犬の乳腺炎とは
乳腺の炎症のことを言います。
犬の乳腺は通常左右5対存在しますが、この乳腺に炎症が起こっている状態のことを乳腺炎と言います。妊娠後半~授乳中または偽妊娠中の、いわゆる性ホルモンの影響を受け乳腺が腫大している時期に起こりやすいとされています。
犬の乳腺炎の症状とは
乳腺の肥大、疼痛などが見られます。
乳腺炎の臨床症状としましては、発熱、食欲不振、元気消失、1個もしくはそれ以上の乳腺の肥大、局所の腫脹、硬結、熱感、疼痛などが見られます。授乳中に乳腺炎が起こると細菌感染した乳汁によって、新生子の体重減少が起こることがあります。また、授乳されることで疼痛を生じる場合、育児を放棄してしまうこともあります。
乳腺に炎症や疼痛が生じているため、触られることを嫌がることがあります。そのため、取り扱いには注意が必要です。
分泌される乳汁は黄色~黄褐色、ときには血様となり、粘稠性が増し膿性となります。
軽度の場合は局所の乳房の炎症徴候しか示しませんが、重度になりますと食欲不振、元気消失などの全身的炎症徴候を示します。
乳腺炎の診断は、乳腺の触診検査、乳汁中の白血球数の増加および乳汁中の細菌培養でおこないます。とくに授乳されるのを嫌がる場合、新生子に体重が減少するなどの状況が見られる場合は、乳腺炎が疑われます。また、乳腺炎を起こしている乳汁のpHは異常値(とくにアルカリ性に傾く)を示す場合があるため、乳汁のpHチェックも異常乳の診断として有用と言えます。
犬の乳腺炎の原因とは
細菌感染が原因となります。
乳腺炎の原因は、細菌感染になります。大腸菌、ブド球菌、レンサ球菌などの常在菌が乳頭口から上行性に、または乳房の損傷によって、あるいは全身性感染から血行性に感染して乳房に炎症を起こします。とくに授乳中では、仔犬の歯や爪がつけた傷口から乳腺炎を起こしてしまう場合が多いとされています。
犬の乳腺炎の好発品種について
全犬種で好発します。
乳腺炎は、妊娠後半~授乳中または偽妊娠中の、性ホルモンの影響を受け乳腺が腫大している時期に起こりやすいとされています。そのため、避妊手術を受けていないメスで見られる疾患で、どのような犬種でも見られます。
犬の乳腺炎の予防方法について
早期発見、早期治療をおこないます。
乳腺炎は、授乳中に仔犬の歯や爪がつけた傷口から細菌感染を起こし発症してしまいます。そのため、予防するのは難しい部分もあるため、早期発見、早期治療をおこない、新生子に悪影響を及ぼさないようにします。
性ホルモンの受けておらず発達していない乳腺にはほとんど発症しないため、避妊手術を受けることが発症の予防につながると言えます。
犬の乳腺炎の治療方法について
抗菌薬の投与などをおこないます。
乳腺炎は、軽度のもので適切な抗菌薬や解熱鎮痛薬の投与、冷湿布による治療がおこなわれます。患部を冷却することで、血液の流入量を減らし、炎症を軽減することができます。しかしながら、膿瘍の形成または壊疽が起こっているような重度な乳腺炎では、外科的な切開による排膿が必要となり、ときには乳房の全摘出が必要となることがあります。
抗菌薬の投与は、基本的には臨床徴候が消失するまでおこなわれます。この時授乳中であるならば新生子に影響の無い抗菌薬が選択されたり、新生子を母犬から離し代用乳で育てる必要があります。授乳中ではない場合は、抗菌薬の選択には乳汁中の細菌による薬剤感受性試験をおこなうことが推奨されています。
予後
軽度な乳腺炎では、適切な抗菌薬の投与によって治療すれば予後は良好であると言えます。また、重度な乳腺炎であっても、外科的な摘出をおこなったものでは予後は良好ですが、それ以外は治療まで時間がかかることが多いとされています。