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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の変形性関節症とは

関節の構造に変化が起こる関節疾患です。

関節に過剰な負荷がかかったり、先天的に関節が変形する疾患を抱えている場合、あるいは加齢によって関節に変形が起こり、運動機能の障害や痛みが生じる疾患です。

身体にはたくさんの関節があり、手足を曲げたり背骨がしなったりすることで滑らかに体を動かすことができます。
ところが、何らかの原因で関節に慢性的な炎症がおこったり関節軟骨を損傷すると、関節面に変形や痛みが生じ、関節を滑らかに動かすことができなくなります。
症状が強くなると動きたがらなくなり、トイレの段差も超えられないなど、生活に支障が出ることもあります。

多くは中高齢の猫で見られる関節の問題ですが、若い猫でも潜在的に関節の問題が進行していることがあります。
体重管理や関節に負担がかかりにくい環境づくりをすることで、関節に負担がかからないようにしてあげましょう。

猫の変形性関節症の症状とは

初期には症状を示さず、緩やかに進行します。

猫の変形性関節症は、初期にはあまり症状を示しません。
加齢に伴ってゆっくりと進行することが多く、目に見える症状も徐々に表れるため、年のせいで活動性が低下してきたと思われていることが多い疾患です。

症状としては以下のようなものがあります
・遊ばなくなった(活動性の低下)
・ジャンプしなくなった
・立ち上がるのが遅い
・動きが緩慢
・関節の動きが悪い(関節可動域の低下)
・びっこを引いて歩く
・足を引きずる
・関節が腫れている
・元気がない
・トイレでの排泄が困難になる
・毛づくろいができなくなる
・体を触られるのを嫌がる

猫の変形性関節症が最もみられるのは肘関節で、次に背骨、股関節という順です。
四肢に起こる変形性関節症では、関節が動く範囲が狭まってしまう(可動域の低下)ことで、歩くときに片足だけ歩幅が狭くなり、びっこを引いたような歩き方になります。

目立った症状がない猫でも、12歳以上の猫で90%にレントゲンでわかる関節の変化(骨棘や骨増生)がみられたという報告もあります。

症状が出る前に診断できれば、積極的に関節を保護することで進行をより緩やかにし、高齢でも快適な生活を送ってもらうことにつなげられます。

猫の変形性関節症の原因とは

加齢に伴って起こります。

関節は骨の先端にある関節軟骨と、関節包、関節液、及び靭帯などの支持組織で成り立っています。
加齢に伴って関節軟骨の代謝に変化が生じると、関節軟骨の菲薄化やびらん・潰瘍形成といった軟骨の変性が起こり発症します。
関節軟骨が削れてしまうと非常に強い痛みが生じ、運動を嫌がるようになります。

外傷性におこるものもあります。

関節を損傷するような外傷によっても起こります。
交通事故や高所からの落下、もしくは滑る床などで関節に不意に強い外力がかかると、周囲を支える靭帯の損傷や、亜脱臼、脱臼などが起こることがあります。
それによって関節に不安定性が生まれると、関節部の骨増生や関節軟骨の摩耗が起こり、可動域の低下や痛みといった症状が現れます。
また、四肢の骨を骨折した後不整癒合が起こると、関節にかかる負担が大きくなり、その結果として変形性関節症が起こることがあります。

その他には肥満などが原因となります。

関節がまだ不安定な成長期に、肥満や過度の運動によって関節に大きな負担がかかる状態が長く続くと、関節炎から変形性関節症を起こすことがあります。
他には先天的な要因として、股関節形成不全、骨軟骨形成異常、ムコ多糖蓄積性疾患などによっておこる場合もあります。

猫の変形性関節症の好発品種について

以下の猫種で好発がみられます。

加齢による変形性関節症はどんな猫でも起こります。

先天性疾患として、
股関節形成不全(メインクーン、デボンレックス、ペルシャ、ヒマラヤン)
骨軟骨異形成症(スコティッシュフォールド、マンチカン、アメリカンカール、ヒマラヤン、ペルシャ)
ムコ多糖性疾患(ラグドール、シャム、オリエンタルショートヘア、バリニーズ、トンキニーズ、アメリカンショートヘア)
などがあると起こりやすいとされています。

猫の変形性関節症の予防方法について

体重管理と適度な運動で健康的な体を保ちましょう。

肥満は関節、特に前肢の関節に大きな負担になります。
体重管理を適切に行い、太らせないことが変形性関節症の予防にもなります。

また、関節を支えるのは靭帯や周囲の筋肉です。
筋力が低下していると、不意にかかった外力に対応できず、靭帯の損傷から関節炎などを起こす原因ともなります。
日常的に程よく運動することで関節を動かし、筋力が低下しないようにしましょう。
高くジャンプしたり、激しい運動をする必要はありませんが、滑らない床でおもちゃを追いかけるような遊びで少し体を動かすよう工夫しましょう。

生活環境も重要です。

滑る床の上で走り回ったりすると、滑った拍子に思わぬ外力が関節にかかり、関節炎を起こしたり、場合によっては亜脱臼や脱臼を起こしてしまいます。
滑る床には滑り止めや敷材を敷いて、滑って転ばないような環境を作りましょう。
同様の理由で、爪が伸びている状態や肉球を覆うほど足の裏の毛が伸びているのは良くありません。
時々チェックして、爪切りや足裏の毛のカットを行うようにしましょう。

また、猫は高いところからジャンプして飛び降りることが多いですが、年とともに筋力が落ちてくると、その衝撃を吸収しきれず関節に大きな負担になることもあります。
ある程度年齢が進んだら環境を見直し、ケガの危険がある場所には行けないようにしましょう。

軟骨保護成分を摂取することも効果的です。

サプリメントなどで関節の軟骨保護成分を含んだものがたくさん販売されています。
年を重ねるごとに関節にかかる負担は蓄積し、関節液が減ったり関節軟骨がすり減ってしまうこともあるため、グルコサミンやコンドロイチンなど、関節保護成分を補給してあげることで関節の環境を改善し、関節の可動域の低下を防ぐことが期待できます。
特に関節疾患を起こしやすい猫種では、積極的に関節を保護することをお勧めします。

猫の変形性関節症の治療方法について

対症療法を行います。

摩耗してしまった関節軟骨や変形が起こった関節を元に戻すことはできないため、治療は主に痛みや炎症をとり、進行を抑制することがメインになります。

痛みや炎症をとるためには消炎鎮痛剤を使用します。
消炎鎮痛剤には消化器症状などの副作用がみられることもあるため、投薬中は食欲や吐き気などを注意深く観察し、痛みの症状に改善が見られたら速やかに投薬量を減量し、必要がなくなったら投薬終了します。
また、他の治療を組み合わせることによって、消炎鎮痛剤の投与量を減らすことができる場合もあります。

関節内の環境を改善するためには、関節保護成分による治療を行います。
ヒトや犬ではヒアルロン酸を関節内に注射する方法などがありますが、猫ではあまり行われません。
猫でも行える方法には、軟骨や滑膜の炎症を抑制し、軟骨の基質を生成する活性を高めることで関節の状態を改善する効果を持つペントサンナトリウムという成分を皮下注射で投与する方法です。
本来、犬用に開発された薬ですが、一部の猫でも効果がみられます。

状態に応じた運動療法を行います。

変形性関節症になると関節の動きが悪くなり、場合によっては痛みが生じるため、運動しなくなることが多くなります。
動かないと、関節を支える周りの筋肉も徐々に減少してますます歩行状態が悪くなり、関節にもさらに負担をかけるという悪循環に陥るほか、運動不足による肥満にもなりかねません。
進行を抑制するためには、関節に負担をかけない程度に運動し、関節を動かすことも必要です。

しかし猫を適度に運動させる、というのは結構難しいことです。
おもちゃで誘発して追いかけさせると運動できますが、痛みがあれば動こうとしませんし、遊びに夢中になると、興奮して走り回ったりジャンプしてしまいます。
その場合は、飼い主さんがストレッチやマッサージをすることで運動させるようにします。
横に寝ているときに関節の曲げ伸ばしをするように動かしてあげると、あまり負担をかけずに関節周りの筋肉を運動させることができます。

フードやサプリメントは治療の補助となります。

関節疾患を持つ猫のためのフードやサプリメントが販売されています。
これらには関節保護成分とされるグルコサミンやコンドロイチン、緑イ貝抽出物などが配合されています。
フードやサプリメントだけで症状がなくなるわけではありませんが、進行を抑制する、鎮痛消炎剤の投薬量を減らすことに役立つ可能性があるため、補助的な治療として使用するといいでしょう。

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