犬の誤飲・誤食とは
異物や十分に咀嚼できてない食べ物を飲み込んでしまう事故です。
犬が異物や噛み切れなかった食べ物などを飲み込んでしまうことです。誤食・誤嚥は消化管閉塞や誤嚥性肺炎などの疾患に続発することが多く、特に誤食による消化管閉塞は消化管壊死や重責、消化管穿孔などを引き起こし、劇症型腹膜炎を介してショックにより死に至る可能性がある危険な疾患です。
誤食・誤嚥では内容物のでない頻回の嘔吐や、便秘の症状がみられます。同時に壊れたおもちゃや、ビニールや紐などの残骸などの食べ残した異物を発見することが多く、診断の助けになります。
誤食・誤嚥の発生から治療開始までの時間が非常に重要であり、異物が胃にある場合比較的簡単に除去できますが、腸管まで通過してしまうと必要に応じて緊急の開腹手術を行います。発生から数時間がターニングポイントであり、床に落ちた異物や嘔吐などの兆候に気が付いたらすぐさま動物病院を受診してください。
犬の誤飲・誤食の症状とは
異物等の塞栓により、窒息、消化管閉塞が引き起こされます。
異物が食道付近で閉塞を起こした場合、内容物のない頻回の嘔吐、気管が圧迫されることによる咳や窒息、チアノーゼなどの症状が引き起こされます。
異物が胃や、腸管で閉塞を起こした場合、内容物のない頻回の嘔吐がみられ、時間の経過により下痢や便秘、赤~黒の血液が混じった便などの症状がみられるようになります。
異物の腸管での閉塞は、腸管をうっ血させることによる壊死や、腸管に刺激が加わることでの重積(腸管が折り返し構造になる、うっ血による壊死を招く)、弱った腸壁を異物が突き破る消化管穿孔が続発する危険性があります。
消化管の壊死は、血液内への細菌の侵入を引き起こし敗血症性ショック。消化管穿孔は消化液や細菌叢の腹腔への漏出を引き起こし、劇症性腹膜炎を介したショックにより犬を死に至らしめます。
犬の誤飲・誤食の原因とは
犬用おもちゃ、ひも、布、野菜の芯や骨などの犬が口にするものすべてが原因になります。
異物や噛み切れなかった食べ物を飲み込むことが原因になります。よく誤食・誤嚥でみられる異物としては、犬用おもちゃ、ボール、ビニール袋、布や毛布の断片などがあり、拾い食いした野菜の芯、固めで繊維質の犬用おやつなども誤食・誤嚥で摘出されます。
原因異物の中でひも状異物とトウモロコシなどの野菜の芯、鳥の骨などは特に危険です。ひも状異物は腸をコイル状にたぐりよせることでうっ血や壊死を併発した高度な消化管閉塞を起こす原因になり、トウモロコシの芯や鳥の骨は飼い主の善意で与えられることが多く、鳥の骨はかみ砕いたときの形状が鋭利であり、容易に消化管穿孔を引き起こします。
犬の誤飲・誤食の好発品種について
全犬種で好発します。
誤嚥・誤食はあらゆる犬種で発生します。好奇心旺盛でなんでも口にいれてしまう子犬や、レトリーバーやビーグル、フレンチ・ブルドックなどの食欲旺盛な犬ではより注意すべきです。食欲旺盛な傾向が強い大型犬ではときにテニスボールをそのまま誤食し、消化管閉塞をおこすことがあります。
犬の誤飲・誤食の予防方法について
犬が届くところに誤飲・誤食の原因物を置かないことで予防できます。
誤食・誤嚥は犬のせいではありません。私たち飼い主の不注意が原因になります。十分すぎるほど犬に気を配ることで予防することができます。
床や犬の手が届く範囲にビニールや布などの犬が口にしそうなものを置かない。犬のおもちゃは人の管理下で遊ばせる、一人遊び用のおもちゃはよく選び、壊れにくく飲み込めない形状のものにする。安易に人の食べ残しを与えない。犬の性格を考え、おやつを丸のみする子には固いおやつを与えないなど、犬が誤食・誤嚥を起こさないように飼い主が気を配ってあげることで、事故は予防することができます。
犬の誤飲・誤食の治療方法について
異物の嘔吐、もしくは外科的な除去をおこないます。
異物がまだ胃にあるのであれば、催吐剤により嘔吐させることで異物を取り出せる可能性が高いです。
異物が食道や胃で閉塞を起こしている場合、内視鏡を用いて経口的に取り出すことができますが、状況によっては外科的に除去します。
異物が腸管で閉塞を起こしてしまっている場合、緊急の開腹手術を選択します。