犬のリンパ腫とは
免役細胞の悪性腫瘍です。
免役細胞が癌化により発生する悪性腫瘍です。リンパ節や肝臓、脾臓などの免疫をつかさどる臓器に発生することが多いですが、転移しやすく、癌細胞の存在する部位により様々な症状がみられます。
リンパ腫は犬では比較的よくみられる腫瘍であり、6歳以上の中高齢で発生率が高くなります。治療に対する反応性は悪くはありませんが、寛解(検査上悪性腫瘍がなった状態)と再発を繰り返しながら反応性が下がっていき病状が悪化していきます。
犬のリンパ腫の症状とは
5つの型により異なる多種多様な症状がみられます。
多中心型、消化器型、皮膚型、胸腺型、節外型などの悪性腫瘍が発生する部位によって分類されており症状が異なります。全身性に転移を生じた場合、癌細胞に侵された臓器によって症状が出るため、一つの型のリンパ腫であっても様々な症状がみられる可能性があります。
多中心型リンパ腫は犬のリンパ腫においてもっとも発生率が高い種類です。全身のリンパ系臓器で同時多発的に悪性腫瘍が発生します。初期症状ではリンパ節の腫れがみられる以外無症状でありことも多く、進行とともに元気消失や食欲減衰、嘔吐、下痢などの非特異的な症状がみられます。
消化器型リンパ腫と皮膚型リンパ腫は多中心型リンパ腫についで多い種類です。前者では腸管に付随するリンパ節、後者では皮膚に存在する末梢リンパ節に腫瘍が発生します。消化器型リンパ節では嘔吐、下痢、しぶり(排泄しようとしても糞が出てこない状態)、赤色~黒色の血便などの消化器症状がみられ、皮膚型リンパ節ではサイズが拡大する・数が増える皮膚のしこりがみられます。
胸腺型リンパ腫と節外型リンパ腫はまれに発生するリンパ腫です。胸腺型リンパ腫では犬の上胸にあるリンパ組織である胸腺に悪性腫瘍が発生します。肺や心臓を収めている胸腔内に腫瘍が侵入し臓器を圧迫する、腫瘍の侵入により体液が漏れ、胸水として胸腔に溜まることにより、浅く速い呼吸や咳などの呼吸困難がみられます。
節外型リンパ腫は眼や神経組織、その他の組織などのリンパ節ではない部位から悪性腫瘍が発生するものです。
犬のリンパ腫の原因とは
遺伝的要因で免役細胞が腫瘍化することが原因のひとつです。
犬のリンパ腫では特定の犬種において遺伝的な要因が原因となり発生率が高くなっているとされています。
犬のリンパ腫の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- アメリカンコッカースパニエル
- イングリッシュコッカースパニエル
- エアデールテリア
- ゴールデンレトリバー
- シェットランドシープドッグ
- スコティッシュテリア
- セントバーナード
- バセットハウンド
- ブルドッグ
- ボクサー
- ロットワイラー
ボクサー、バセット・ハウンド、ロット・ワイラー、アメリカン・コッカー・スパニエル、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、セント・バーナード、スコッティシュ・テリア、エアデール・テリア、ブルドック、ゴールデン・レトリーバー、シェットランド・シープドックなどが好発犬種だと言われています。
犬のリンパ腫の予防方法について
早期発見・治療をおこないます。
リンパ腫は遺伝的な要因が原因だとされている腫瘍性疾患であり予防法はありません。早期発見・治療が非常に重要な疾患になります。
毎日の健康観察や定期的な動物病院の受診、健康診断の受診などによりリンパ腫の早期発見率が高くなります。
犬のリンパ腫の治療方法について
主に抗がん剤を用いた内科的治療をおこないます。
基本的に犬のリンパ腫では外科的な切除による根治療法は適応できません。抗がん剤への反応性が比較的良いため、多剤併用療法といういくつかの種類の抗がん剤を組み合わせて使用する治療法を行います。抗がん剤は単剤で使用する場合の副作用が大きく、かつリンパ腫がより早く耐性を付けてしまう為、多剤併用療法が用いられます。リンパ腫の種類や治療の開始時期により異なるため一概には言えませんが、数年の予後が期待できます。