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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬アデノウイルス感染症とは

ウイルス性の感染症です。

犬伝染性肝炎は、犬アデノウイルスⅠ型による重篤な感染症です。子犬や若齢犬で高感受性であり、肝炎をはじめとした全身症状、神経症状を引き起こします。ブルーアイとよばれる目が青白く変化する特徴的な症状を持ちます。

犬においてコアワクチンの対象とされている疾患であり、混合ワクチンの定期的な接種で予防することができます。

犬伝染性肝炎は人に対する感染性を持っていませんが、犬が一度感染すると症状が治まってから半年以上ウイルスを排出するキャリアーとなり、他の犬に感染を広げる可能性が高くなります。場合によっては持続感染を起こし、体内から排除できないこともあります。

犬伝染性肝炎は、重篤な症状の他、その後の犬と飼い主のQOLを大きく乱す疾病です。確実なワクチン接種を行い、感染を防いでください。

犬アデノウイルス感染症の症状とは

甚急性・急性型

甚急性型では突然に起こる体調の劇的な悪化、高熱・虚脱を症状として1日ほどの短期間で死亡します。急性型では甚急性型のように発症し1日で死亡しなかった状態です。甚急性型ほど予後が悪くはなく、十分な抗体産生がみられた場合、1~2週間で症状は良化します。

急性型の初期では高熱、元気・食欲消失、嘔吐、下痢、腹痛などの症状がみられ、体内ではウイルス感染拡大に伴った扁桃の炎症、肝臓の腫大、腎炎、血管炎がみられます。肝臓や血管のダメージにより血液成分が体腔に漏れ、腹水の貯留としてみられる場合もあります。

回復期の症例の20%程度に角膜の浮腫(組織中の水分が増し、腫れた状態)が起き、ブルーアイとよばれる眼が青白く変化する特徴的な症状がみられます。

軽症型・不顕性型

症状が軽いものを軽症型、症状はないが感染が成立しているものを不顕性型といいます。軽症型ではブルーアイのみ観察される場合もあります。

慢性活動性肝炎型

急性型の初期の強い症状を耐えたが、十分な抗体が産生されずウイルスを完全に排除できなかった状態を指します。ウイルスが持続感染しており、慢性の肝炎を続発し、体外にウイルスを排出し続けます。

犬アデノウイルス感染症の原因とは

アデノウイルスⅠ型の感染が原因です。

犬アデノウイルス感染症の好発品種について

全犬種で好発します。

ウイルスによる感染症であり好発犬種は存在しません。

犬アデノウイルス感染症の予防方法について

ワクチンの正しい接種により予防します。

犬におけるコアワクチンの対象の感染症(犬アデノウイルスⅠ型感染症、犬ジステンバー感染症、犬パルボウイルス感染症)であり、一般的に混合ワクチンと呼ばれる種類のワクチン(3種、5種、7種混合ワクチン等)を接種し、免疫を付けることで予防できます。

アデノウイルスⅠ型は症状から回復したあとも腎臓に感染し続けることで、半年以上の長期間、尿からウイルス粒子を排出し続けます。また、症状によってはウイルスが持続感染を起こし、一生ウイルスを排除できない場合があります。

ウイルスキャリアとなってしまった犬は、他の犬にアデノウイルス感染症を伝播する可能性が高いため、散歩などの外出を極力控えた生活を行う必要があります。犬にとって散歩は大きな生きがいの一つであり、これを制限することはQOLの著しい低下といっても過言ではありません。

我々飼い主がワクチンを接種させることで防げる感染症であり、防げる悲劇でもあります。確実なワクチン接種をお願いします。

犬アデノウイルス感染症の治療方法について

主に対象療法をおこないます。

犬アデノウイルスⅠ型の感染に対する特効薬はありません。輸液、嘔吐が見られる場合は制吐剤、細菌などの二次感染、甚急性型、急性型で続発するショック症状に対する治療などを行います。

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