犬のワクチンアレルギーとは
ワクチン接種後に、局所性または全身性の有害事象が発生することがあります。
犬において、ワクチン接種後に免疫介在性および非免疫介在性のメカニズムにより、局所性または全身性の有害事象が発生することがあります。ワクチンアレルギー(ワクチン接種後有害事象)が発生した場合には適切な対処が必要となります。
犬のワクチンアレルギーの症状とは
全身性、局所性の症状が見られます。
ワクチンアレルギーの厳密な定義は存在しませんが、臨床的にワクチン接種後に発生するⅠ型過敏症反応のことを指します。全身性アナフィラキシーとして循環器、呼吸器症状(虚脱、頻脈、低血圧、チアノーゼ、呼吸促迫、呼吸困難など)の他、全身性アナフィラキシーの一部または局所性アレルギー反応として皮膚症状(顔面の腫脹、浮腫、掻痒、紅斑、蕁麻疹など)や消化器症状(嘔吐、下痢など)が発現します。
日本における犬のワクチンアレルギーの発生率は、狂犬病以外の混合ワクチン接種1万回につき、循環器、呼吸器症状の発生が7.2頭、皮膚症状が42.6頭、消化器症状が27.9頭であったことが報告されています。
ワクチンアレルギーは、ワクチン接種回数が増えるにつれて発症頭数が増える傾向にありますが、初回のワクチン接種時でもアレルギー反応を起こす犬が存在します。
犬のワクチンアレルギーの原因とは
ワクチンに含まれる蛋白質が原因とされています。
ワクチンアレルギーには様々なメカニズムが関与していると考えられていますが、その1つとして、市販の犬用ワクチンに含まれる牛胎児血清や牛血清アルブミンが原因アレルゲンとなり、IgE依存性に全身アナフィラキシーやアレルギー反応を誘発する経路が明らかになっています。
アレルゲンおよびIgE刺激により脱顆粒した肥満細胞からヒスタミンなどのケミカルメディエーターが放出され、末梢血管の拡張、血管透過性更新、浮腫などが起こります。その結果、急激な血圧低下が生じ、心臓への血液灌流が十分におこなえず、血液分布異常性ショックに陥ります。
呼吸器系においては、気管支平滑筋の痙縮および喉頭・気道浮腫が起こり、気道閉塞性の呼吸困難となります。
皮膚においては、消化管平滑筋の収縮、肝静脈のうっ血、門脈圧の亢進などが起こり、嘔吐や下痢が生じます。
これら各臓器における反応は、単独で発生する場合もあれば、全身性に複合して発生する場合もあります。
犬のワクチンアレルギーの好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- ミニチュアダックスフント
日本においては、小型種とくにミニチュアダックスフンドでワクチンアレルギーの発生が多く見られます。
犬のワクチンアレルギーの予防方法について
アレルギー反応の予防プログラム
ワクチンアレルギーの予防プログラムとして、ワクチン接種1時間前に副腎皮質ホルモン剤、抗ヒスタミン剤の注射をおこなう方法があります。ワクチン接種後、1日1回副腎皮質ホルモン剤、8時間毎に抗ヒスタミン剤の経口投与を必要に応じて3~5日継続します。
ワクチン接種後の観察
ワクチン接種後のアレルギー反応として、ワクチン接種後1時間まで(とくに5分以内)は、死に至る可能性のある全身性アナフィラキシーが発生することがあり、接種後数日は皮膚症状や消化器症状が発現することがあります。ワクチンアレルギーと思われる症状が認められたらただちに獣医師に連絡しましょう。
犬のワクチンアレルギーの治療方法について
全身性アナフィラキシーの場合
治療が遅れると致命的になる可能性が高いため、優先順位をつけて治療をおこないます。
喉頭および起動浮腫に伴う呼吸困難を起こしている場合には、気道を確保して酸素吸入をおこないます。
全身性アナフィラキシーの病態である血液分布異常性ショックうぃ起こしている場合には、血管拡張と血管外への大量の液体漏出が起こるため、アドレナリン投与による血管収縮と点滴静注による循環血液量の確保をおこないます。
グルココルチコイドは投与後、効果が発言するまでに数時間を要し、抗ヒスタミン薬はショックを改善させることはできないため、前述の治療をおこなった後に投与します。
皮膚症状や消化器症状のみの場合
ワクチンアレルギーが認められたら、抗炎症量の副腎皮質ホルモン剤を皮下投与し、その後3日間経口投与します。同時にヒスタミンH1受容体拮抗薬を筋肉内投与します。