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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の進行性多発性関節炎とは

主にオス猫で見られる関節の炎症性疾患です。

動物の関節は、骨だけでなく軟骨や関節包、関節液が存在し、さらにその周りを筋肉や靭帯が囲んで補強して、骨と骨が直接ぶつからずに滑らかに曲げ伸ばしできる構造になっています。
この関節部分に炎症が起こると、軟骨がすり減る、炎症によって骨が増生する、関節液が溜まって関節が腫れたりするなどといった変化がおこるために、関節をスムーズに動かすことができなくなります。

猫の進行性多発性関節炎は、若齢から高齢の主にオス猫に発生する関節疾患で、複数の関節に進行性の関節炎が発生し、関節の変形や歩行に異常が見られる疾患です。
発生は比較的稀ですが、進行すると関節の破壊が起こってしまい立つことができなくなってしまうケースもあるため、早期診断・早期治療することが重要です。

猫の進行性多発性関節炎の症状とは

関節の炎症に加え、全身状態の悪化も見られます。

進行性多発性関節炎を発症した時の主な症状は、以下の通りです。

・発熱
・元気消失
・食欲不振
・歩くのを嫌がる
・嗜眠(寝てばかりいる)
・足をかばって歩く
・関節の腫れ
・関節の痛み
・関節の変形

発症初期には関節の変化が強くないことがあり、原因不明の発熱が続く、というような症状だけの場合もあります。

関節の炎症には2タイプあり、関節軟骨や骨が炎症によって破壊されて不整な状態になる「びらん性」と、そのような変化が見られない「非びらん性」に分けられます。

猫の進行性多発性関節炎では多くの場合がびらん性関節炎を起こすため、関節の腫れや変形が見られるタイプが多くなります。

関節の変化はレントゲン検査で明らかになりますが、初期には変化が弱くはっきりしない場合もあります。
診断のためには他に血液検査や関節液の検査を行います。

猫の進行性多発性関節炎の原因とは

感染性や免疫異常などが考えられます。

発症猫の3分の2が猫白血病ウイルスに感染していたという報告があり、猫白血病ウイルスの感染が関与している可能性があります。
また、猫エイズウイルスの感染も関与している可能性があります。

びらん性の関節炎は免疫抑制剤での治療によく反応するため、免疫異常が起こっているとも考えられており、ウイルス感染に対する猫の免疫反応の結果として生じる免疫複合体が関連しているのではないかともいわれていますが、まだ詳細は明らかになっていません。

猫の進行性多発性関節炎の好発品種について

好発する品種はありません。

特にありません。
理由はわかっていませんが、主にオス猫で見られる疾患です。

猫の進行性多発性関節炎の予防方法について

ウイルス感染を予防しましょう。

発症猫の多くにウイルス感染が認められていることから、ウイルス感染を予防することが予防策の一つになる可能性があります。

室内飼育を徹底しウイルス感染猫との接触を断つことが効果的ですが、既に同居猫に感染猫がいる場合などは予防接種などで免疫を付けて感染の拡大を防ぎましょう。

猫の進行性多発性関節炎の治療方法について

投薬治療を行います。

進行性多発性関節炎は、治療を行わないと徐々に進行して関節の破壊や変形が進み、重度の場合は歩行が困難になります。
関節の変形が重度になる前に治療を開始し、進行を抑制することが重要です。

治療はステロイド剤や免疫抑制剤などの投薬を行います。
ステロイドを使用する場合には初期には高用量での投薬が必要となるため、副作用として副腎皮質機能亢進症や糖尿病などの発症に注意しなければなりません。

投薬を開始すると関節の痛みや炎症が改善しますが、進行を完全に止めることはできません。
そのため、定期的に検診を受け、進行の程度や投薬による副作用のチェックなどをしながら投薬量を調整し、生涯にわたる治療が必要になります。

体重管理や環境整備も必要です。

関節に負担をかけないために、体重が増えすぎないようにすることも重要です。
一度関節に炎症が起こると歩きたがらなくなることが多く、また炎症がある状態での運動は関節に負担をかけて炎症を悪化させる可能性があるためあまりお勧めできません。
基本的には食事管理に気を付けて体重が増えすぎないようにしてあげることが必要です。

また、滑りやすいフローリングや高いところからのジャンプも弱った関節に負担を与え、脱臼や亜脱臼などを起こしてしまうこともあります。
生活環境を一度見直し、滑りにくいマットを敷いたり高いところに登れないようにするなど、ケガをしないような環境づくりに努めましょう。

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