猫の外傷性脱臼とは
強い外力によって関節が外れた状態です。
脱臼とは、関節部分に外力がかかることによって正常な関節の構造が失われ、骨が本来の位置からずれてしまった状態を指します。
骨と骨の間には関節があり、よく知られる股関節や膝関節など大きな関節以外にも、指を構成する小さな骨の間や、背骨の骨の一つ一つの間にも小さな関節がたくさん存在します。
関節の役割は骨と骨をつなぎ、関節面が滑らかに滑ることによって筋肉の力を骨に伝え、自在に曲げ伸ばしできるようにすることです。
関節があることによって動物は柔軟に体を動かすことができます。
脱臼が起こると関節による滑らかな動きがなくなり、筋肉の力で骨を動かすことができなくなったり、動きがぎこちなくなったりします。
脱臼は全身の関節どこでも起こる可能性がありますが、多くの場合は股関節や膝関節、肩関節、肘関節など、四肢の関節で起こります。
また猫では尻尾の脱臼も割と多く見られます。
脱臼が起こると足や尻尾がダランとして動かなくなる、関節が腫れて痛みが起こるなどといった変化がおこるため、飼い主さんも異常には気づきやすいと思います。
できるだけ早く病院へ連れて行き、治療してもらいましょう。
猫の外傷性脱臼の症状とは
関節が腫れて力が入らなくなります。
脱臼が疑われる症状には以下のようなものがあります。
・元気、食欲低下
・動かずにじっとしている
・びっこを引いて歩く(跛行)
・四肢や尻尾がダランとする
・関節が腫れている
・体を触ると痛がる
・足の長さが違う
関節が完全に外れた状態を脱臼、不完全に外れた状態(正常な位置からずれた状態)を亜脱臼といいますが、いずれの場合も痛みが生じることが多く、特に歩行状態に異常が見られます。
尻尾の脱臼が起こった場合には、尻尾の中を走る神経が損傷したり引っ張られたりする影響によって、排尿や排便がうまくできなくなってしまうことがあります。
猫の外傷性脱臼の原因とは
交通事故や転落が原因です。
関節は骨と骨の組み合わせだけでなく、周囲を包む関節包や靭帯などによって強固に支えられた構造をしています。
そのため、よほど強い力がかからなければ簡単には脱臼しません。
猫の脱臼は交通事故や高所からの転落などによって関節に強い力がかかって起こります。
ドアなどに挟んで起こります。
室内でドアなどに挟んでしまい、尻尾の脱臼が起こることがあります。
飼い主さんが猫に気付かずに勢いよくドアを閉めた時などに誤って挟んで発生します。
猫の外傷性脱臼の好発品種について
好発する品種はありません。
特にありません。
猫の外傷性脱臼の予防方法について
室内飼育で交通事故の危険は回避できます。
交通事故によるけがを予防するためには、室内飼育を徹底することが最も効果的です。
環境を整備しましょう。
滑る床は高所からの着地の失敗による脱臼の原因になりえるため、滑りにくいマットを敷くなど床が滑らないように工夫しましょう。
すべての窓には網戸を付ける、ベランダには出さない、目の届かない時には極力窓を開放しないなど、窓からの転落を防ぐための配慮も必要です。
足先のケアも重要です。
爪が伸びて丸まっていたり、肉球の間の毛が伸びて肉球が隠れてしまっている状態(特に長毛種)も、滑って不慮のケガをする要因になります。
爪や肉球のケアも定期的にしてあげましょう。
猫の外傷性脱臼の治療方法について
脱臼の整復を試みます。
脱臼が起こって間もない場合は、麻酔をかけて関節を整復し、包帯などで外固定することによって治ることがあります。
例えば股関節脱臼などでは、麻酔をかけて脱臼を整復したのち、足を曲げた状態で患肢をテーピング固定して数日経過観察し、数日後に固定を外して状態を確認します。
外科治療を行います。
関節を支える靭帯や関節包の損傷が重度な場合や、脱臼して時間が経っている場合は、整復しても再脱臼してしまうことが少なくありません。
その場合は金属による関節固定や靭帯の再建手術、あるいは股関節では大腿骨頭を切除する等、脱臼部位の状況に合わせた外科治療が行われます。
補助療法で関節の状態を改善します。
脱臼が起こった部位は炎症や痛みが強く起こるため、消炎鎮痛剤による治療も併用します。
また、関節を保護するサプリメントなども関節の状態を改善するのに効果がある場合があります。
尻尾の脱臼では神経の障害により、排便・排尿がうまくできなくなることがあるため、投薬治療によって便を柔らかくして排便しやすくしたり、膀胱の収縮を補助するお薬を投与したりします。