犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)とは
犬で多い内分泌疾患であり、ステロイド剤ににたホルモンが多量に分泌されます。
腎臓の上部にある豆粒ほどのサイズの内分泌器官である副腎が、副腎皮質ホルモンを異常に分泌することで様々な症状が出る病気です。副腎皮質機能亢進症という別名があります。副腎皮質ホルモンはステロイドとほぼ同様の効果をもつ強力なホルモンであり、多量に放出されることで様々な症状を引き起こします。犬でよくみられる内分泌疾患のひとつです。
犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の症状とは
食欲亢進、多飲多尿、皮膚症状などがみられます。
食欲の亢進、多飲、多尿がもっとも多くみられる症状です。特徴的な皮膚症状(皮膚が薄くなり皮下出血がおこる、左右対称の脱毛、皮膚の石灰沈着、色素沈着)がみられるようになります。筋肉の萎縮と体脂肪の増加が同時におき、腹部は太くなり下垂します。呼吸筋の萎縮などの症状により、浅く速い呼吸になります。
高コレステロール血症や高血糖、肝臓の腫大や肺や血管、筋肉の石灰化などの症状、免疫不全による感染症、糖尿病などが併発することがあり、全身性の病状の悪化がみられることがあります。
犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の原因とは
下垂体性、副腎性、医原性の3つの原因があります。
下垂体性クッシング症候群、副腎性クッシング症候群、医原性クッシング症候群に区別されます。
犬のクッシング症候群の9割は下垂体性クッシング症候群です。下垂体とは脳の最も下部に位置しており、副腎皮質にホルモンを分泌するように指示する臓器です。下垂体性クッシング症候群では下垂体に腫瘍ができ、副腎にホルモンを放出するように命令し続けることで副腎皮質がホルモンを放出し続け、様々な症状を引き起こします。
副腎性クッシング症候群では副腎自体に腫瘍ができ副腎皮質ホルモンを異常に産生、放出することが原因になります。
医原性クッシング症候群はストロイド剤の誤った使用方法により引き起こされます。
犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の好発品種について
全犬種で好発します。
5歳以上の犬で発生しやすい病気で、特別な好発犬種はありません
犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の予防方法について
早期発見、治療をおこないます。
下垂体性クッシング症候群と副腎性クッシング症候群には予防法はありません。早期発見、治療が特に重要になります。
医原性クッシング症候群はステロイド剤の不適切な使用が原因になるため、獣医師に指示された通りにステロイド剤を使用することで予防ができます。
犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の治療方法について
下垂体性クッシング症候群
下垂体性クッシング症候群の治療では、下垂体腫瘍が直径10㎜を超える場合、下垂体腫瘍の切除を目的とした外科療法、下垂体腫瘍の縮小を目的とした放射線療法が選択されます。
犬の下垂体腫瘍が直径10㎜を超えない場合が多いため、多くの症例で内科療法が選択されます。内科療法では、副腎皮質ホルモンの合成を抑制させる方法、副腎皮質を選択的に破壊、萎縮させる方法があります。
副腎性クッシング症候群
副腎性クッシング症候群の治療では手術による副腎の摘出が第一選択となります。腫瘍が副腎に限局している、もしくは広範囲の転移が見られない場合、予後は比較的良いとされています。転移が広範囲で手術が困難な場合、QOL改善を目的とした内科的治療法を選択します。