猫のエチレングリコール中毒とは
エチレングリコールは猫に重篤な腎障害を起こします。
エチレングリコールは、自動車の不凍液や保冷剤、工業用溶剤に含まれる成分です。
味に甘みがあることから、犬猫が誤って口にすることが多く、ペットの中毒の中でも割と発生の多い中毒です。
エチレングリコールは摂取すると速やかに吸収され、腎臓や中枢神経系に影響を及ぼします。
摂取量によって症状の程度は様々ですが、猫は犬に比べて感受性が高く、大量に摂取してしまった場合には命の危険もあります。
ペットが誤って口にしないよう管理を徹底することはもちろんですが、誤って摂取してしまった場合には極力早く病院を受診し、治療してもらいましょう。
猫のエチレングリコール中毒の症状とは
腎障害、中枢神経抑制、低カルシウム血症が現れます。
エチレングリコールは消化管から急速に吸収され、体の中で代謝を受けます。
この時できる代謝産物によって、代謝性アシドーシス(体が酸性に傾く)や腎臓の細胞に障害が生じ、中枢神経抑制や急性腎不全、低カルシウム血症を起こし、以下のような症状を示します。
摂取後30分~12時間後
・嘔吐
・運動失調
・元気がない
・多飲多尿
・シュウ酸カルシウム結晶尿
12~24時間後
・呼吸が速い
・頻脈
・肺水腫
・発作
24~72時間後
・食欲不振
・嘔吐
・乏尿~無尿
・腹痛
・沈鬱
腎臓の細胞が障害されることによって、摂取後まもなくは多飲多尿(水をたくさん飲んで尿をたくさんする)がみられますが、時間の経過とともに障害は重度になり、摂取後24~72時間後には尿の生成が減少して乏尿~無尿となります。
猫では犬よりも感受性が高く、未希釈の不凍液の致死量は体重1kgあたり1.4ml程度です。
これより少ない摂取量であっても、重篤な腎不全を起こすと死亡してしまうことがあります。
猫のエチレングリコール中毒の原因とは
エチレングリコールを誤って摂取することによって起こります。
エチレングリコールは前述したように、自動車の不凍液や保冷剤に含まれます。
舐めると甘い味がするために、ペットの手が届く場所に保管しておくと、誤って口にしてしまい、大量摂取してしまうことがあります。
猫のエチレングリコール中毒の好発品種について
好発する品種はありません。
特にありません。
猫のエチレングリコール中毒の予防方法について
薬品類の管理を徹底しましょう。
エチレングリコールを含む薬品に接触できないように、ペットが届かない場所に保管しましょう。
保冷剤も同様です。
ビニールなどのパッケージに入っているものは、犬猫がかじるとすぐに穴が開いて中身が出てしまいます。
やはりペットが口にすることがないように片づけておく必要があります。
猫のエチレングリコール中毒の治療方法について
催吐処置を行います。
摂取後間もない場合(1時間以内)は、催吐処置を行い、体に吸収されるエチレングリコールの量をできるだけ減らします。
場合によっては胃洗浄を行うこともあります。
催吐処置には、吐き気を起こす薬剤を経口投与する、あるいは静脈に注射する方法があります。
処置後も吐き気が続いてしまうことがあるため、処置が終わったら吐き気止めを投与して状態を安定させます。
吸着剤を投与します。
摂取後1~3時間以内であれば、活性炭などの吸着剤を投与してエチレングリコールを吸着させ、体に吸収される量を減少できる可能性があります。
エタノールの投与も検討します。
摂取後18時間以内であれば、エタノールを静脈投与し、エチレングリコールが有害な中間体に代謝されるのを妨ぎます。
しかし、エタノールの投与自体にも副作用が起こる可能性があるため、慎重に行う必要があります。
輸液を積極的に行います。
静脈点滴を行い、体に起こる電解質異常を補正しつつ、腎臓の血流量を確保して腎障害が進行するのを抑制します。
必要に応じて、酸性に傾いた体を補正するお薬や、カルシウムの補給、腎臓の血流を確保するお薬も使用し、できるだけ腎臓の尿生成が低下しないように治療します。
上記の治療や輸液を行っても、乏尿・無尿になってしまう場合には、残念ながら予後は良くありません。