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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の慢性腸炎とは

慢性的に消化器症状が続きます。

犬が慢性の消化器徴候を起こし、対症療法の反応しない、原因不明の慢性胃腸炎は、慢性腸症と呼ばれています。慢性腸症は、治療の反応により食事反応性腸症、抗菌薬反応性腸症、免疫抑制薬反応性腸症(炎症性腸疾患)などに分類されます。

犬の慢性腸炎の症状とは

慢性の消化器症状が見られます。

慢性腸症の原因にもよりますが、慢性の下痢や嘔吐、食欲不振、体重低下、低アルブミン血症などが見られます。
腹痛、腹鳴、成長不良などが認められることもあります。

犬の慢性腸炎の原因とは

食事反応性腸症

食事反応性腸症は、犬で一般的に見られる疾患であり、犬の慢性腸症の約60%が食事反応性腸症であったという報告があります。
食事反応性腸症は症候群であり、病態はさまざまであると考えられています。食物アレルギー、食物不耐性、腸内細菌叢や腸内環境の乱れなどが関連していると思われますが、詳細は明らかになっていません。
診断は除外診断と食事療法の反応性によっておこないます。

抗菌薬反応性腸症

抗菌薬反応性腸症は、抗菌薬療法に反応する慢性的な消化器症状と定義されています。そのため、特定の疾患をさし示すものではなく、複数の病因、病態が関与していることが考えられているものの、詳細は明らかにされていません。抗菌薬に反応するという性質上、その病態に腸内細菌数の増加または構成比の変動が関連していると考えられています。
抗菌薬反応性腸症は特発性と二次性に分類されます。腸内細菌叢の制御には胃酸や膵液、腸の蠕動、回盲弁など多くのメカニズムが存在しており、それらに異常を来すような胃酸分泌抑制、腸蠕動の低下、膵外分泌不全などが抗菌薬反応性腸症を引き起こすと考えられています。特発性抗菌薬反応性腸症の病態はほとんど明らかにされていません。

炎症性腸疾患

炎症性腸疾患は、一般的な検査で原因特定出来ない消化器疾患と定義されています。
腸粘膜における持続的な炎症、腸絨毛の障害によって消化器症状が見られます。持続的な炎症は、腸粘膜の過剰な免疫応答、腸粘膜バリアの異常、腸内細菌叢の異常などの複数の因子がかかわっていると考えられています。
炎症性腸疾患は、炎症が起こっている細胞の種類や部位によって、リンパ球プラズマ細胞性腸炎、好酸球性胃腸炎、肉芽腫性腸炎、組織球性潰瘍性腸炎などに分類されます。

犬の慢性腸炎の好発品種について

以下の犬種で好発がみられます。

炎症性腸疾患の中でも、リンパ球プラズマ細胞性腸炎では、ジャーマンシェパード、シャーペイなどの犬種で発生率が高いとされ、免疫増殖性腸炎ではバセンジー、組織球性潰瘍性結腸炎ではボクサー、フレンチ・ブルドックが好発犬種です。

犬の慢性腸炎の予防方法について

早期発見、早期治療をおこないます。

慢性腸症は、予防が難しい疾患であると言えます。そのため、早期発見、早期治療が重要となります。下痢が続いているが様子を見ている、下痢で一度受診したが治らない、などのような場合はなるべく早くかかりつけの動物病院にご相談いただくことをおすすめいたします。

犬の慢性腸炎の治療方法について

食事反応性腸症

食事反応性腸症の診断および治療には、市販の低アレルゲン療法食を用います。どの低アレルゲン療法食が適しているかは個々の症例によって異なるため、新奇蛋白療法食、加水分解療法食、アミノ酸療法食などを最低2種類試してみることがすすめられています。
低アレルゲン療法食を試す場合には、その療法食のみを給与する必要があります。その症例に適した療法食をのみを与えると、ほとんどの食事反応性腸症の犬は食事を変更してから1~2週間で消化器症状がほぼ完全に消失します。

抗菌薬反応性腸症

抗菌薬反応性腸症の治療は、抗菌薬療法をおこないますが、開始後は比較的早期に(長くても2週間、多くは数日以内に)症状が改善することが多く、改善が不充分な場合には抗菌薬を変更するか、基礎疾患についての再スクリーニングや食事療法、免疫抑制療法について検討すべきです。
抗菌薬療法に反応した場合には、内服を4~6週間程度継続して休薬しますが、休薬後に再発する症例も多く、その場合には長期的な投薬が必要となります。
補助療法として、可溶性食物繊維やオリゴ糖のようなプレバイオティクスが再発予防に有効とする報告もあり、再発を繰り返す場合におこなわれます。

炎症性腸疾患

食事反応性腸症、抗菌薬反応性腸症が除外され、腸粘膜に炎症が認められた場合、免疫抑制剤の投与をおこないます。免疫抑制剤の第1選択はステロイド剤となりますが、ステロイド剤の効果が不充分である場合やステロイド剤の量を減量したい場合は、他の免疫抑制剤を併用することがあります。
腸粘膜にリンパ管拡張所見が認められる場合は低脂肪の療法食を投薬治療と並行して用いることもあります。低脂肪療法食で効果が不充分である場合は、ササミ、ジャガイモ、白米などを用いた超低脂肪の手作りごはんの使用を検討します。
下痢の改善のため、免疫抑制剤に併用して抗菌薬を投与することがあります。大腸性下痢が主体となる場合、可溶性食物繊維の投与を検討します。

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