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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の蛋白漏出性腸症とは

小腸からのリンパ液の漏出が見られる疾患です。

蛋白漏出性腸症とは、小腸から多量の蛋白質を失うことによって低蛋白血症に陥る全身性疾患です。

犬の蛋白漏出性腸症の症状とは

下痢などの症状が見られます。

最もよく見られる症状は慢性的な小腸性下痢です。しかしながら、下痢を起こさない場合もあり、健康診断で発見される場合もあります。その他の症状としましては、元気消失、体重減少、嘔吐、脱水などが見られます。重度の低蛋白血症が認められる場合は、腹水による腹部膨満、胸水による呼吸困難、浮腫などが見られます。

蛋白漏出性腸症は、低アルブミンと低グロブリンを伴った低蛋白血症が見られるのが特徴で、貧血、リンパ球減少症、低コレステロール血症、低カルシウム血症が見られることもあります。肝疾患によってアルブミンの合成障害を起こす場合もありますので、鑑別が必要な場合があります。

腹部超音波検査において腹水が認められることが多い他、小腸粘膜のストリエーションサイン(縞状の高エコー像)が特徴的な検査所見ではありますが、必須の所見ではありません。

原因を究明するためには、内視鏡を用いて腸粘膜を観察し、腸の生検をおこなう必要があります。

犬の蛋白漏出性腸症の原因とは

様々な腸の疾患によって引き起こされます。

蛋白漏出性腸症は、リンパ球性ー形質細胞性腸炎、好酸球性腸炎、肉芽腫性腸炎、腸リンパ管拡張症などの慢性特発性腸疾患や胃腸管リンパ腫に伴って発症します。
特に腸リンパ管拡張症は、蛋白漏出性腸症の主要な基礎疾患と言えます。腸リンパ管拡張症は、犬に特有の疾患であり、猫では消化管の病理組織学的検査所見としては報告はありますが、単一の疾患としての報告は乏しいとされています。

犬の蛋白漏出性腸症の好発品種について

以下の犬種で好発がみられます。

蛋白漏出性腸症は、様々な年齢、犬種、性別で認められます。蛋白漏出性腸症の主要な基礎疾患である腸リンパ管拡張症の好発犬種はヨークシャーテリアとされています。

犬の蛋白漏出性腸症の予防方法について

基礎疾患の早期発見、早期治療をおこないます。

基礎疾患となる腸の疾患の早期発見、早期治療をおこなうことで、蛋白漏出性腸症の予防につながる可能性があります。

犬の蛋白漏出性腸症の治療方法について

原因となる基礎疾患の治療をおこないます。

リンパ管拡張症や腸炎が原因となっている場合は、食事療法、薬物療法をおこないます。

食事療法としましては、低脂肪療法食が使いやすく、効果が期待でき、長期的な管理に適しています。脂肪制限が重要な役割を果たすため、極端に脂肪を制限した、易消化性でバランスのとれたフードが推奨されます。一般的な低脂肪療法食に反応が乏しい場合、ホームメードの超低脂肪食を給与する必要があります。鶏ささみ、たらの白身、カッテージチーズ、馬肉などを蛋白源として使用し、その他にエネルギー源として白米、じゃがいもなどを用います。微量元素、ビタミン、ミネラルなどはサプリメントやその他の食材を添加して補うか、低脂肪療法食を混合して給与することで補います。

腸炎に対する薬物療法としましては、副腎皮質ホルモン剤の投与を検討します。また、重度の低アルブミン血症が認められる場合は、抗血小板剤を投与することもあります。

胃腸管リンパ腫が原因となっている場合は、化学療法をおこないます。多剤併用化学療法による治療がおこなわれると生存期間が延びる場合があります。また、嘔吐や下痢などが認められている場合がほとんどであるため、制吐薬、粘膜保護薬、止瀉薬の投与の他、輸液などの対症療法もおこなわれます。

予後

蛋白漏出性腸症の原因が腸リンパ管拡張症である場合は、食事療法に反応し、一般的に予後は良いと言えます。その他の腸炎やリンパ腫が原因となっている場合は、予後は様々ですが、治療反応性が悪い場合には死亡のリスクがあります。

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