犬のブドウ中毒とは
ブドウによる中毒です。
2000年代初頭から、ブドウによる犬の中毒が報告されるようになりました。原因となるブドウの種類に特定のものはなく、生のブドウ、乾燥させたブドウ、調理されたブドウでも発生することがわかっています。ブドウの皮だけを摂取して中毒を発症する場合もあります。
ブドウ摂取によって猫やフェレットの死亡例もあります。
犬のブドウ中毒の症状とは
急性腎不全が見られます。
ブドウ中毒は、急性腎不全が見られます。
摂取から24時間以内の嘔吐がもっとも特徴的な症状とされています。嘔吐に続いて、下痢、食欲不振、元気消失、腹部痛が見られることもあります。尿量の減少、運動失調、虚脱が見られることもあります。これらの症状が見られないからといって、必ずしも急性腎不全を発症しないというわけではないため、注意が必要です。
血液検査では、BUN、クレアチニン、カルシウム、リン、カルシウムリン積、カリウムの上昇、および血中代謝性アシドーシスによるCO2濃度の低下が見られます。その他に、肝酵素の上昇や膵炎の併発が認められる場合もあります。
ブドウ中毒の犬の病理組織学摘検査では、近位尿細管の変性・壊死が見られます。尿細管上皮細胞内に茶褐色の色素沈着が認められることがあり、これはブドウ由来の成分や代謝物ではないかと考えられています。
犬のブドウ中毒の原因とは
ブドウの何が原因となっているか詳細は不明です。
ブドウ中毒の原因には、タンニンの不寛容、マイコトキシン・殺虫剤・重金属によるブドウの汚染、酵素の違いによる特異体質、ビタミンDの過剰摂取などが仮設として挙げられてきましたが、近年では特異体質が原因ではないかと考えられています。
1㎏のレーズンを摂取しても臨床症状を呈さない犬がいる一方で、4~5粒のブドウを摂取しただけでブドウ中毒に陥ってしまう犬もいます。このため、どのような摂取量であったとしても中毒を発症する可能性があります。摂取した量が増加すると毒性も悪化するという説や、生のブドウよりドライフルーツの方が有害事象を起こすという説もあります。
犬のブドウ中毒の好発品種について
全犬種で好発します。
ブドウ中毒の発症には、年齢、性別、犬種差は無いとされています。
犬のブドウ中毒の予防方法について
ブドウを食べさせないようにしましょう。
犬は好奇心が強く、中毒物質なのかを判断できないため、飼育環境中に犬が届く場所にブドウを置かないようにしましょう。
犬のブドウ中毒の治療方法について
中毒物質の除去、点滴などをおこないます。
ブドウ摂取から間もないのであれば、催吐剤や活性炭を反復投与して、原因物質を早期に体内から除去することが推奨されています。正常犬の場合、4~6時間で胃から食物が排泄されるので、迅速な催吐処置は中毒の重症度を低下させるのに効果的です。しかしながら、ブドウ摂取後24時間にわたって胃内にブドウが停滞していたとの報告もあるので、摂取から24時間以内であれば催吐処置をおこなう価値はあると言えます。
皮下点滴で様子を見る場合もありますが、静脈内輸液を48~72時間おこない、最低でも72時間の腎機能のモニタリングすることが推奨されています。乏尿や無尿に陥った場合は、利尿剤を使用して尿産生を促すこともあります。血液透析や腹膜透析も有効です。
予後
尿産生の低下や運動失調、虚脱は負の予後因子となります。血液検査でカルシウムが高いこと、カルシウムリン積が高いことも予後不良の指標となります。
以前はブドウ中毒を発症した犬の約半数が死亡したという報告がありましたが、近年ではブドウ摂取犬のうち死亡率は激減したという報告があります。これは、ブドウ中毒の危険性が広く知れ渡るようになり、ブドウ摂取犬が早期に来院して治療を受けるようになったからではないかと考えられています。