犬の水腎症とは
尿の流出障害によって腎臓が拡張した状態です。
水腎症とは、尿の流出障害によって腎臓の腎盂が拡張した状態のことを言います。流出障害の部位によって様々な症状や経過を示します。
犬の水腎症の症状とは
無症状から尿毒症の症状まで様々です。
片側の尿管閉塞であれば、多くの場合は無症状で推移します。腎盂の拡張によって腎臓が著しく大きくなって初めて発見されることが多いとされています。
尿路の完全閉塞では、腎盂が拡張する前に尿毒症の症状が見られます。その際は、食欲不振、嘔吐、下痢、便秘、尿臭のする息、元気消失、体重減少、貧血、不整脈、痙攣などの症状が見られます。
細菌感染を伴えば腎盂腎炎の症状も起こります。その際は、発熱、食欲不振、嘔吐、多飲多尿などの症状が見られます。
X線造影検査や超音波検査で拡張した腎盂を検出します。ただし、腎障害が重度な場合は、静脈内に入れた造影剤が十分に濾過されず、X線検査では検出できないことがあります。
犬の水腎症の原因とは
尿の流出障害を起こす様々なものが原因となります。
尿路結石、腎虫、血液の固まり、外傷、腫瘍、神経障害、ヘルニア、先天的な奇形、外科手術などが原因となります。慢性的な尿の流出障害を起こす様々なものが原因となります。
犬の水腎症の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- ウェルシュコーギーペンブローク
- シーズー
- 柴犬
- パピヨン
- ミニチュアシュナウザー
- ヨークシャーテリア
- ラサアプソ
水腎症の原因となる尿路結石は、シーズー、ウェルシュコーギー、柴犬、ミニチュアシュナウザー、ヨークシャーテリア、ラサアプソ、パピヨンが好発犬種とされています。
犬の水腎症の予防方法について
原因となる疾患の早期発見、早期治療をおこないます。
尿路結石や腫瘍など、原因となる疾患の早期発見、早期治療が水腎症の発症の予防につながると言えます。
尿路結石の生成を防ぐためには、結晶ができにくい療法食を与える、おやつを与え過ぎない、など食餌面で気を付けましょう。また、結石の予防には飲水量の管理も重要と言われています。飲水量を増やすことで結石のもととなる物質の濃度を薄めることが結石の予防に有効とされています。ウェットフードを与える、ドライフードをふやかして与えるなどして、飲水量の確保をしましょう。
犬の水腎症の治療方法について
尿の流出障害を取り除きます。
水腎症は、尿の流出障害を取り除くことによって治療します。尿管結石の場合、尿管を切開し、結石を取り出す方法が採用されることが多いです。また、尿管結石があった箇所の尿管を切り取り、尿管を繋げる方法もあります。
犬の水腎症では、片側の尿管が完全に閉塞した後でも、閉塞を1週間以内に解除すれば糸球体濾過量は100%回復し、4週間後の解除でも30%は回復したという報告があります。ただし、尿の流出障害を完全に取り除くことは難しい場合もあります。腎盂が著しく拡張し、腎実質がほとんど認められなくなっている場合は、他の臓器への圧迫や細菌感染の温床を防ぐ目的で、水腎化した腎臓を摘出することもあります。ただし、摘出はもう片方の腎臓の機能が維持されていることを確認したうえでおこなう必要があります。
腎不全を発症している場合は、腎不全の治療をおこないます。脱水補正、電解質異常の是正、血圧および腎血流を維持しながら障害を防ぐ目的で、輸液療法をおこないます。過剰な輸液は、腎間質に浮腫を引き起こし腎臓の回復を遅らせる可能性があるため、注意が必要です。
腎盂腎炎を発症している場合は、その治療をおこないます。腎盂腎炎の主体は細菌感染であるため、血液あるいは尿から腎間質へ移行できる抗菌薬を投与します。理想的には尿培養検査や血液培養検査による薬剤感受性試験に基づく抗菌薬を投与すべきですが、薬剤感受性試験の結果が出るまでは経験的に有効性が高いと思われる抗菌薬で治療を開始します。