犬の横隔膜ヘルニアとは
胸腔内へ腹腔臓器が侵入することを言います。
ヘルニアとは、体内の裂孔や間隙を通じて臓器の一部またはすべてが本来の位置から他の場所に飛び出した状態を言います。腹腔や腹膜に関連するヘルニアには、横隔膜ヘルニア、食道裂孔ヘルニア、臍ヘルニア、鼠経ヘルニア、腹壁ヘルニア、会陰ヘルニアなどがあります。
横隔膜は、胸腔と腹腔の間にある筋肉性の膜で、胸腔に向かってドーム状に突出しています。横隔膜は呼吸をおこなううで重要な役割を果たしています。胸腔への突出部分が腹側に引かれると吸気が起こり、弛緩すると呼気が起こります。そのため、この膜が破裂して弛緩したままになると空気を吸引することが困難となります。
横隔膜ヘルニアとは、先天的または後天的な原因で横隔膜の一部が欠損したり破裂し、陰圧となった胸腔内へ肝臓、胃、腸管などの腹腔臓器が侵入することを言います。
犬の横隔膜ヘルニアの症状とは
呼吸障害が見られます。
横隔膜ヘルニアの症状の程度は、胸腔内に侵入した臓器の量と相関関係にあり、侵入した臓器の量が多いほど肺は圧迫され、呼吸障害が悪化します。
心膜横隔膜ヘルニアでは、心臓の拡張障害によって循環器障害が見られます。これによって、呼吸が速くなったり、チアノーゼや開口呼吸などの症状が見られます。猫の場合は呼吸困難に比較的よく耐えるとされていますが、犬の場合は苦しんで暴れることが多いとされています。
明らかな臨床症状を認めないこともあります。
犬の横隔膜ヘルニアの原因とは
横隔膜ヘルニアには先天性と後天性のものがあります。
横隔膜ヘルニアが起こるためには、臓器が飛び出すための裂孔や間隙が形成される必要があります。
先天性の横隔膜ヘルニアには、横隔膜に単純な欠損が見られる場合と、心嚢と横隔膜の欠損孔が開通して心嚢内に腹腔臓器が侵入する心膜横隔膜ヘルニアがあります。
後天性の横隔膜ヘルニアは、通常は交通事故や落下事故などの外傷によって生じます。肋骨付着部の裂傷が多く認められますが、中央領域まで達している場合もあります。後天性の横隔膜ヘルニアの重症度は様々で、腹腔臓器が胸膜腔内へ大きく脱出する場合もあります。
犬の横隔膜ヘルニアの好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- アメリカンコッカースパニエル
- イングリッシュコッカースパニエル
- チワワ
- トイプードル
- ペキニーズ
- ボストンテリア
- ミニチュアダックスフント
- ヨークシャーテリア
先天性の横隔膜ヘルニアは、アメリカンコッカースペニエル、リングリッシュコッカースパニエル、チワワ、トイプードル、ペキニーズ、ボストンテリア、ミニチュアダックスフンド、ヨークシャーテリアなどの犬種で見られます。
後天性の横隔膜ヘルニアは、交通事故などの外傷が原因となりますので、どの犬種でも見られます。
犬の横隔膜ヘルニアの予防方法について
後天性の横隔膜ヘルニアは予防できます。
先天性の横隔膜ヘルニアの予防は難しいため、早期発見、早期治療が重要と言えます。
後天性の横隔膜ヘルニアは、交通事故や落下事故などの外傷が原因となりますので、交通事故に遭わないようにお散歩中は首輪やハーネスが抜けないようにする、高いところに上らせないようにする、など注意しましょう。
犬の横隔膜ヘルニアの治療方法について
外科的な治療をおこないます。
横隔膜ヘルニアの治療は、外科的な治療が必要になります。
胸腔内へ侵入してしまった腹腔臓器の腹腔内に戻し、横隔膜の破裂部位を整復することになります。
横隔膜ヘルニアの状態で長期間外科手術をおこなわなかった場合、横隔膜ヘルニアの外科手術をおこなうと手術後の死亡率が高いとされています。これは、腹腔臓器が胸腔内の臓器や胸壁に癒着してしまうためとされています。腹腔臓器の損傷が無ければ、予後は比較的良好と言えます。