
体の中の水分の役割
動物の体には水分が必要不可欠であることは言うまでもありません。
ヒトでは体の約60%は水分で構成されていると言われていますが、犬や猫など動物の体も約70~80%が水分で構成されており、子犬や子猫など幼若な動物ほど体の水分割合が多いとされています。
体内の水分は血液やリンパ液、細胞内液や細胞外液として体のあらゆるところに存在しており、血液やリンパ液として栄養分や酸素を全身に届け、二酸化炭素や体の老廃物を回収して肺や腎臓へ運び排泄させるという重要な働きをしています。
また水分は体温の調節にも関わっています。
ヒトは暑い時に全身で汗をかくことによって体温を下げようとしますが、犬や猫などの動物は肉球部分でしか汗をかくことができません。
体表面で汗をかかない代わりに、口を開けてハアハアするパンティングによって口から水分を蒸散させ、体温を調節しています。
口から体に入った水分は体内で循環した後、老廃物と共に尿として排泄される他、呼吸からの蒸散や体表面からの蒸散、一部は便中の水分として、毎日一定量が動物の体から失われていきます。
そのため、安静にしていても最低限日々の代謝によって失われる分の水分は毎日補給する必要があります。
さらに外気温や運動量の多さ、病気などの要因が加わることによって水分必要量は増えます。
季節やペットの体調に応じて意識的に水分を摂取させた方が良いことも多いので、今の水分摂取量は十分かどうか、体は脱水が起こりやすい状態になっていないかどうかを一度チェックしておくと良いでしょう。

水分摂取が足りないと…?
上でお示しした通り、動物の生命維持に水分摂取は欠かせません。
では水分が足りないとどうなるのでしょうか?
日々体から失われる分の水分が十分に補給されないと、体は徐々に脱水を起こしてしまいます。
脱水が起こると元気や食欲がなくなる、尿量が減るなどといった変化が現れるほか、皮膚をつまんだ時につまんだ形のままなかなか元に戻らなかったり、口の中(舌や歯茎)が乾燥し、口臭が強く感じられるようにもなります。
体の中では血液中の水分が不足しているために全身の血液循環が悪くなり、酸素や栄養の運搬、体にたまった老廃物の回収・排泄が悪くなります。
また体内の水分量が少ないために口腔内も乾いた状態になり、パンティングによる体温の放散もうまくできなくなります。
軽度であれば食欲不振や少し元気がないという症状が現れる程度ですが、暑い環境下では熱中症をおこしやすくなり、脱水が重症化すると循環不全から多臓器不全となり、命の危険に陥ることもあるため注意が必要です。
健康な動物であっても、激しい運動時や外気温が高いなどといった要因が加わると必要な水分量は多くなりますので、いつもより水分を積極的に補給する必要があります。
若齢・高齢動物や何らかの疾患を抱えている犬猫ではより注意が必要です。
特に気を付けなくてはならないのが、腎臓病・糖尿病・ホルモン疾患など、多尿傾向になる病気にかかっている場合です。
これらの病気では尿として排泄される水分が通常よりも多くなっているため、もともと脱水が起こりやすい状態となっているからです。
通常は多尿によって多渇感が生じるため飲水量も増えているはずですが、暑い季節に不感蒸泄(皮膚表面や呼吸などによる蒸散)が増えることや、何らかの原因で水分摂取が減ってしまったり、下痢や嘔吐によって体内の水分がさらに減ってしまうような状態に陥ると容易に脱水を起こしてしまいます。
あまりにも重度の脱水になってしまうと水分を口から補給することも難しくなってしまうため、点滴治療が必要になります。
健康であってもある程度の水分摂取は必要ですが、特定の疾患を罹患している犬猫ではさらに水分摂取を心がける必要があることを忘れないようにしましょう。

一日に必要な水分量は?
犬や猫が一日に必要な水分はどれくらいでしょうか?
水分の必要量には個体差や様々な要因が影響しますが、健康な犬猫が普通に生活していて必要な水分量はおおまかには体重1kgあたり約40~60mlと言われています。
水分の必要量に影響する因子には年齢、運動量、環境温度、持病の有無など様々なものがあります。
暑い時期や運動時はいつもより必要な水分量が増えますので、いつでも水が飲めるようにお出かけ時には飲み水を十分持っていくこと、自宅にいる時にも愛犬・愛猫が飲みたいと思ったときにいつでも水を飲めるようにたっぷりと飲み水を用意しておくように心がけましょう。
またたくさん汲んでおいた水も、汚れたり暑い環境下で長時間置かれたものでは飲まないことがあります。
少なくとも半日に一回は汲みかえること、たくさん飲む子の場合や多頭飼育の場合は水をきらすことがないよう大きめの給水器や複数のボウルを使用するなど、飼育状況に合った配慮をするようにしましょう。

飲水量を測ってみよう
愛犬・愛猫が普段どれくらい水を飲んでいるか、測ってみたことはあるでしょうか?
飲水量は病気の初期兆候としても変化がみられることがあるため、なんだか尿量が多い、水の減りが早い、あるいは水を一度にたくさん飲む、逆にほとんど水が減っていないなどということが気になった場合は一度飲水量を測ってみましょう。
測る方法は割と単純です。
水飲みに入れる水の量を測っておき、新たに汲みかえる時に残っている水の量を測ることで飲んだ水の量がわかります。
汲み置きの水では蒸発によって減る分や飲水時にこぼれる水も多少ありますが、大体どれくらい飲んでいるかを把握することはできます。
普段どれくらい飲んでいるかを把握しておくことは体調管理に役立ちます。
時間がある時に是非チャレンジしてみてください。

水分を十分に摂らせるためにはどうしたらいい?
水分補給のために飼い主さんがしておくこととしては、ペット達が喉が渇いた時に自由に飲める水を十分に用意しておくことが基本です。
ペットの体格や飲水量に合わせた水の入れ物を用意し、こまめにチェックして水が足りなくならないようにしましょう。
水分補給というと、『水を飲ませる』ことに意識が向きがちですが、水分は食事にも含まれているため、食事内容によってはある程度水分補給されている場合もあります。
ウェットフードの水分量は約70~80%のことが多く、ウェットフードをメインで食べている子の場合はドライフードを食べている子に比べると水を飲む量が少なくても問題ないこともあります。
またドライフードであっても約10%は水分を含んでおり、セミモイストなどであれば20~30%ほど水分を含んでいると考えられます。
そのため、水分をできるだけしっかりとらせたいけど普段からあまり水を飲まない、という子の場合でも、食事内容によっては心配しすぎなくて良いこともあるのです。
普段ドライフードだけを食べていて水をあまり飲まない場合は、食事内容をドライフードからウェットフードに変更したり、ウェットフードと混合にしてみるのも水分補給にいいかもしれません。
どうしてもドライしか食べない、という場合は、ドライフードをふやかして与えてみたり、ふやかさなくてもドライフードに水を少しかけて与えることで食事と一緒に水分が口に入るのでうまくいくことがあります。
また水の入れ物を変えることで飲水量が変わることもあります。
水入れにはボウルの他、ケージなどに吊り下げるボトルタイプや循環式のウォーターサーバーなどがあります。
どれがいいかは個々の好みによることが多いため、実際に試してみるしかありませんが、飲水量が少ないことが気になる場合は水の入れ物を変えてみることも検討してみましょう。
水の好みによって飲んだり飲まなかったりということもあります。
汲みたての水だとよく飲むケースや、猫では蛇口から出る水を飲むのが好きであったり、ぬるま湯だとよく飲むということもあります。
ボウルに汲んだ水は、一度口を付けた後時間が経つと菌が繁殖する可能性もありますので、気づいた時にこまめに入れ替えてあげるように心がけましょう。
流れる水の方が好きな子の場合、蛇口の様に水が出るタイプや噴水のように湧き出すタイプの自動給水器などもありますので、そのようなツールを活用してみるのも良いでしょう。
食事の工夫や水の入れ物を変えても水分摂取が十分でないと感じる場合は、スープやゼリータイプのおやつなどで補充する方法もおススメです。
色々なツールの中から、愛犬・愛猫にも飼い主さんにもストレスのかからない方法で水分摂取をサポートしてあげましょう。

水分を取らないのは体調不良が原因かも?
どんな方法でもあまり水を飲まない子の中には、加齢による体のトラブルが原因で飲まない(飲めない)ケースもあるため、注意が必要です。
例えば加齢による首や腰、関節などの痛みがある場合、低い位置にあるウォーターボウルから水を飲みにくくなっていることがあります。
その場合はボウルの下に台を置いて少し高くしてあげたり、もともと高さのある水飲みに変更してあげると良いでしょう。
また歯周病や口腔内の炎症・痛みが原因で舌や口をうまく動かせない場合や、ごく稀ですが筋肉が萎縮するような病気が原因で舌や顎をうまく動かすことができなくなり摂食や摂水が困難になっていることもあります。
このような病気の場合には、原因となっている疾患の診断と適切な治療が必要です。
白内障など目の疾患によって視覚障害が起こっている場合や認知機能低下によって水の場所がわからなくなってしまうこともあります。
その場合は水のある場所に誘導してあげたり、鼻先に水をつけてあげたり、ある程度飼い主さんのサポートが必要になります。
水を飲んでいる時や食事をしている時の様子を観察し、口を動かしづらそうにしていたり痛みの兆候などが見受けられる場合、脱水が起こっているような兆候が見られる場合には一度病院を受診しましょう。

涼しい時期にも水分摂取を
暑い時期にはペットの水分補給に気を配れていても、涼しくなるとなんとなく積極的に水分を摂取させることが減ってしまいがちです。
ですが、涼しいからと言って水分が必要ないということはありません。
涼しくなりはじめの秋口から冬にかけて、動物病院には尿石症などによる膀胱炎の患者さんが多く来院します。
これは夏に比べて水分摂取量が減ることと関連しています。
涼しくなって飲水量が減ると、尿量も少なくなります。
体は尿を生成する際、必要な水分を腎臓で再吸収して体に残すため、飲水量が少なくなるとその分尿量が減り、尿は濃くなります。
そうすると尿中に含まれるミネラル分の濃度が上がり、尿中に結晶が析出しやすくなるのです。
尿中に結晶がたくさん析出すると、膀胱粘膜を結晶や結石が刺激し、頻尿や血尿といった膀胱炎症状を示すようになってしまうのです。
膀胱炎の治療・予防にも水分摂取はとても重要ですので、暑い時期だけでなく年間を通して、コンスタントに水分を摂取できるように家庭内の環境を整えてあげましょう。

終わりに
毎日の水分摂取は体を健康に維持するために必要であることをご紹介しました。
ざっくりとでいいので愛犬・愛猫が日々どれくらい水を飲んでいるか、排泄はしっかりできているかを意識するようにしましょう。
そうすることが病気の早期発見にも繋がります。
またここでは詳しく書きませんでしたが、普段あまり水を飲まない子が急にたくさん水を飲むようになった場合には、糖尿病や腎臓病、ホルモン疾患、未避妊の女の子であれば子宮蓄膿症の可能性などが考えられるため、一度病院で健康診断(血液検査や尿検査)を受けることをお勧めします。
まだまだ続きそうな暑い夏~秋、しっかり水分をとって元気に乗り越えましょう。









