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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の変性性脊髄症とは

神経変性疾患です。

犬の変性性脊髄症は、犬の脊髄に発症する神経変性疾患です。

犬の変性性脊髄症の症状とは

進行性の麻痺が見られます。

変性性脊髄症の臨床症状としましては、後肢の運動失調に始まり、後肢の上位運動ニューロン性不全麻痺、下位運動ニューロン性麻痺へと進行します。麻痺はやがて前肢にも見られるようになり、四肢の完全麻痺から横臥状態へと進行します。そして最終的には呼吸筋の麻痺によって発症から約3~4年で死亡します。終末期には声のかすれや舌麻痺など脳幹部症状が見られることもあります。全病期にわたって疼痛は認められません。また、最期まで意識や知能に異常は認められず、食欲が残っていることが多いです。

犬の変性性脊髄症の原因とは

遺伝子の変異が関与していると考えられています。

変性性脊髄症の原因としましては、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子の変異が関与していると考えられていますが、その詳細な病態メカニズムは明らかになっていません。

病理組織学的には脊髄全域における白質の軸索変性と脱髄を特徴しており、尾側胸髄でもっとも重度の変性が認められます。脊髄神経細胞内には変異型SOD1蛋白の凝集体が蓄積します。

確定診断は脊髄の病理組織学的検査によって行われるため、生前診断は臨床症状、SOD1遺伝子検査、類似症状を示す他のに脊髄疾患の除外、の3つを組み合わせた臨床診断となります。

犬の変性性脊髄症の好発品種について

以下の犬種で好発がみられます。

変性性脊髄症は、ジャーマンシェパードやボクサーなどの犬種で報告されていますが、日本国内においてはウェルシュコーギーペンブロークでの発症が多いです。

犬の変性性脊髄症の予防方法について

発症の予防方法はありません。

変性性脊髄症は遺伝性疾患であり、発症を予防することはできません。しかし、遺伝子検査を行い変異遺伝子を持っている動物や罹患動物の繁殖を制限することで変性性脊髄症罹患犬の増加をコントロールできる可能性があります。

犬の変性性脊髄症の治療方法について

根本的な治療方法は確立されていません。

残念ながら現在までに変性性脊髄症の治療方法は確立されていません。しかし、約3年かけて進行する慢性疾患であることから、様々な支持療法を行うことで症例のQOLを維持することは可能です。そのためには、早期の診断と病態の評価を行い、適切なケアを行うことが重要です。

変性性脊髄症に対する有効な薬物療法は確立されておらず、ステロイドやNSAIDsは治療効果が無いことが示されているため治療に用いることはありません。逆にステロイドやNSAIDsが効果を示す場合は、主病因が変性性脊髄症ではない可能性を示唆します。

変性性脊髄症の病態から抗酸化ビタミンやサプリメントが病態の進行予防に効果があると期待されていますが、生存期間の延長などの効果は客観的には証明されていません。

ステージ別のケア

・ステージ1
後肢の運動失調~上位運動ニューロン性不全麻痺が見られる時期であり、6~12か月かけて進行します。この時期は、積極的な理学療法が推奨されています。自力歩行が可能であれば積極的に散歩を行うなど運動量を維持します。後肢の運動失調により爪周囲の擦過傷を起こしやすいため、靴下などにより肢端の保護を行います。車椅子を早期に導入することは運動量の維持に有用です。

・ステージ2
後肢の上位運動ニューロン性不全麻痺により自力歩行が不可能な時期であり、発症後9~18か月の時期で認められます。尿失禁が見られるようになるため、排泄のケアを行うことが重要になります。尿失禁が見られても、膀胱には常時尿貯留が持続するため、膀胱炎を起こしやすくなります。必要に応じて圧迫排尿を行い、膀胱炎を起こしていたら抗菌薬の投与を行います。疼痛を伴わないため、動かない下半身を引きずって積極的に動き回ることがあります。そのため、積極的に車椅子を使用することによりQOLの維持を図ります。

・ステージ3
後肢の完全麻痺と前肢の筋力低下が認められる時期であり、発症後14~24か月の時期になります。前肢の虚弱が進行し、自力での体位変換が困難になってきたら積極的に体位変換をおこなうなど、褥瘡ができないような介護が必要になります。

・ステージ4
四肢麻痺を呈する時期であり、発症後24か月以降に認められます。呼吸機能の低下に対して酸素ボンベや酸素濃縮機の活用を検討します。また、呼吸機能の低下に伴って体温調節機能に負担がかかるため、温度調節も必要になります。嚥下障害や舌の機能障害が見られる症例では誤嚥しやすくなるため、少量頻回給与やシリンジなどを用いた飲水の補助が必要となります。

予後

現在のところ変性性脊髄症に対する根本的な治療方法は確立されておらず、予後は不良と言えます。病態の進行時期は症例によってばらつきがあるものの、平均で発症から3年で死亡します。

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