犬の疥癬(かいせん)症とは
ヒゼンダニによる非常に痒みの強い感染性の皮膚疾患です。
犬の疥癬とは、イヌセンコウヒゼンダニの感染による皮膚疾患です。ヒゼンダニは皮膚の角質層に寄生し、トンネルをつくってその中で排泄したり産卵します。その結果、様々な皮膚症状を引き起こします。
また、疥癬は人獣共通感染症とされています。通常、ヒゼンダニは宿主特異性が強いため、イヌセンコウヒゼンダニはイヌ科の動物の体以外では繁殖できません。そのため、人間には一過性の寄生による偶発的な感染が見られます。
犬の疥癬(かいせん)症の症状とは
非常に強い痒みが見られます。
疥癬の症状としましては、非常に強い痒みが特徴です。鱗屑と呼ばれる皮膚がガサガサになった状態が特徴とされる角化型疥癬と、様々な皮膚症状が見られる通常疥癬があります。角化型疥癬は、イヌセンコウヒゼンダニの多数寄生しており、若齢の犬や高齢の犬でよく見られます。耳、肘、踵に症状がよく見られ、全身に拡大することもあります。通常疥癬は、イヌセンコウヒゼンダニは少数寄生とされ、強いアレルギー反応が原因とされています。皮膚には紅斑(皮膚の赤み)、丘疹(皮膚のブツブツ)、脱毛など様々な症状が見られます。
疥癬になってしまった犬の耳を触ると、後肢を動かして掻こうとする仕草を見せます。これを耳介ー後肢反射と呼びますが、疥癬の犬の80%でこの反射が見られるとされています。
犬の疥癬(かいせん)症の原因とは
イヌセンコウヒゼンダニの寄生が原因です。
疥癬は、イヌセンコウヒゼンダニの寄生が原因となりますが、イヌセンコウヒゼンダニの皮膚や糞便に対するアレルギー反応によって症状が出ます。
イヌセンコウヒゼンダニは、卵から成虫まで約14日間と言われていますが、幼虫、若虫、成虫のどの状態でも感染が成立します。
犬同士が接触する機会の多い公園、ドッグラン、ペットショップなどで感染することが多いですが、タヌキやキツネなどの野生動物の巣や死体との接触も感染の原因になることがあります。猫などのイヌ科以外の動物がイヌセンコウヒゼンダニの感染原因になることはないとされています。
犬の疥癬(かいせん)症の好発品種について
全犬種で好発します。
感染性の皮膚疾患ですので、好発犬種はありません。
犬の疥癬(かいせん)症の予防方法について
早期発見・早期治療をおこないます。
基本的には早期発見・早期治療をおこないます。タヌキなどの野生動物がイヌセンコウヒゼンダニの感染の原因となることがありますので、タヌキが出没する場所にはできるだけ近付かない方が良いかもしれません。特に毛の無いタヌキは疥癬である可能性が高いため、注意が必要です。
犬の疥癬(かいせん)症の治療方法について
イヌセンコウヒゼンダニの駆除をおこないます。
イヌセンコウヒゼンダニの駆除には、イソキサゾリン系化合物の駆虫剤が使用されます。イソキサゾリン系化合物の駆虫剤は、ノミやマダニの駆虫剤として認可されていますが、イヌセンコウヒゼンダニの駆除にも効果が報告されています。
以前はイヌセンコウヒゼンダニの駆除にはイベルメクチンをはじめとしたアベルメクチン系の駆虫剤がよく使用されていました。コリーなどの一部の犬種では、遺伝子の先天的な変異によりアベルメクチン系の駆虫剤に対して重篤な副作用が生じる可能性があるため、近年ではあまり用いられない傾向があります。
愛犬が疥癬症になってしまった場合、同居犬がいたら症状が見られなくても全ての同居犬に対して治療をおこないます。また、イヌセンコウヒゼンダニは湿度が保たれている環境では長く生存できるとされていますので、徹底的に清掃しましょう。清掃に使用したタオルなどは、60℃以上の熱湯を用いてイヌセンコウヒゼンダニとその卵を死滅させます。