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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の脊髄空洞症とは

脊髄内の異常な液体貯留を特徴とする疾患です。

脊髄空洞症は、さまざまな病因を持ち、脊髄内の異常な液体貯留を特徴とする疾患です。

犬の脊髄空洞症の症状とは

疼痛が認められます。

脊髄空洞症の主な臨床症状としましては、疼痛により突然鳴く、立ち上がる、ジャンプする、抱き上げたときに鳴く、などの行動を呈すること(非神経原性疼痛)、痛みによる異常行動、異痛症(正常であれば痛みを感じない刺激によって生ずる痛み)、頸部に触れないまま掻く動作をする、などの感覚異常(神経原性疼痛)などが挙げられます。

寝ているときの通常でない頭部の位置、側弯症などの症状を認める場合もあります。その他、前肢の虚弱や筋萎縮、後肢の運動失調や虚弱、歩行異常などが認められます。

キアリ様奇形による脊髄空洞症の症例においては、てんかん発作を起こすことが多いとされています。

犬の脊髄空洞症の原因とは

さまざまな原因疾患が挙げられます。

脊髄空洞症を発症する原因疾患としましては、キアリ様奇形を含む頭頸接合部症候群(環椎軸椎不安定症、頭蓋環椎軸椎奇形など)、脊髄腫瘍、脊髄外傷、くも膜炎を起こす炎症性疾患、水頭症などがあります。さらに原因不明で発生する場合もあります。
空洞形成のメカニズムには諸説があり、脊髄空洞症の発生メカニズムには、中心管の拡大を中心とした説、血管周囲からの流入を中心とした説、などがあるとされていますが、犬における脊髄空洞症の多くがキアリ様奇形によるものです。

犬の脊髄空洞症の好発品種について

以下の犬種で好発がみられます。

キャバリアキングチャールズスパニエル、チワワ、ポメラニアン、マルチーズ、ヨークシャーテリアなどで発症が認められますが、とくにキャバリアキングチャールズスパニエルが好発犬種とされています。

犬の脊髄空洞症の予防方法について

先天性疾患が原因となるため予防は難しいと言えます。

脊髄空洞症の原因疾患の多くは先天性の疾患であるため、発症の予防は難しいと言えます。
しかしながら、罹患動物の繁殖を制限することで脊髄空洞症罹患犬の増加をコントロールすることができます。犬の遺伝性疾患は罹患犬の同系交配を避けることで罹患する犬の増加を抑制することが可能となり、継続して遺伝性疾患の繁殖制限をすることが全ての遺伝性疾患の根本治療につながると言えます。

犬の脊髄空洞症の治療方法について

内科療法

脊髄空洞症の内科療法としましては、非神経原性疼痛にはNSAIDs、神経原性疼痛には抗てんかん薬のガバペンチンやプレガバリン、神経異常には脳脊髄液産生減少薬や副腎皮質ホルモン薬の投与をおこないます。また、疼痛が改善しない場合は薬剤の種類を変更または多剤投与をおこなう場合があります。

外科療法

脊髄空洞症の外科療法は、主にキアリ様奇形に対する治療によるものが多く、後頭骨と第一頸椎の椎弓を切除して、脳脊髄液の通路を確保する後頭骨拡大術になります。その手術手技は、硬膜切開に続く造袋術、硬膜切除後に人口硬膜を使用する形成術、チタンメッシュを利用した後頭骨形成術など、さまざまな方法が報告されています。その他、くも膜下腔ー空洞シャント術、水頭症による空洞症の場合は脳室ー腹腔シャント術などがおこなわれています。

予後

キアリ様奇形の場合、内科療法をおこなった症例において、75%で症状が悪化し、25%で症状が安定または改善したと報告されています。しかしながら、飼い主は受け入れると報告されており、効果はあるとされています。外科療法をおこなった症例においては、後頭骨拡大術によって80%で疼痛の制御ならびに神経学的異常の改善がみられたと報告されています。
長期予後では、0.2~3年以内に手術をおこなった症例の25~47%で再発または症状の悪化がみられています。キアリ様奇形の場合、拡大術をおこなっても脊髄空洞症は残り、くも膜下腔ー空洞シャント術では、約80%の症例で神経症状の改善がみられたとされています。

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