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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬のエプリスとは

歯肉にできた増殖性腫瘤の総称です。

歯肉や歯根膜から生じる増殖性の腫瘤をエプリス(エプーリス)と呼びます。エプリスとは臨床的な症状から見た呼び名であり、病理組織学的な名称ではありません。
エプリスには、炎症が原因とされる線維性エプリス、腫瘍性のエプリスである線維腫性エプリス、骨形成性エプリス、棘細胞性エプリスがあります。現在は名称が混在しており、線維性エプリスは歯肉過形成と呼ばれ、線維腫性エプリスと骨形成性エプリスは周辺性歯原性線維種にまとめられ、棘細胞性エプリスは棘細胞性エナメル上皮腫と呼ばれるようになりました。病理の専門家の間ではエプリスという名称は使われない傾向にあるようです。

犬のエプリスの症状とは

エプリス

エプリスの初期は無症状であることが多いとされています。進行してエプリスが大きくなってくると、フードを食べづらそうにしたり口からこぼすことがあります。二次的に細菌感染を起こし、口臭、流涎が見られることもあります。
犬のエプリスで最も多く見られるのは線維性エプリスとされていますが、形状、硬さ、色などの見た目は様々ですので、病理組織学的検査が必要になります。

棘細胞性エプリス(棘細胞性エナメル上皮腫)

外観上はそれほど悪くなさそうで、他のエプリスと似ています。良性腫瘍に分類されていますが、十分にマージンを確保できなければ再発を繰り返します。病変部分が増大し、手術が難しくなってしまうこともあります。
また、棘細胞性エプリスは骨への浸潤がよく見られます。外観上は悪くなさそうに見えても骨浸潤が重度である場合もあり、注意が必要です。

犬のエプリスの原因とは

炎症性のも、腫瘍性のものがあります。

線維性エプリスは、口腔内の炎症が原因であるとされています。口腔内での歯肉に対する刺激が原因となり歯肉が限局的に増殖します。歯垢、歯石があることで口腔内に炎症を起こしたり、咬み合わせが悪いことで歯肉を刺激することも線維性エプリスの要因となります。

犬のエプリスの好発品種について

全犬種で好発します。

どの犬種でも起こり得ますが、7歳以上で発生しやすいとされています。

犬のエプリスの予防方法について

デンタルケアをおこないましょう。

線維性エプリスは口腔内の炎症が原因となります。口腔内の衛生状態を保つことで炎症を引き起こさないようにすることができます。日々の歯磨き、歯垢および歯石の除去をおこなうことは線維性エプリスの予防につながると言えます。
また、口腔内の腫瘤の半分以上は炎症が原因であるとされています。線維性エプリス以外には、線維性ポリープ、炎症性ポリープ、可能性歯肉炎などが挙げられます。口腔内の衛生状態を保つことで多くの口腔内腫瘤の予防ができる可能性があります。

犬のエプリスの治療方法について

エプリス

エプリスの外科的な切除が必要になります。エプリスと歯肉の境界が不明瞭な場合は、なるべく大きく深く切除しなくてはなりません。
炎症が原因である線維性エプリスの場合は、エプリスの切除と同時に歯石除去をおこなったり、不正咬合の治療をおこない、炎症の原因となる疾患も治療する必要があります。
線維腫性エプリスや骨形成性エプリスなどの腫瘍性のエプリスの場合、外観上で異常な部分だけの切除では腫瘍組織が残ってしまい再発してしまうことがあります。再発が見られた場合はより深い切除が必要になります。

棘細胞性エプリス

他のエプリスと同様に外科的な切除をおこないます。棘細胞性エプリスは骨浸潤性、再発性が高いため十分なマージンの確保が必要になります。初回の手術では1㎝程度、再発の場合は1㎝以上のマージンが必要とされています。遠隔転移は起こらないとされていますので、マージンが十分に確保できれば再発は防げるとされています。
放射線への反応性が高いため、放射線治療をおこなうこともあります。外科的な切除が困難な場合は放射線治療が選択肢の一つになりますが、放射線治療のみでは再発することもあります。

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