犬の肝硬変(肝線維症)とは
慢性肝疾患の終末像です。
肝硬変は慢性肝疾患の終末像であり、病理組織学的には線維化と偽小葉を呈し、肉眼的には肝臓の全葉における萎縮と大小さまざまな再生性結節の出現を特徴とします。形態学的に肝硬変は、結節が同一の大きさで3mm以下からなる微小結節性肝硬変と、異なる大きさの3mm以上からなる大型結節性肝硬変に分けられます。
犬の肝硬変(肝線維症)の症状とは
さまざまな症状が見られます。
肝硬変の臨床症状としましては、活動性低下、食欲不振、黄疸、腹水、神経症状、止血異常、などが挙げられます。
肝硬変は、肝機能不全と門脈圧亢進症の2つの病態が複雑に関与することで、さまざまな臨床徴候を呈します。肝機能不全を伴う犬では、肝細胞数の減少と肝細胞の機能低下により、蛋白合成能の低下による黄疸や肝性脳症が認められます。また、肝臓の線維化、小葉構造の異常により、実質内の門脈血流抵抗の増加を引き起こします。その結果、重度の低アルブミン血症を伴わない犬においても腹水が貯留するようになります。さらに、代償性変化として後天性門脈体循環測副路が出現することにより、肝性脳症を助長します。
犬の肝硬変(肝線維症)の原因とは
慢性肝炎に続発します。
肝硬変は慢性肝疾患の終末像であるとされています。慢性肝疾患を早期に診断し治療することが重要です。
血液化学検査では、軽度~中等度の肝酵素値の上昇が肝硬変の犬のほとんどで認められます。炎症や壊死のない肝硬変では肝酵素値の異常は認められません。進行した肝硬変の犬では、中等度から重度の低アルブミン血症を伴い、止血凝固線溶系検査の異常も認められます。肝硬変の高ビリルビン血症は、一般的に軽度~中等度であるとされています。血清アンモニア濃度は、後天性門脈体循環側副路が存在している犬でしばしば高値を示します。食後の血清総胆汁酸濃度の上昇は、後天性門脈体循環側副路の存在を疑う重要な所見の1つです。
肝硬変の確定診断には、肝生検による病理組織学的検査が必須ですが、止血異常や腹水を呈する犬の肝生検は注意が必要です。
犬の肝硬変(肝線維症)の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- アメリカンコッカースパニエル
- イングリッシュコッカースパニエル
- ダルメシアン
- ドーベルマン
- ベドリントンテリア
- ラブラドールレトリバー
慢性肝炎の好発犬種は、ベドリントンテリア、ドーベルマン、ラブラドールレトリバー、ダルメシアン、アメリカンコッカースパニエル、イングリッシュコッカースパニエルなどが挙げられます。これらの犬種は肝硬変にも注意が必要です。
犬の肝硬変(肝線維症)の予防方法について
慢性肝疾患の早期発見、早期治療をおこないます。
肝硬変は慢性肝疾患の終末像であるとされています。慢性肝疾患を早期発見、早期治療をおこなうことが肝硬変の予防につながる可能性があります。
犬の肝硬変(肝線維症)の治療方法について
内科的療法がおこなわれます。
犬の肝硬変は肝臓の持続する炎症と壊死に起因します。肝臓に慢性炎症が存在している犬では、コルチコステロイドや免疫抑制薬による治療が適応になります。
臨床徴候の認められる肝硬変の治療は、一般的に対症療法になります。
肝硬変の犬の食事には肝臓病用療法食が適しています。とくに、高アンモニア血症や肝性脳症が認められる犬では、蛋白制限食である肝臓病用療法食が最適です。
腹水に対しては利尿薬が治療の基本となります。ただし、利尿薬の過剰投与は脱水や腎障害、肝性脳症を引き起こすことがあるため注意が必要です。
肝性脳症に対しては、食事療法と非吸収性合成二糖類の投与が基本となります。高アンモニア血症のみで明らかな肝性脳症の症状が認められない犬に対しても治療適応となります。アンモニア酸性菌を抑制する目的に抗菌薬を併用することもあります。
予後
肝硬変の犬では、慢性肝炎の犬に比べて予後が悪いとされています。したがって、慢性肝疾患を早期に診断し治療することが重要です。代償性肝硬変(臨床徴候が無い肝硬変)では、まだ慢性肝炎からの移行期である可能性が高いため、肝生検を実施し、コルチコステロイドや免疫抑制薬による治療を試みるべきです。また、小葉細分型肝炎、肝皮膚症候群の予後は、一般的な肝硬変と比較して悪いとされています。