犬の軟骨肉腫とは
骨にできる腫瘍です。
軟骨肉腫は犬では2番目に多い骨腫瘍で、犬の骨腫瘍全体の5~10%を占めます。
犬の軟骨肉腫の症状とは
発生部位によってさまざまな症状が見られます。
犬の軟骨肉腫でもっとも発生が多い部位は、鼻腔内とされています。その他肋骨、長骨(主に四肢)、骨盤、骨外性(乳腺、心臓弁、大動脈、喉頭、気管、肺、大網)、脊椎、顔面骨、指骨および陰茎骨で発生の報告があります。骨外性は軟骨肉腫の約1%程度であり、少ないとされています。
軟骨肉腫は一般的に骨肉腫と比較して転移率は低いとされていますが、アグレッシブな挙動をとる未分化な軟骨肉腫も存在します。軟骨肉腫全体での転移率は20%で、鼻腔内での発生はそのほかの部位で発生した軟骨肉腫と比較して転移が少ないとされています。四肢の軟骨肉腫の転移率は28%とされています。
犬の軟骨肉腫の原因とは
発生の原因は不明です。
軟骨肉腫の発生原因の多くは不明とされています。
診断としましては、画像検査やその他のシグナルメントなどでも骨肉腫などのその他の骨腫瘍と鑑別はできないため、組織生検による病理組織学的検査によって確定する必要があります。治療前にステージングを目的に胸部X線検査を実施して転移の有無を確認し、血液検査や尿検査などをおこない、治療が実施可能か判断する必要があります。
犬の軟骨肉腫の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- ゴールデンレトリバー
診断時の平均年齢は8.7歳、性差を報告されていません。ゴールデンレトリバーがその他の犬種と比較して発生のリスクが高かったという報告があります。
犬の軟骨肉腫の予防方法について
早期発見、早期治療をおこないます。
軟骨肉腫は予防が難しいため、早期発見、早期治療が重要になります。
犬の軟骨肉腫の治療方法について
局所の治療が重要になります。
犬の軟骨肉腫は骨肉腫と比較して転移率は低い傾向にあり、外科療法や放射線療法などの局所治療がより主体となります。いずれの部位に発生した場合も、軟骨肉腫の治療でまず重要なことは局所のコントロールになります。外科手術が可能な状況では外科手術(断脚術など)
を実施します。四肢あるいは肋骨の軟骨肉腫ではそれぞれ断脚と肋骨を含めた胸壁切除による拡大切除を実施します。
外科手術が不適応な部位やもっとも発生が多い鼻腔内では放射線療法が適応となります。鼻腔内の軟骨肉腫に対しては長期的な治療成績を期待する場合には標準分割照射(週3~5回を4週)が適応になりますが、病変の状況によっては定位放射線治療(1週で3回など)が適応となる可能性もあります。低分割照射(週1回を4週など)では麻酔の回数や費用の負担などは減りますが、総線量が減るため有効性も低下します。
犬の軟骨肉腫は骨肉腫と比較して転移率が低いため、一般的には十分な局所治療が実施できた場合は補助化学療法を適応しない場合が多いとされています。しかしながら、集学的治療が必要な場合や組織学的グレードが高い場合は補助化学療法を検討します。
軟骨肉腫における緩和治療としましては、骨肉腫と同様に主に骨溶解に対する疼痛緩和が挙げられます。疼痛緩和としましては、積極的な放射線療法から一般的な鎮痛薬までさまざまであるとされています。断脚は痛みを元から絶つという意味では緩和治療としましても有効です。
予後
腫瘍の発生部位と組織学的グレードが予後因子であると報告されています。
鼻腔内軟骨肉腫の生存期間中央値は様々な治療により210~580日(放射線療法単独、鼻切開術と放射線療法、鼻切開術単独などの積極的治療を実施した場合)と報告されています。犬の鼻腔内軟骨肉腫では転移はまれです。
肋骨軟骨肉腫でも生存期間中央値は幅があり、最近の報告では1080~3820日と言われています。
四肢の軟骨肉腫は断脚術単独の生存期間中央値が979日ですが、組織学的グレードが予後因子であり、転移率と生存期間中央値はグレード1(低悪性度)で0%と6年、グレード2(中悪性度)で31%と2.7年、グレード3(高悪性度)で50%と0.9年であったとされています。