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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の骨髄異形成症候群とは

骨髄の異常によって血球減少症が引き起こされる疾患です。

骨髄異形成症候群は、骨髄中の異常な造血幹細胞がクローン性に増殖することにより、各系統の血球において無効造血および異形成が生じ血球減少症が引き起こされる疾患です。犬ではまれな疾患であると考えられています。

犬の骨髄異形成症候群の症状とは

血球減少に由来する症状がみられます。

骨髄異形成症候群で認められる臨床症状としましては、血球減少に由来するものが一般的とされています。活動性や食欲の低下といった一般状態の低下の他、白血球減少による感染を伴う場合は発熱、血小板減少が重度の場合は様々な出血傾向などを認めることがあります。しかしながら、まったく臨床症状を示さず、血液検査で偶発的に血球減少症が認められる症例も存在します。

犬の骨髄異形成症候群の原因とは

原因は不明な点が多いとされています。

人医学領域においては、造血幹細胞における染色体や遺伝子の様々な異常が骨髄異形成症候群発症の原因として解明されており、その一部が病型分類の基準としても応用されています。しかしながら、犬においては遺伝子異常も含め、その原因に関して不明な点が多いとされています。また、骨髄異形成症候群の特徴として、一部の症例が後に急性骨髄性白血病へと進行するため、人医学領域においては前白血病段階であるとされていますが、犬の骨髄異形成症候群に関しては、急性骨髄性白血病への進行に関する報告は少なく、同様の挙動をとるかは不明です。

犬の骨髄異形成症候群の好発品種について

全犬種で好発します。

どの犬種でも起こり得ます。

犬の骨髄異形成症候群の予防方法について

発症の予防方法はありません。

骨髄異形成症候群の発症の予防方法はありません。早期発見、早期治療が重要になります。

犬の骨髄異形成症候群の治療方法について

免疫抑制療法、支持療法などをおこないます。

現在獣医学領域において、骨髄異形成症候群に対する統一された治療方針は存在しません。そのため、人医学領域における指針を基に治療されています。

人医学領域においては、臨床症状を伴わない場合は慎重な経過観察が中心となり、臨床症状を伴う場合には免疫抑制療法、サイトカイン療法、レナリドミドやアザシチジンによる治療が検討されています。一方で獣医学領域においては、ほとんどの症例で治療介入が必要となります。レナリドミドやアザシチジンの効果に関しては、獣医学領域においては検討されていないため、免疫抑制療法やサイトカイン療法による治療が実施されます。

人間の骨髄異形成症候群の一部では、血球減少症に免疫学的な機序が関与していることが示唆されているため、免疫抑制療法が適応となります。そのため、犬の骨髄異形成症候群でも免疫抑制療法が実施されます。第1選択薬は副腎皮質ステロイド薬のプレドニゾロンであり、免疫抑制量で使用します。この治療に対する反応性が認められら後には、プレドニゾロンの用量を漸減して経過を観察します。
プレドニゾロン単剤により治療に反応が認められない症例も多く、その場合には免疫抑制薬の併用を開始します。また、プレドニゾロンに反応が認められた症例でも、用量の減量が困難でプレドニゾロンの副作用が問題となる場合は、免疫抑制薬を併用します。

難治性の場合は、エリスロポエチン製剤やG-CSF製剤の投与を検討します。また、貧血を呈する症例や、血小板減少症による出血を認める症例においては、輸血が重要な支持療法となります。その他に、好中球減少症により細菌感染を併発している症例に対しては抗菌薬を使用します。

予後

免疫抑制療法に反応の認めた症例の予後は良好とされていますが、治療反応が認められない症例においては輸血依存の状況に陥ります。また、継続的な輸血に伴う副作用の発生、感染症や出血のコントロール不良などが問題となります。

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