犬のアナフィラキシー・ショックとは
全身性に発症する重篤もしくは致死的な過敏症反応です。
アナフィラキシーショックとは、全身性として発症する、重篤もしくは致死的な過敏症反応のことを言います。
犬のアナフィラキシー・ショックの症状とは
胃腸障害および皮膚症状がよく見られます。
犬では全身もしくは消化管に影響を及ぼすことが知られており、顔面の腫脹や蕁麻疹を引き起こすこともあります。症状は、抗原への曝露から数分~数時間以内に発現します。臨床症状の発症時期と反応の重症度との間には相関関係があると考えられています。
犬では皮膚および胃腸障害が一般的であり、門脈圧亢進および肝静脈のうっ血が嘔吐や下痢症状を引き起こします。さらに重篤化すると、上気道閉塞あるいは急激な循環不全を引き起こして死に至ります。
皮膚症状には、紅斑、蕁麻疹、痒み、血管浮腫が含まれます。蕁麻疹は全身の皮膚にて認められますが、血管浮腫は頭部、四肢および陰部周囲に認められる傾向にあります。呼吸困難および循環不全は、抗原が非経口的に投与された際に認められやすいと言われています。不整脈、冠動脈血管収縮および全身血管抵抗の組み合わせにより、重篤な低血圧が引き起こされます。
抗原の経口摂取は胃腸障害と皮膚症状、吸入摂取は気管支収縮や鼻炎を引き起こすことが多いです。
犬のアナフィラキシー・ショックの原因とは
様々な抗原への曝露によって引き起こされます。
毒物、昆虫、食物、ワクチン、薬剤など、抗原への様々な曝露によって引き起こされる可能性があります。
暴露した抗原が肥満細胞や好塩基球に結合することでヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、セロトニン、血小板活性因子などが放出され、その結果として全身症状を引き起こします。
ワクチン投与後、抗菌薬の静脈内投与の数分後、昆虫による刺傷を目視した後に顔面腫脹、蕁麻疹、呼吸器症状(上気道閉塞を疑う異常呼吸音、旧規制努力呼吸)、血圧低下を認めた場合は、抗原曝露の可能性とアナフィラキシー反応を強く疑うことができます。
犬のアナフィラキシー・ショックの好発品種について
全犬種で好発します。
アナフィラキシーショックはどの犬種でも発症する可能性があります。
ワクチン投与後のアナフィラキシーはミニチュアダックスフンドで多く認められます。
犬のアナフィラキシー・ショックの予防方法について
抗原への曝露を避けましょう。
昆虫、蛇などが原因となるアナフィラキシーは、屋内飼育をする、散歩で草むらなどを避ける、などである程度予防できる可能性があります。
毒物、薬剤などは予防することが難しいため、早期発見・早期治療が重要です。
ワクチン投与後のアナフィラキシー
ワクチンアレルギーの予防プログラムとして、ワクチン接種1時間前に副腎皮質ホルモン剤、抗ヒスタミン剤の注射をおこなう方法があります。ワクチン接種後、1日1回副腎皮質ホルモン剤、8時間毎に抗ヒスタミン剤の経口投与を必要に応じて3~5日継続します。
ワクチン接種後のアレルギー反応として、ワクチン接種後1時間まで(とくに5分以内)は、死に至る可能性のある全身性アナフィラキシーが発生することがあり、接種後数日は皮膚症状や消化器症状が発現することがあります。ワクチンアレルギーと思われる症状が認められたらただちに獣医師に連絡しましょう。
犬のアナフィラキシー・ショックの治療方法について
投薬、輸液をおこないます。
アナフィラキシーの治療薬としましては、アドレナリン、抗ヒスタミン剤、グルココルチコイドなどが挙げられます。
アドレナリンは、アナフィラキシーの治療薬として考えられていますが、証明はされていないと言われています。
抗ヒスタミン剤は、皮膚症状および胃酸分泌を減らすために、アドレナリンの投与後に使用されます。
グルココルチコイドは、少なくとも4~6時間経過しないと有益な効果は認められないため注意が必要です。
低血圧が認められる場合は、積極的な輸液蘇生の実施が推奨されています。
呼吸困難の初期段階では、吸入経路を使用した気管支拡張薬が最も早く作用し始めます。βアドレナリン作動薬を吸入器を用いて投与します。