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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の白血病とは

犬ではリンパ球が腫瘍化するリンパ性白血病がよくみられます。

白血病とは、血液の癌の1種であり、犬では白血球の1種であるリンパ球が腫瘍化するリンパ性白血病がよくみられます。リンパ性白血病は、急性リンパ芽球性白血病と慢性リンパ性白血病に分類されます。

犬の白血病の症状とは

急性リンパ芽球性白血病

多くの場合、末梢血中においても腫瘍細胞が出現しており、骨髄中の腫瘍細胞増殖による骨髄癆により、貧血、血小板減少症、好中球減少症が認められます。肝臓および脾臓への腫瘍細胞浸潤がよく認められ、臓器腫大や腹部膨満により持続的な食欲不振が引き起こされます。リンパ節、腎臓、消化管および神経系などの臓器が障害されることにより、消化器症状や神経症状などさまざまな臨床症状が認められます。

慢性リンパ性白血病

犬の慢性リンパ性白血病の症例の多くは無症状であり、健康診断や麻酔前検査などにおいて、リンパ球増加症による白血球増加症が偶発的に見つかって診断にいたることが多いとされています。なかには、軽度の元気消失や食欲減退、下痢、リンパ節腫大のために受診して診断されることもあります。
身体検査においては、可視粘膜や皮膚の蒼白、体表リンパ節の腫大(軽度であることが多い)、脾腫や肝腫が認められることがあります。
血液検査においては持続的なリンパ球増加症が存在することによって慢性リンパ性白血病を疑うことになります。リンパ球増加症の持続が慢性リンパ性白血病の大きな特徴になりますが、症例によってはリンパ球数が短期間のうちに進行性に増加することもあります。

犬の白血病の原因とは

急性リンパ芽球性白血病

急性リンパ芽球性白血病は、骨髄中におけるリンパ芽球あるいは前リンパ球のクローナルな自律増殖を特徴とする造血器腫瘍です。
急性リンパ芽球性白血病では通常、末梢血中における幼若細胞の出現を伴った白血球増加が認められます。確定診断には骨髄検査が必要であり、多くの場合で骨髄は過形成で、白血球細胞が大部分を占めています。

慢性リンパ性白血病

腫瘍化を起こしたリンパ系細胞が分化能を有しているために成熟リンパ球が増加する疾患で、腫瘍性病変の原発部位が骨髄である場合に慢性リンパ性白血病と呼ばれます。
犬の慢性リンパ性白血病でもっとも多い病型はT細胞型慢性リンパ性白血病であり、その他にB細胞型慢性リンパ性白血病、異常な免疫学的表現型の慢性リンパ性白血病があります。

犬の白血病の好発品種について

以下の犬種で好発がみられます。

急性リンパ芽球性白血病は、5~6歳と比較的若い犬で発症することが一般的とされています。

慢性リンパ性白血病は、高齢で発症することが一般的であるとされ、平均年齢は10~11歳とされています。ジャーマンシェパード、ゴールデンレトリバーに好発するという報告もありますが、B細胞型慢性リンパ白血病に関しては、ケアーンテリア、シーズー、ジャックラッセルテリア、ビションフリーゼ、ポメラニアン、ミニチュアダックスフンドなどの小型犬に好発するとされています。

犬の白血病の予防方法について

早期発見、早期治療をおこないます。

白血病は予防が難しいため、早期発見、早期治療が重要になります。

犬の白血病の治療方法について

急性リンパ芽球性白血病

急性リンパ芽球性白血病は予後不良であるとされていますが、化学療法により治療効果がある程度期待できます。一般的にはリンパ腫の標準的なプロトコールに基づき、多剤併用プロトコールが用いられます。
貧血や血小板減少症が重度である場合、新鮮全血輸血や濃厚血小板血漿輸血をおこない、さらに好中球減少による二次感染の治療・予防のために広域スペクトルの抗菌薬を併用するなど、積極的な支持療法をおこなう必要があります。

慢性リンパ性白血病

犬の慢性リンパ性白血病の症例の多くは無症状であり、治療をおこなわなくても問題なく通常の生活を送ることができますが、貧血やリンパ節腫脹の進行に伴って一般状態が低下する症例も存在します。疾患の活動性が強い場合には治療を開始することが推奨されます。
犬の慢性リンパ性白血病の治療においては、臨床症状や血球減少症が軽度でリンパ球増加の速度が緩徐な場合にはプレドニゾロンが第1選択となることが多いです。治療反応性が認められたら徐々に減量し、可能であれば中止します。
プレドニゾロンによる治療反応性が不十分な場合は、抗がん剤が用いられることがあります。

犬の慢性リンパ性白血病の生存期間の中央値は、T細胞型慢性リンパ性白血病では930日、B細胞型慢性リンパ性白血病では480日、異常な免疫学的表現型の慢性リンパ性白血病では22日とされています。

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