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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の包皮炎とは

亀頭表皮および包皮腔粘膜の炎症のことを言います。

亀頭包皮炎と呼ぶ場合もあります。犬の包皮腔内には、ブドウ球菌や連鎖球菌などの様々な常在菌が存在しています。包皮炎とは、これらの常在菌によって引き起こされる亀頭表皮および包皮腔粘膜の炎症のことです。犬では一般的な病気ですが、猫で発生することはまれです。

犬の包皮炎の症状とは

膿液が包皮口から漏出することが多いです。

亀頭表皮および包皮粘膜は発赤、肥厚し、亀頭表面に多数の小さな顆粒を形成することがあり、黄白色クリーム状の膿液を包皮口から排出しますが、これ以外の症状を示すことは少ないとされています。少量の膿性包皮分泌物が排出される軽度の包皮炎は、多くの性成熟に達した雄犬に存在し、自然に寛解するため、臨床的意義はほとんど無いと言えます。
しかしながら、全身症状が認められる場合には、より重度の併発症の存在を考慮する必要があります。患部に熱感、不快感、あるいは疼痛があるため、交尾不能症となる場合があります。また、包皮を頻繁に舐めることで飼い主が気付くことがあります。

飼い主の稟告や身体検査によって診断されます。包皮口の周辺および亀頭の先端に膿性分泌物の付着が無いか確認します。次に包皮を後方に伸展させ、包皮腔内に膿性分泌物の貯留が無いかを調べます。また、陰茎および包皮腔内に陰茎の損傷、包茎、包皮内異物、腫瘍などの発生が無いか確認します。膿性分泌物の細菌培養検査は、難治症例の薬剤感受性試験を判断するのに役立ちます。

犬の包皮炎の原因とは

細菌によって引き起こされます。

健康な状態では常在菌は悪影響を及ぼしませんが、不衛生な状態にしていたり、何らかの基礎疾患によって常在菌が増殖し、包皮へ細菌感染を引き起こします。陰茎の損傷、包茎、包皮内異物、腫瘍などの存在は、重度の包皮炎を引き起こす可能性があります。

 

 

犬の包皮炎の好発品種について

全犬種で好発します。

包皮炎は雄犬に見られる疾患で、とくに若い未去勢の雄犬に多く発症します。どの犬種でも見られます。

犬の包皮炎の予防方法について

定期的な包皮腔内の洗浄および基礎疾患の早期発見、早期治療をおこないます。

包皮炎を繰り返している場合、定期的な包皮腔内の洗浄をおこなうことで発症の予防につながる可能性があります。また、陰茎の損傷、包茎、包皮内異物、腫瘍などの基礎疾患が認められる場合、基礎疾患の早期発見、早期治療が包皮炎の予防につながる可能性があります。

犬の包皮炎の治療方法について

包皮腔内の洗浄、外用薬を塗布します。

症状が軽度であれば、治療の必要は無いと言えます。しかしながら、包皮口から多量の膿性分泌物が排出される、または包皮腔内に膿性分泌物が貯留している場合には、滅菌生理食塩液や抗菌性の諸毒液(クロルヘキシジン、ポピドンヨード、リバノール液など)を注入し、包皮腔内を外部からマッサージにより洗浄、消毒して、その液を排出することで、包皮腔内を洗浄します。これを複数回繰り返し、回収液が綺麗になった後、亀頭表面が炎症でただれている場合は、ゲンタマイシン硫酸塩などの外用抗菌薬軟膏を患部に塗布します。重度の包皮炎の場合、抗菌薬の内服をおこないます。

予後

軽度の包皮炎は、治療の実施の有無にかかわらず、再発が多いとされています。去勢手術は、生殖器からの分泌物を減少させる可能性はありますが、発生の予防にはならないとされています。

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