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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の慢性肝炎とは

肝臓に炎症が慢性的に続いている状態を言います。

犬の慢性肝炎は、組織学的にリンパ球を中心とした炎症細胞の浸潤と幹細胞の壊死が存在し、症例によっては様々な程度の線維化や幹細胞の再生が見られる状態です。慢性肝炎の終末像である肝硬変は、び漫性に線維化が広がり、肝実質の構造が失われ、結節性病変で置換された状態です。

犬の慢性肝炎の症状とは

初期は臨床症状はほとんど見られません。

慢性肝炎の初期には臨床徴候をほとんど見られず、血液化学検査で肝酵素の上昇を認めるのみです。とくにALT(GPT)の上昇は病態の初期から見られる変化です。
その後病態が進行するに伴って、食欲低下、元気消失、黄疸、嘔吐、下痢、腹水、肝性脳症といった臨床徴候が認められるようになります。また、肝酵素の上昇に加えて、高ビリルビン血症、高アンモニア血症、血清総胆汁酸濃度の上昇、低アルブミン血症などが見られるようになります。さらに肝機能の低下が進行すると、血液凝固線溶検査における異常やフィブリノゲン濃度の低下が認められます。

腹部超音波検査は推奨される画像検査ですが、初期の慢性肝炎の多くでは肝実質に明らかな異常所見が見られません。しかしながら、肝辺縁の不整や実質の粗造などが病態の進行に伴って見られることが多いとされています。

確定診断には肝生検による病理組織学的検査が必須となります。慢性肝炎を診断するための生検法として針吸引生検は不充分であり、腹腔鏡下もしくは開腹手術によるサンプル採取が必要となります。

 

 

 

 

犬の慢性肝炎の原因とは

様々な原因があります。

慢性肝炎の原因としましては、感染性(犬アデノウイルス1型感染症)、代謝性、自己免疫性、薬物誘発性(フェノバルビタール、プレドニゾロンなど)などが挙げられますが、実際には原因が特定できない場合が多いとされています。

 

 

 

 

犬の慢性肝炎の好発品種について

以下の犬種で好発がみられます。

アメリカンコッカースパニエル、イングリッシュコッカースパニエル、ウエストハイランドホワイトテリア、ダルメシアン、ドーベルマン、べドリントンテリア、ラブラドールレトリバーなどが好発犬種として挙げられます。
雌での発症が多いとされています。
また、ベドリントンテリアでは、銅輸送を担う蛋白をコードする遺伝子の変異が知られています。

犬の慢性肝炎の予防方法について

原因によっては予防できる場合もあります。

主に早期発見、早期治療をおこないます。

犬アデノウィルス1型感染症は、ワクチンがあるためワクチン接種が発症の予防につながります。

フェノバルビタール、プレドニゾロンを長期的に投与する場合は、定期的な血液検査を受けて肝臓の状態を確認する必要があります。

犬の慢性肝炎の治療方法について

免疫抑制薬の投与、食事療法などをおこないます。

炎症を引き起こしている原因を除去するべきですが、犬の慢性肝炎の多くは特発性であるため、肝臓の炎症を抑えることが治療目的となります。慢性肝炎の治療においては、免疫抑制薬の投与と食事療法が治療の中心となります。
免疫抑制薬はプレドニゾロンが第一選択薬となります。臨床徴候の改善が見られるようであれば漸減していきます。プレドニゾロンの投薬開始直後は肝酵素の上昇が見られる場合が多いですが、漸減するにつれてステロイド誘発性の肝酵素上昇が軽減していくことがほとんどです。慢性肝炎ではプレドニゾロンを完全に中止することは難しく、一般状態や肝酵素に改善が認められていても投与を継続する場合があります。

初期の慢性肝炎では積極的な食事療法をおこなうことは少ないですが、血中の分子鎖アミノ酸(BCAA)値の低下が見られる症例ではBCAA製剤のサプリメントが推奨されています。進行した慢性肝炎では肝性脳症の抑制や軽減のための良質な低蛋白食が必要となります。そのため、肝疾患用の療法食が推奨されます。

その他の薬剤としましては、肝臓保護や抗酸化を目的としたウルソデオキシコール酸、S-アデノシルメチオニン(SAMe)、ビタミンEの投与がおこなわれます。

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