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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の椎間板ヘルニアとは

犬において最も頻繁に遭遇する脊髄疾患です。

椎間板ヘルニアは、犬において最も頻繁に遭遇する脊髄疾患であり、HansenⅠ型とHansenⅡ型に大別されます。また、73%が胸腰部の椎間板ヘルニアであり、27%が頸部の椎間板ヘルニアであるとされています。

犬の椎間板ヘルニアの症状とは

胸腰部椎間板ヘルニア

胸腰部椎間板ヘルニアの臨床症状としましては、震え、活動性の低下、背弯姿勢といった背部痛に伴う症状、両後肢の歩行異常、犬座姿勢、深部痛覚の消失などが挙げられます。

胸腰部椎間板ヘルニアの重症度は5段階に大別されます。
背部痛のみを呈するグレードⅠ、両後肢での起立歩行可能な不全麻痺を呈するグレードⅡ、両後肢での起立歩行不能な不全麻痺を呈するグレードⅢ、両後肢の完全麻痺を呈するグレードⅣ、両後肢の深部痛覚の消失を呈するグレードⅤの5段階になります。

頸部椎間板ヘルニア

頸部椎間板ヘルニアの臨床症状としましては、知覚過敏、筋緊張、頸部下垂といった頸部痛に伴う症状、四肢の歩行異常、横臥位姿勢などが挙げられます。

頸部椎間板ヘルニアの重症度は3段階に大別されます。
頸部痛のみを呈するグレードⅠ、起立可能な不全麻痺を呈するグレードⅡ、起立歩行不能で横臥位状態を呈するグレードⅢの3段階になります。

犬の椎間板ヘルニアの原因とは

HansenⅠ型椎間板ヘルニア

HansenⅠ型は軟骨様変性に伴う椎間板の弾力性の低下によって変性した髄核が脱出する急性発症を主とする疾患です。

HansenⅡ型椎間板ヘルニア

HansenⅡ型は線維質変性に伴う非特異的な加齢性変化によって線維輪が背側へ突出する慢性進行性を主とする疾患です。

 

 

犬の椎間板ヘルニアの好発品種について

以下の犬種で好発がみられます。

ミニチュアダックスフンド、フレンチブルドッグ、ウェルシュコーギーペンブローク、ビーグル、シーズー、ペキニーズなどは軟骨異栄養性犬種と呼ばれ、HansenⅠ型の椎間板ヘルニアの好発犬種となります。

HansenⅡ型の椎間板ヘルニアは様々な犬種で発症します。

犬の椎間板ヘルニアの予防方法について

ある程度の予防が期待出来ます。

背骨に負担のかかる抱き方をしない、高所からの飛び降りやジャンプなど背骨に負担のかかる動きをさせない、激しい運動を控える、肥満にさせない、などの方法である程度の予防が期待出来ます。しかしながら、遺伝的な素因もあるため予防が難しい場合もあります。

犬の椎間板ヘルニアの治療方法について

胸腰部椎間板ヘルニア

胸腰部椎間板ヘルニアに対する内科的治療は、一般的にはグレードⅠ、グレードⅡで選択されます。例外として、外科的治療が推奨されるグレードⅢ~Ⅴにもかかわらず飼い主様の意向によって外科的治療が選択されない場合もあります。グレードⅠやⅡの動物では内科的治療が奏効することが多いとされていますが、発症からの経過が長くなればなるだけ、脱出した椎間板は脊髄硬膜と癒着を起こし、外科的治療が困難となります。

内科的治療としましては、ケージレスト、薬物治療が挙げられます。犬は自発的に運動制限ができないため、狭いケージやサークルに閉じ込めて安静にさせる必要があります。破綻した椎間板線維輪の修復、椎間板物質のさらなる脱出の予防、脊髄や靭帯の炎症が治まるのを待つことが目的です。薬物治療には、副腎皮質ステロイド薬、NSAIDs、オピオイド系鎮痛薬などが使用されます。

外科的治療では、片側椎弓切除術が選択されることが多いです。

頸部椎間板ヘルニア

頸部椎間板ヘルニアでは、グレードⅠの場合は内科的治療が選択されます。しかし、再発性の頸部痛を示す場合や内科的治療への反応が乏しい場合はグレードⅠであっても外科的治療が選択されます。一方で、グレードⅡおよびⅢの場合は外科的治療が第1選択となります。

内科的治療としましては、胸腰部椎間板ヘルニアに対する内科的治療と同じくケージレスト、薬物治療がおこなわれます。

外科的治療では、大多数の場合はベントラルスロット術(腹側椎間板除去術)が選択されます。片側椎弓切除術や背側椎弓切除術が選択される場合もあります。

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