犬の人間や犬の薬による中毒とは
人間の薬および犬の薬の誤食によって中毒を起こす可能性があります。
犬は、薬によって中毒を起こす可能性があります。人間の薬によっては少量の誤食でも中毒を超こす可能性があり、犬の薬はその症例の感受性および大量に誤食することなどで中毒を起こす可能性があります。
ここでは、3種類の薬を紹介いたします。
犬の人間や犬の薬による中毒の症状とは
アセトアミノフェン中毒
アセトアミノフェン中毒の臨床症状は、摂取1~4時間後から現れ、流涎、顔面の浮腫、沈鬱、嘔吐、チアノーゼ、血尿、貧血などが認められます。メトヘモグロビン血症になると過換気が認められます。
血液検査では、ハインツ小体、メトヘモグロビン血症、肝酵素値の症状の有無、尿検査で血色素尿を確認します。
メトロニダゾール中毒
メトロニダゾール中毒の臨床症状としましては、食欲不振、嘔吐とともに、四肢不全麻痺、運動失調、測定過大、垂直眼振、頭位性眼振、企図振戦などの中枢前庭/小脳症状がみられます。
イベルメクチン中毒
イベルメクチン中毒の臨床症状は、P糖蛋白質異常のある犬では少量のイベルメクチンで発症しますが、過剰投与では正常な犬でも主に神経症状を発症します。初期には流涎、運動失調、振戦、見当識障害、脱力感、発作、横臥、昏迷、散瞳、失明などがみられます。他には、嘔吐、下痢、徐脈、不整脈、高体温などがみられます。重度では、中枢神経抑制と昏睡などを生じます。
犬の人間や犬の薬による中毒の原因とは
アセトアミノフェン中毒
アセトアミノフェンは人間の一般用医薬品として販売されている製品に含まれています。解熱鎮痛薬、感冒薬の70%以上の製品の主成分です。犬の中毒量は150~200mg/kgとされています。
メトロニダゾール中毒
メトロニダゾール中毒は感受性にかなりの個体差があるとされています。中毒のメカニズムの詳細は不明ですが、メトロニダゾールがシナプス後膜にあるGABA受容体複合体のベンゾジアゼピン受容体に結合して症状を起こすと考えられています。
イベルメクチン中毒
一部の犬種では、細胞膜上に存在し化合物などの細胞外排出のポンプ機能を有するP糖蛋白質をコードする遺伝子であるABCB1-β(MDR1)に異常発現が認められることが知られています。これらの遺伝子変異を有する犬ではイベルメクチンの副作用が発現しやすいことが知られています。
犬の人間や犬の薬による中毒の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- オーストラリアンシェパード
- オールドイングリッシュシープドッグ
- コリー
- シェットランドシープドッグ
- ジャーマンシェパード
- ボーダーコリー
誤食、過剰投与などはどの犬種でも起こり得ます。
イベルメクチン中毒は、コリー、シェットランドシープドッグ、ボーダーコリー、オーストラリアンシェパード、ジャーマンシェパード、オールドイングリッシュシープドッグなどで見られることがあります。
犬の人間や犬の薬による中毒の予防方法について
薬の誤食をさせないようにしましょう。
犬は好奇心が強く、薬なのか中毒物質なのかなどを判断できないため、飼育環境中に犬が届く場所に薬を置かないようにしましょう。
また、飼い主の自己判断で犬に薬を与えないようにしましょう。
犬の人間や犬の薬による中毒の治療方法について
アセトアミノフェン中毒
アセトアミノフェン摂取から2時間程度以内であれば、催吐薬の投与および胃洗浄をおこないます。
血圧低下やショックが認められる場合には、循環動態を安定させるために輸液をおこないます。呼吸機能を維持させるために酸素供給や人工呼吸をおこないます。
アセトアミノフェン中毒に対しては、アセチルシステイン投与によりアセトアミノフェン代謝産物の抱合および排泄を増加させます。また、アスコルビン酸を投与してメトヘモグロビンを還元してヘモグロビンにすることで症状の軽減をはかります。
メトロニダゾール中毒
メトロニダゾール中毒の治療はメトロニダゾール投与の中止をおこないます。また、ジアゼパムを3日間投与すると回復までの期間が明らかに短縮します。ジアゼパムがメトロニダゾールとシナプス後膜にあるGABA受容体複合体のベンゾジアゼピン受容体との結合に拮抗するためと考えられています。
食欲不振、嘔吐などが認められる場合はそれらに対する対症療法が必要となることがあります。
イベルメクチン中毒
イベルメクチンの過剰摂取後1時間以内であれば催吐処置をおこないます。アポモルフィンやトラネキサム酸による催吐処置をおこないます。
活性炭はイベルメクチンを吸着する可能性があるため、経口投与をおこないます。
急性中毒では脂肪乳剤が有効であることが報告されています。