犬の皮膚血管炎とは
真皮または皮下組織の血管壁に異常を認める疾患です。
皮膚血管炎とは、真皮または皮下組織の血管壁に異常を認める疾患の総称です。血管異常を起こす疾患の中でも、病理組織学的に血管壁に炎症性変化を示す疾患を血管炎と呼びます。
犬の皮膚血管炎の症状とは
様々な皮膚症状が見られます。
皮膚血管炎では、紫斑、血疱、結痂、クレーター状の潰瘍、先端紫藍症などが代表的な臨床症状として挙げられます。紫紅色の皮疹は硝子圧診により消退しません。症例によっては、蕁麻疹様の浮腫や局面などが認められることもあります。
病変部分は主に四肢端、耳介、尾端、陰嚢、口腔粘膜とされていますが、ときに体幹に認められることもあります。耳介の病変は主に耳介先端に認められます。肉球や爪に病変が認められることもあります。
皮膚血管炎に罹患した症例の多くでは皮膚に限局して症状が認められますが、グレーハウンドなどでは皮膚および腎臓の両方に血管炎が認められることがあります。
紫斑が認められる場合には血液凝固障害や全身性エリテマトーデス、寒冷凝集素症、凍傷、DICなどが類症鑑別となります。潰瘍が認められる場合には自己免疫性表皮下水疱症や熱傷、深在性膿皮症などが鑑別となります。蕁麻疹様の病変が認められる場合には、様々な抗原に対する過敏症が類症鑑別となります。確定診断には皮膚生検が必要ですが、血管炎の病理組織学的所見を呈する場所を生検によって必ずしも採取できるとは限らないため注意が必要です。
動脈炎と静脈炎
血管炎の中でも動脈の血管壁に炎症が起こった場合を動脈炎、静脈の血管壁に炎症が起こった場合を静脈炎と呼びます。
動脈炎では、動脈内での血栓形成や血管の拡張を起こし、まれに血管の破裂の破裂を生じるなど様々な症状を示します。大動脈では非特異性大動脈炎、それよりも細い動脈では閉塞性血栓血管炎、さらに細い小動脈から細動脈ではアレルギー性肉芽腫性血管炎や全身性エリテマトーデスによる血管炎、そして、細動脈から毛細血管ではウイルス感染症による血管炎が起こります。
静脈炎では、静脈壁における炎症性変化と血栓の形成を特徴とします。その結果、抹消部位に浮腫や腫脹、疼痛、硬結を起こします。障害が起こった静脈は、その走行に一致した赤い索状の拡張を示し、圧痛が見られるようになります。静脈炎は一次性静脈炎と二次性静脈炎に分類され、一次性静脈炎には閉塞性血栓性静脈炎、二次性静脈炎には血栓性静脈炎と限局性静脈炎があります。
犬の皮膚血管炎の原因とは
様々な原因によって引き起こされます。
皮膚血管炎とは、細胞浸潤による血管壁の破壊やフィブリノイド変性を基本とした病像を病院的主役としています。
皮膚血管炎の原因としましては、異種タンパクなどに対するⅢ型アレルギーが代表的であるとされています。その他に、薬物有害反応(ワクチンを含む)、感染症(細菌、原虫、ウイルス)、食物有害反応、昆虫刺咬症、内臓悪性腫瘍、エリテマトーデスなどが挙げられます。
Ⅲ型アレルギーとは
Ⅲ型アレルギーとは、抗原と抗体が結合したものである免疫複合体が組織障害を起こしている状態です。
犬の皮膚血管炎の好発品種について
全犬種で好発します。
皮膚血管炎は様々な原因によって引き起こされるため、どのような犬種でも起こり得ます。
犬の皮膚血管炎の予防方法について
原因となる疾患の早期発見、早期治療をおこないます。
皮膚血管炎はⅢ型過敏症や感染症など様々な原因によって引き起こされます。原因となる疾患の早期発見、早期治療が皮膚血管炎の予防につながると言えます。
犬の皮膚血管炎の治療方法について
免疫調整薬の投与をおこないます。
皮膚血管炎が疑われかつ軽症例では、ペントキシフィリンと呼ばれる免疫調整薬の投与がおこなわれます。これに対して重症例では、プレドニゾロン、アザチオプリン、シクロスポリンなどの免疫調整薬を単独または併用することもあります。
血流改善を目的として褥瘡・皮膚潰瘍治療薬であるブラクデシンナトリウムの軟膏を塗布する場合もあります。
治療開始から2か月以内に治療を中止できる場合もありますが、中止すると臨床症状が再発する場合には長期間の投与が必要となります。