犬の子宮がんとは
子宮にできる腫瘍のことを言います。
犬の子宮腫瘍は比較的まれであり、中高齢での発生が多いとされています。
犬の子宮がんの症状とは
初期は無症状ですが、進行すると消化器症状が見られることがあります。
犬の子宮腫瘍は偶発的にみつかることが多いですが、腫瘍が大きくなった場合には、排尿困難や便秘、しぶり、食欲不振、嘔吐、腹部膨満、体重減少などが生じます。腹腔内に存在して巨大化しない限りは全身への悪影響は少ないとされていますが、まれに骨盤腔内で大きくなり、不動化した場合には、深刻な排便、排尿障害を引き起こします。
発情周期の異常や外陰部からの分泌物などが認められることもあります。また、子宮腫瘍が子宮を閉塞し、子宮蓄膿症を引き起こすことがあります。
ジャーマンシェパードの場合、多発性の皮膚結節が認められることがあります。
腫瘍が小さい場合にはX線検査で確認できないことがありますが、腹部超音波検査やCT検査は有用であり、子宮の病変や腹腔内臓器への転移を確認することが可能です。腫瘍が大きい場合には、超音波ガイド下での生検が実施できます。
犬の子宮がんの原因とは
平滑筋腫、平滑筋肉腫が見られます。
犬の子宮腫瘍は比較的まれな疾患と言われており、中高齢での発生が多いとされています。多くの場合は、間葉系腫瘍であり、その中の約90%が平滑筋腫、残りの約10%が平滑筋肉腫であると報告されています。その他の腫瘍はまれであり、線維腫、線維肉腫、脂肪腫、脂肪肉腫、リンパ腫、腺癌などが認められています。
子宮腫瘍がまれと言われる要因として、避妊手術を受けている犬が多いということが挙げられますが、避妊手術後の残存子宮からの平滑筋腫の発生が見られることもあります。
平滑筋腫は徐々に増大し、周囲組織への浸潤や転移は生じないとされています。平滑筋肉腫の増殖速度は一般的には平滑筋腫と比較して速いとされていますが、遠隔転移の発現はステージの早期には認められないことが多く、末期もしくは高悪性度の症例で、癌性腹膜炎、腹腔内臓器および肺などへの転移が起こります。
犬の子宮がんの好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- ジャーマンシェパード
ジャーマンシェパードは、多発性子宮平滑筋腫、両側性の腎臓の嚢胞状腺癌、結節性皮膚線維症により特徴づけられる症候群が報告されており、遺伝子変異が関連していると考えられています。
犬の子宮がんの予防方法について
避妊手術を受けることが予防につながります。
子宮にできる腫瘍ですので、避妊手術(卵巣子宮摘出術)を受けることで予防することができます。ただし、子宮の切除に際しては、子宮頸部を含めて切除することが平滑筋腫の発生を予防する上で大切とされています。
避妊手術を受けていない場合は、偶発的に見つかることが多い疾患であるため、早期発見は難しいかもしれませんが、腹部膨満などの気になる症状が見られたらすぐに動物病院を受診するようにしましょう。
犬の子宮がんの治療方法について
卵巣子宮摘出術をおこないます。
子宮腫瘍に対しては、腫瘍の外科的摘出にて治療します。卵巣子宮摘出術が適応となります。外科手術時には、腹腔内を注意深く観察し、異常がある場合には生検をおこないます。
化学療法の有用性については明らかになっていませんが、組織学的悪性度が高く、脈管浸潤がある場合は、補助療法として、シスプラチンまたはカルボプラチンの全身もしくは腹腔内投与、ドキソルビシンの全身投与等を実施することもあります。
原発巣が巨大で手術により完全摘出が困難な場合には、まず放射線治療を実施して、腫瘍の縮小を試みたのちに摘出手術を実施することもあります。
予後
犬では子宮腫瘍の多くは良性であるため、卵巣子宮摘出術は根治的治療となります。悪性腫瘍であっても、限局した腫瘍で完全切除ができれば予後は良い傾向にありますが、転移が認められたり、外科的切除が実施できない場合は予後は悪いとされています。