犬の扁平上皮癌とは
様々な部位での発生が報告されています。
扁平上皮癌は、様々な部位での発生が方向されています。皮膚(指端、眼瞼、鼻鏡など)、口腔、鼻腔、扁桃、肺などに多いとされています。
犬の扁平上皮癌の症状とは
皮膚の扁平上皮癌
皮膚の扁平上皮癌は、皮膚腫瘍の中で6%を占めているとされています。難治性創傷の原因が、扁平上皮癌であったというケースも多く認められます。
指端の扁平上皮癌は、黒色の大型犬などでの発生が多く、爪の異常などが認められる場合もあります。このような場合は、外科療法で予後良好であるとされています。
眼瞼の扁平上皮癌は、猫と同様、日光や色素欠損や慢性刺激が要因となり発生します。短頭種で一般的な眼角の扁平上皮癌は慢性角膜炎と局所の免疫抑制療法が関連しています。
鼻鏡の扁平上皮癌は、ラブラドールレトリーバーやゴールデンレトリーバーが好発犬種であり、一般的には10歳以上での発生が多いとされています。転移はまれであるとされていますが、局所浸潤性がとくに強く、肉眼的病変よりも顕微鏡レベルで腫瘍が広がっている場合があります。そのため、外科的切除をする際は、外科マージン確保に注意が必要であるとされています。
口腔の扁平上皮癌
口腔の扁平上皮癌は、口腔内悪性腫瘍としては悪性黒色腫に続いて2番目に多く、とくに歯肉や口唇での発生が認められますが、転移率は比較的低く(5~29%)、局所浸潤性が強く認められる腫瘍であるとされています。外科療法で完全切除した場合は予後良好であるとされています。舌での発生も認められ、吻側での発生に比べて尾側の発生では転移率も高く予後不良とされています。
扁桃、鼻腔、肺の扁平上皮癌
扁桃の扁平上皮癌は、転移率が90%と高く、もっとも予後が悪いとされています。多くの場合は、内側咽頭後リンパ節などの末梢のリンパ節や肺への転移が見られます。この場合、腫大したリンパ節による気管の圧迫などから呼吸障害が生じることがあり、予後は不良です。扁桃の扁平上皮癌の悪性度が高い理由は解明されていません。
鼻腔の扁平上皮癌はまれに認められます。鼻腺癌と同様に放射線照射が実施されますが、鼻腺癌と比べると予後は良くないとされています。
肺の扁平上皮癌では、一般的に外科的切除が実施されますが、生存中央期間は8か月と、肺腺癌の19か月に比べて著しく短く、予後は悪いとされています。
犬の扁平上皮癌の原因とは
要因がある扁平上皮癌も見られます。
眼瞼の扁平上皮癌は、猫と同様、日光や色素欠損や慢性刺激が要因となり発生します。短頭種で一般的な眼角の扁平上皮癌は慢性角膜炎と局所の免疫抑制療法が関連しています。
犬の扁平上皮癌の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- ゴールデンレトリバー
- ラブラドールレトリバー
鼻鏡の扁平上皮癌は、ラブラドールレトリーバーやゴールデンレトリーバーが好発犬種であるとされています。
犬の扁平上皮癌の予防方法について
早期発見、早期治療をおこないます。
要因のある扁平上皮癌もあるとは言え、予防は難しいと言えます。早期発見、早期治療が重要となります。
犬の扁平上皮癌の治療方法について
皮膚の扁平上皮癌
指端に発生する扁平上皮癌では、断指術をおこないます。第3、4指は体重の負荷が大きくかかる部位であり、第3、4指を含む複数指や肉球など広範切除が必要な場合は、断脚術も考慮する必要があります。単独の断指では歩様に大きな影響は及ぼさないとされています。
眼瞼の扁平上皮癌では、完全切除が可能であれば外科療法を実施すべきであると言えます。犬の場合は、眼瞼を1/3切除すると瞬きが不完全になりますが、完全切除により治癒が期待される場合は眼瞼再建術を用いるなどして完全切除を目指すべきです。局所療法として放射線療法、全身療法として抗がん剤の投与などが報告されています。
鼻鏡の扁平上皮癌は外科療法によって完全切除できれば良好な予後が得られますが、腫瘍の広がりに対する評価や術後の顔貌の変化が問題となります。一般的に、腫瘍を肉眼で確認できる部位から2cmの外科マージンを確保して切除することが推奨されています。
口腔の扁平上皮癌
歯肉や口唇に発生する口腔の扁平上皮癌は、強い局所浸潤性をもち転移はまれであり、外科療法によって完全切除することで良好な予後が得られます。完全切除のために、外科マージン2cm確保し摘出することが推奨されています。
発生部位によっては顎骨切除が必要となります。術後合併症として考慮することは、顔貌の変化、自力採食の可否、癒合不全や皮膚の欠損などが挙げられます。犬の場合、下顎3/4切除術を実施しても、自力採食が期待できるとされています。
扁桃、鼻腔の扁平上皮癌
扁桃の扁平上皮癌は、1年生存率10%と予後不良とされています。扁桃に限局し浸潤が無い状況であるならば両側扁桃切除を実施することで良好な予後を得られますが、90%以上の場合で診断時すでに内側咽頭後リンパ節などへの転移が成立しており、局所療法と全身療法が必要になり予後不良になります。それでも早期に死亡する原因は、頚部の内側咽頭後リンパ節の腫大による気道閉塞などの局所病変にあるため、外科療法や放射線療法で局所コントロールができれば、延命が期待できます。
鼻腔内の扁平上皮癌はまれに発生しますが、鼻腺癌と同様に放射線療法が第1選択となりえます。外科療法単独では無治療の成績と変わらないとされています。放射線療法をおこなうにあたって、皮膚、舌、口腔内にびらんや潰瘍を生じる急性障害が合併症として生じる可能性があります。また、晩発障害として骨壊死などの合併症が放射線照射後数か月で生じることも考えられます。