犬の頸椎すべり症(ウォブラー症候群)とは
大型犬や超大型犬での発生が多い頸椎疾患です。
ウォブラー症候群は、大型犬や超大型犬で発生が認められる頸椎疾患です。ウォブラー症候群は、頸部脊髄と神経根への圧迫が原因となり症状を呈します。
犬の頸椎すべり症(ウォブラー症候群)の症状とは
歩様失調から始まり、四肢不全麻痺へと進行することがあります。
臨床症状は数週間から数か月にわたって緩徐に進行することがほとんどであるとされています。ときとして頸部痛が認められることがありますが、典型的な症状は後肢の歩様失調から始まり、固有位置感覚の低下~消失が観察されます。症状の進行に伴い歩行不可能な四肢不全麻痺へと進行することがあります。
グレートデーンでは症状の進行が緩徐であり、症状発生から受診までに1~2年経過していることもあります。
犬の頸椎すべり症(ウォブラー症候群)の原因とは
頸部脊髄と神経根への圧迫が原因となり症状が認められるようになります。
ウォブラー症候群は、頸部脊髄と神経根への圧迫が原因となり症状を呈しますが、その原因は、椎間板の突出、黄色靱帯の肥厚、関節突起の骨関節症、脊柱管狭窄などさまざまです。
ウォブラー症候群には、動的病変と静的病変が存在します。静的病変は主に椎間板狭窄に起因します。脊髄の圧迫は骨または椎間板に起因します。動的病変とは、頸椎の位置により圧迫が悪化または改善する病変のことになります。動的病変の有無は治療法の選択にもかかわるため、ウォブラー症候群における静的・動的病変の判断は重要になります。
ウォブラー症候群は半数の症例では複数個所に原因病変を有し、好発部位はC5-6、C6-7であるとされています。
犬の頸椎すべり症(ウォブラー症候群)の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- グレートデーン
- ドーベルマン
- バーニーズマウンテンドッグ
- マスティフ
若齢の超大型犬に発生が認められ、グレートデーン、ドーベルマン、バーニーズマウンテンドッグ、マスティフなどが代表的な発生犬種として知られています。
犬の頸椎すべり症(ウォブラー症候群)の予防方法について
栄養管理、ハーネスの装着などが予防につながる可能性があります。
ウォブラー症候群の発症は、犬種による部分が大きいので予防は難しいと言えますが、幼少期に過度な運動をさせないこと、成長期に適切な栄養素を与えてこと、などがウォブラー症候群発症の予防につながる可能性があります。
また、首に大きな負荷がかからないように、首輪ではなくハーネスをつける、首輪やチョークを急に引っ張らない、強く引っ張らない、なども重要となります。
犬の頸椎すべり症(ウォブラー症候群)の治療方法について
保存療法
保存療法の基本は動物の活動に起因した動的な脊髄圧迫を最小限にすることにあります。そのため、運動制限が主軸となります。ハーネスによる最低限の運動は可能ですが、チョークチェーンの使用や制限のない運動は控えるべきとされています。
副腎皮質ホルモン剤の内服を2~3週実施することがありますが、その有効性に関するエビデンスは乏しいとされています。NSAIDsを副腎皮質ホルモン剤の代わりに使用することも可能です。
外科療法
外科療法の選択は、保存療法への反応が乏しい、疼痛や歩様失調などの臨床症状の重症度、生活環境、年齢などさまざまな要因が存在しますが、明確な基準は存在しません。
さまざまな手術手技が考案、実施されいますが、どの手術を選択すべきかは各症例の脊髄圧迫の程度、原因、方向、治療部位数により個々に選択する必要があります。いずれの手技を選択する場合も、その目的は脊髄の直接的な間接的な減圧にあります。
術後は疼痛管理、および創部の適切な管理が必要となります。術後の理学療法は症例の神経学的状況および創傷治癒の状況にもよりますが、術後早期から開始します。歩行可能であっても術後2~3か月は厳密な活動制限を実施し、首輪やチョークチェーンの使用は生涯行わず、ハーネスを使用します。
予後
ウォブラー症候群は、内科的管理ではおよそ半数の症例で改善が認められ、手術の実施により約80%の症例で症状の改善が期待できます。また、術後の再発率は20%程度であるとされています。