも重要です。
もしも旅行先で体調が悪くなってしまっても、焦らず病院を受診できるようにしておきましょう。
他の犬猫が集まるような場所に出かける場合は感染症予防をしっかりしておく必要があります。
混合ワクチン・狂犬病予防接種などの予防接種に加え、キャンプなどアウトドアでのイベントを企画している場合はノミやダニなどの外部寄生虫予防とフィラリア感染症の予防は欠かさないようにしましょう。
ペットと泊まれる宿泊施設では予防接種の証明書などの提示が必要ですので、最終接種日がわかる証明書を持参しましょう。
旅行直前に証明書を確認したら定期接種の時期を過ぎてしまっていた、ということもよくある話です。
旅行の前日などに予防接種を受けに来院するケースもありますが、予防接種後は副反応などで体調を崩してしまうこともあるため、出発直前での接種はあまりお勧めできません。
できるだけ余裕をもって、少なくとも旅行の1週間前には接種しておくようにしましょう。
長距離移動する場合や、短距離であっても普段から乗り物酔いをしてしまう犬猫の場合は、酔い止めも必要です。
ペットショップやホームセンターのペットコーナーで販売されているものがありますが、より効果の高い酔い止めが必要な場合は動物病院で処方してもらうことをお勧めします。
持病がある場合には治療の経過や投薬内容をメモしたりスマートフォンに検査結果などを記録しておくと便利です。
普段投薬しているお薬は忘れずに持ちましょう。
マナーを守って楽しい旅行に
旅行やお出かけは楽しみですが、マナーを守ることを心がけ羽目を外しすぎないように気を付けましょう。
例えばキャンプ場などに連れて行った場合、のびのびと遊ばせてあげたい気持ちもわかりますが、リードを外して自由に走らせるのは非常に危険です。
土地勘のない場所で遊んでいるうちにはぐれてしまったり、他のご家族が連れてきたワンちゃんと接触してケンカになってしまったり、野生動物(猪や鹿、蛇、蜂など)と遭遇して怪我したりする可能性もあります。
また川で流されてしまったり、崖からの転落の可能性もゼロではありません。
またペット連れOKの施設や敷地内であっても、動物が苦手な方や、動物とのふれあい方がわからない小さなお子さんがいることも忘れてはいけません。
飼い主さんの目の届く範囲内で遊ばせ、リードは決して離さないように心がけましょう。
また普段のお散歩時と同様、排泄物の処理も徹底しましょう。
宿泊先や公共交通機関にもペットを連れている飼い主さん向けの注意事項がそれぞれあります。
他の犬猫とのトラブルを避けるためにも、宿泊先でのペットの行動可能範囲を確認しておくなど、施設ごとのルールをホームページ上で出発前によく確認し、マナーを守ってお互いに気持ちよく過ごせるように心がけましょう。
他の利用客に不快な思いをさせないように配慮することで、飼い主さんもペット自身も心から楽しめる旅行になるでしょう。
