犬の血友病とは
先天性の出血性疾患です。
血友病には血友病Aと血友病Bがあり、血友病Aは血液凝固因子の第Ⅷ因子、血友病Bは第Ⅸ因子の先天的欠乏による出血性疾患です。犬における先天性血液凝固因子欠乏疾患の中でもっとも一般的な疾患の1つとされています。血友病Aは血友病Bと比較してより一般的であるとされています。
犬の血友病の症状とは
出血症状を示します。
血友病における出血症状は、皮下血腫、筋肉内や関節内出血、体腔内出血など身体の深部で生じます。症例の中には、日常生活では出血傾向が認められず、手術や外傷の際に異常出血が起こって血友病を疑うことになる場合もあります。
犬の血友病の原因とは
遺伝性の出血性疾患です。
血友病Aは血液凝固因子の第Ⅷ因子、血友病Bは第Ⅸ因子の先天的欠乏による遺伝性の出血性疾患です。犬における先天性血液凝固因子欠乏疾患の中でもっとも一般的な疾患の1つとされており、血友病Aは血友病Bと比較してより一般的であるとされています。血友病はX染色体性劣性遺伝であるため、通常は雄での発症となります。キャリアとなる雌では、出血症状は認められません。
血友病ではAPTTの延長を認めます。血小板数、プロトロンビン時間、フィブリノゲン、アンチトロンビン活性、D-ダイマーには異常値を認めません。診断は、肝疾患や播種性血管内凝固などAPTTの延長を生じる後天的要因が存在しないことを問診、身体検査、血液検査、画像検査などにより確認したうえで、血液凝固因子の活性測定により第Ⅷ因子活性または第Ⅸ因子活性の著しい低下を明らかにすることによっておこなわれます。
健常犬の凝固因子活性を100%とした場合、第Ⅷ因子活性が2%未満を重症、2~5%を中等症、6~20%を軽症としますが、凝固因子活性のレベルと臨床徴候が相関しないこともあります。
犬の血友病の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- エアデールテリア
- ジャーマンシェパード
- セントバーナード
- フレンチブルドッグ
- ラブラドールレトリバー
- ワイマラナー
血友病の好発犬種としましては、エアデールテリア、ジャーマンシェパード、セントバーナード、フレンチブルドッグ、ラブラドールレトリバー、ワイマラナーなどが挙げられます。
犬の血友病の予防方法について
発症の予防方法はありません。
血友病の発症を予防することはできません。しかし、罹患動物の繁殖を制限することで血友病罹患犬の増加をコントロールすることができます。犬の遺伝性疾患は罹患犬の同系交配を避けることで罹患する犬の増加を抑制することが可能となり、継続して遺伝性疾患の繁殖制限をすることが全ての遺伝性疾患の根本治療につながると言えます。
犬の血友病の治療方法について
血液凝固因子の補充をおこないます。
犬の血友病の治療は、急性出血時にその出血を止めるための血液凝固因子の補充を目的とした輸血療法が治療の主体となります。
出血時や手術前には、血液凝固因子の補充を目的とした輸血を実施します。正常犬における血液凝固因子活性を100%とすると、十分な止血効果を得るためには出血が止まるまでの間はすくなくとも25~30%の凝固因子活性を維持する必要があるとされています。単回の輸血で出血防止効果が得られることもありますが、第Ⅷ因子および第Ⅸ因子の血中半減期は十数時間と比較的短いため、8~12時間ごとに輸血が必要になることもあります。
皮下血腫は、血腫の拡大や再出血を抑えるために包帯などで圧迫します。興奮や激しい動きをすると再出血することがあるので安静を保つようにしましょう。抗線溶薬のトラネキサム酸はその止血補助効果を期待して用いることがあります。
予後
血友病における予後は症例により異なります。血友病Aでの第Ⅷ因子活性の低下の程度は、臨床徴候の重篤度、輸血必要回数、および長期予後を測定するうえであまり有用ではないことが報告されています。