犬の狂犬病とは
全ての哺乳類に感染し、死に至らしめる公衆衛生上もっとも重要な感染症のひとつです。
狂犬病ウイルスの感染による致死性の人獣共通感染症です。犬では狂犬病予防法によって年一回のワクチン接種が義務付けられています。
狂犬病ウイルスに感染した犬は神経症状を呈して確実に死亡する上、この疾患は我々人間をはじめとした全ての哺乳類に感染します。
公共衛生上、最重要のウイルスの内の一つであり、日本の周辺国では持続した発生が認められています。
狂犬病は現在日本国内での発生こそありません。しかし、狂犬病は決して過去の感染症ではありません。検疫による海外からの侵入防止は常に砂の上の城であり、いつ侵入を許してもおかしくない状況にあります。
犬の狂犬病の症状とは
凶暴化、水を恐れる、神経過敏などの症状がみられます。
狂犬病ウイルスの主な感染経路は、感染動物からの咬傷によるものです。唾液中に含まれるウイルスは咬傷部位の末梢神経から脊髄を介し、脳に侵入します。ウイルスが末梢神経~脳神経まで感染を広げるまでの期間に2週間~2か月ほど有し、潜伏期間として症状が現れません。
狂犬病ウイルスが脳まで達すると狂騒期と呼ばれる状態になります。凶暴性を増す、水を恐れる、光や音などの外部刺激に敏感になるなどの神経症状がみられます。感染がこの段階まで進むとウイルスは神経を通じ唾液腺に感染します。凶暴性を増した犬は咬傷を通じて狂犬病ウイルスを他の宿主へと感染させます。
狂犬病の最終段階は麻痺期です。ウイルスに高度に感染した脳は機能を次第に失っていき、身体の麻痺というかたちで生命活動の終わりが始まります。歩行困難、嚥下困難による栄養失調、呼吸困難による窒息を経て、昏睡状態に至り死亡します。
犬の狂犬病の原因とは
狂犬病ウイルスが原因になります。
狂犬病ウイルスの感染が原因になる致死性の疾患です。日本における狂犬病は1950年代には人や犬における発生が多発しており、狂犬病予防法の制定によりワクチン接種が義務付けられました。その結果、狂犬病の犬においての日本国内での発生は収まり、現在世界において6地域しかない狂犬病清浄国・地域として認められています。
近年、狂犬病清浄国であった台湾において狂犬病の侵入が確認されました。中国をはじめ日本周辺のアジア諸国では狂犬病がいぜん発生している状況です。また、日本においても人間における狂犬病の輸入感染例(海外で感染し、国内で発症)が確認されたばかりです。
もはや狂犬病は過去の感染症ではありません。年に一度のワクチン接種を徹底することで国内侵入を許したとしても、拡大を防ぐことができます。人間社会の友である犬たちの社会を、人間社会そのものを守るためにワクチン接種義務を果たす必要があります。
犬の狂犬病の好発品種について
全犬種で好発します。
狂犬病ウイルスは全ての哺乳類に感染する病原体であり、好発犬種はありません。
犬の狂犬病の予防方法について
ワクチンの正しい接種により予防できます。
年一回のワクチン接種により予防することができます。仮にワクチン接種を受けられない状態(老衰やアレルギー体質等)にある犬でも、社会における高いワクチン率を維持することで狂犬病の感染から予防する効果があります。狂犬病のワクチン接種は自分の飼っている犬を狂犬病から予防するだけではなく、我々人間の狂犬病への感染、老犬などのワクチンを打つことのできない犬たちの感染を防ぐことができます。年一回のワクチン接種義務を果たすことで救われる命があります。
犬の狂犬病の治療方法について
治療方法はありません。
一度感染してしまった犬においては治療を選択できず、法により殺処分になる可能性が極めて高いと言えます。年一回のワクチン接種により予防することができる疾患です。犬を飼う責任の一つとして、犬に対する愛情の一つとして、確実なワクチン接種をお願いします。