猫のマラセチア症とは
マラセチア菌の異常増殖によっておこる皮膚炎です。
マラセチアは、真菌(カビ)の一種です。
菌糸を生やす一般的なカビ(糸状菌)とは異なり、パンの発酵などに使用されるイースト菌などと同じ、酵母菌に属する菌です。
顕微鏡で見ると雪だるまのような形をしています。
マラセチアはもともと動物の皮膚には少数常在している菌ですが、皮膚の状態の変化や免疫バランスの乱れによって過剰に増殖し、皮膚に痒みや炎症などのトラブルを起こすことがあります。
皮脂を餌として増殖するため、主に脂漏体質の犬で多い皮膚炎ですが、猫でも見られることがあります。
特に耳の中は、分泌物で脂っぽくなりやすいため、外耳炎の原因としてもよく知られる病原菌です。
猫のマラセチア症の症状とは
痒み、赤み、臭いのある皮膚炎です。
マラセチアが増殖すると、以下のような症状がみられます。
・皮膚が痒い
・皮膚が赤い
・毛が脂っぽくなる
・脱毛
・黄色い大きなフケが付く
・皮膚が硬く厚くなる
・皮膚が黒くなる(色素沈着)
・発酵したような臭い
皮膚の表面の皮脂を餌として発酵を起こし、増殖するため、皮膚は脂っぽい分泌物が付着し、独特な体臭が強くなるのが特徴です。
皮脂の分泌の多い部分に発症することが多く、猫では主に耳(マラセチア性外耳炎)や爪の付け根、顔、尻尾の付け根などにみられます。
猫のマラセチア症の原因とは
免疫力の低下や皮膚の異常に伴ってマラセチアの異常増殖がおこります。
マラセチアは先にも述べましたが、動物の皮膚にはもともと少数存在する常在菌です。
健康で元気な猫であれば、マラセチアが皮膚で異常増殖することはあまりありません。
異常増殖の背景には、猫自身の免疫が低下するような何かしらの要因が隠れていることがほとんどです。
その代表的なものは以下の通りです。
・ウイルス感染(猫エイズ、猫白血病など)
・内分泌疾患(糖尿病、副腎皮質機能亢進症など)
・腫瘍疾患
・アトピー性皮膚炎
・アレルギー性皮膚炎
・ステロイドや免疫抑制剤の服用
体質も影響します。
犬では脂漏体質の品種でよく見られる病気です。
猫にも体質的に皮脂の分泌が多めの個体がおり、マラセチアの異常増殖も起こりやすくなってしまいます。
また、鼻が低い種類の猫では、顔の皮膚にある皺の部分の皮膚が蒸れやすく、また皮脂の分泌も多い部分であることから、マラセチアの増殖に適した環境になり、皮膚炎を起こすことがあります。
皮膚状態が悪化すると発症しやすくなります。
皮膚に炎症が起こった状態になると、皮膚のバリア機能が低下するためにマラセチアが増殖してしまうことがあります。
特に耳では耳ダニの寄生によって、マラセチアも増えることが多く、外耳炎が重度で長引いてしまう原因になることもあります。
アレルギーやアトピーによる皮膚炎が起こっている場合も、マラセチアの増殖が起こり症状が悪化してしまう場合があります。
猫のマラセチア症の好発品種について
以下の猫種で好発がみられます。
- コーニッシュレックス
- セルカークレックス
- デボンレックス
これらの品種は、体質的に皮脂の分泌が盛んなため、マラセチア性皮膚炎が多いとされています。
猫のマラセチア症の予防方法について
体質に合わせてシャンプーを選びましょう。
猫は犬に比べるとあまり頻繁にシャンプーしなくても良い動物ですが、体質によってはその頻度を少し増やしてあげる必要があります。
特に好発品種に挙げたレックス系の猫は、他の品種に比べるとやや皮脂の分泌が多い傾向があります。
こまめにブラッシングを行い、臭いやべたつきが気になるようになったら、シャンプーしてあげるようにしましょう。
また、皮脂の分泌が盛んな尾腺(腰から尻尾の付け根)付近がべたつきがちな猫や、顔に皺のある猫では、汚れや皮脂が固まった状態にならないように、毛を短くカットしたり、シートタイプやふき取りタイプのケア用品でこまめにケアしてあげましょう。
猫のマラセチア症の治療方法について
抗真菌剤の投与を行います。
マラセチアが異常に増えている場合には、抗真菌剤でその増殖を抑える必要があります。
局所的に症状がみられる場合や耳だけに症状がみられる場合には、塗り薬や点耳薬など、主に外用薬で治療を行います。
全身性に重度の症状がみられる場合には、内服薬での治療を検討しますが、肝障害などの副作用には注意が必要です。
また、猫で全身性にマラセチア性皮膚炎がある場合には、基礎疾患があることがほとんどですので、そちらのケアを優先して行います。
基礎疾患の治療が必要です。
基礎疾患の存在が疑われる場合には、それを治療しなければ根本的な治療はできません。
全身の検査を行い、基礎疾患をつきとめ、その治療を行うことによって皮膚状態も徐々に改善していくことがほとんどです。
抗真菌作用のあるシャンプーで洗浄します。
抗真菌薬が添加されたシャンプーで局所または全身を定期的に洗い、マラセチアの増殖を抑えます。
シャンプー後は水気をしっかりとタイルで拭いた後に、ドライヤーで乾かし、できるだけ水気が残らないようにしましょう。