猫の胃の腫瘍とは
主にリンパ腫が発生します。
腫瘍は高齢になると様々な部位にできることがありますが、胃にできる腫瘍もあります。
猫でみられる胃の腫瘍の大半はリンパ腫で、他には腺癌や腺腫、平滑筋肉腫や平滑筋腫などがあります。
リンパ腫、腺癌、平滑筋肉種は悪性腫瘍、腺腫や平滑筋腫は良性腫瘍ですが、リンパ腫以外の腫瘍の発生は比較的稀です。
胃の腫瘍は嘔吐や食欲不振といった消化器症状をよく起こしますが、初期にはなかなか症状が出ないことも多く、また猫は毛玉を吐く習性があることから、1~2回吐いただけでは飼い主さんもあまり気に止めないこともあるため、気づいた時には進行してしまっていることが多い病気です。
ヒトのように定期健診でバリウム検査や内視鏡をすることがない動物たちですが、食欲の低下や継続する吐き気など、ちょっとした変化を見落とさずに、できるだけ早い段階で発見して治療してあげたいものです。
猫の胃の腫瘍の症状とは
消化器症状が現れます。
胃の腫瘍では主に消化器症状が現れます。
以下のような症状に注意が必要です。
・食欲不振
・吐き気
・嘔吐を繰り返し、その頻度が徐々に増える
・吐いたものに血が混ざる(赤~チョコレート色)
・便が真っ黒になる
・痩せてきた
・元気がない
・貧血
腫瘍が大きくなればなるほど症状は重度になりますが、初期にはあまり症状を示さないこともあるため、早期発見が難しい病気でもあります。
腫瘍が大きくなると、お腹を触った時にしこりとして触知できることがあります。
腫瘍部分は粘膜面が潰瘍状になり表面から出血することが多いため、貧血が見られたり、吐いたものに血が混ざる、あるいは出血した血が消化管内で消化液の作用を受け、便の色が黒くなる、といった変化も見られることがあります。
腺癌という腫瘍では、腫瘍の細胞が膵臓から分泌されるインスリンと似たような物質を分泌し、低血糖とそれに伴うけいれんを起こすことがあります。
猫の胃の腫瘍の原因とは
腫瘍の発生原因は不明です。
猫の胃の腫瘍で最も多いのはリンパ腫です。
リンパ腫は血液の腫瘍で、様々な臓器やリンパ節、皮膚に病変を作りますが、消化器のリンパ腫の発生も非常に多く見られます。
リンパ腫の発生機序は不明で、どんな猫にでも起こりますが、猫白血病ウイルスや猫エイズウイルスに感染している猫では発症リスクが高くなります。
リンパ腫以外では、胃の消化液を分泌する腺から発生する腫瘍(腺癌・腺腫)や平滑筋から発生する腫瘍(平滑筋肉腫・平滑筋腫)もありますが、その発生は稀で、発生原因はやはり不明です。
猫の胃の腫瘍の好発品種について
好発する品種はありません。
特にありません。
猫の胃の腫瘍の予防方法について
ウイルス感染を予防しましょう。
全ての腫瘍に当てはまるわけではありませんが、猫白血病ウイルスや猫エイズウイルスに感染しているとリンパ腫などの腫瘍性疾患の発症リスクが高くなります。
これらのウイルスへの感染を予防することは、腫瘍性疾患の予防策の一つにもなります。
ウイルスは主に感染猫との濃厚接触やケンカによって感染します。
室内飼育を徹底し感染している外猫との接触を断つ、同居猫に感染猫がいる場合には生活環境を分ける、予防接種を受けるなどといった方法で感染を予防してあげましょう。
猫の胃の腫瘍の治療方法について
内科治療を行います。
胃の腫瘍で最も多いリンパ腫は、抗がん剤に対する反応が比較的良い腫瘍です。
針生検などの検査でリンパ腫と診断がついた場合には、手術ではなく初めから抗がん剤や分子標的薬というお薬での治療を行うことが多くなります。
しかし腺癌や平滑筋肉腫の場合は、抗がん剤治療は劇的な効果は期待できないため補助的に実施され、治療の第一選択としては外科手術が選択されます。
外科手術で切除します。
胃の腫瘍の多くは、発見時にかなり大きく成長しており、腫瘍からの出血によって貧血などもみられます。
針生検などの検査でリンパ腫と診断された場合以外や、リンパ腫でも腫瘍からの出血・消化管閉塞などが問題になっている場合には、手術で腫瘍を切除します。
術後は病理検査の結果をもとに、抗がん剤治療などの補助療法を行います。
支持療法も重要です。
胃の腫瘍では食欲不振や繰り返す嘔吐、出血などによって全身状態が悪い場合も少なくありません。
そのため、点滴や吐き気止め、高栄養の食事などで体調を整えてあげる必要があります。
出血に対しては止血剤や鉄剤・葉酸などを補給して出血を抑え、貧血の回復を図りますが、緊急性の高い重度の貧血に対しては輸血を検討します。
また、治療として抗がん剤治療を選択した場合にも、副作用として嘔吐や下痢、食欲不振が見られることがあります。
このような場合にも点滴などで体調を整えてあげることは非常に大切です。