猫の鉛中毒とは
鉛を経口摂取することで中毒症状を示します。
ワシなどの猛禽類で問題になる野生動物の鉛中毒は、鉛を使用した銃弾を誤って口にすることで発生しますが、猫では鉛を含んだ塗料・絵具、鉛を含む異物、埃などを誤って口にすることで鉛中毒を起こすことがあります。
経口摂取した鉛によって血中濃度が0.35~0.4ppmを超えると毒性の影響が見られるようになり、神経や胃腸管、血液の主要成分である赤血球の造血などに影響を及ぼします。
猫の鉛中毒はあまり一般的に起こる中毒ではありませんが、生活環境によっては発症の危険性が高い場合もあるため、注意が必要です。
猫の鉛中毒の症状とは
神経症状や消化器症状、造血異常がみられます。
摂取した鉛は胃酸と反応して吸収されるため、摂取後は亜急性~慢性に以下の様な症状の発現がみられます。
・嘔吐
・下痢
・食欲不振
・沈うつ
・執拗に鳴く
・不整脈
・神経症状
生活環境によって慢性的に中毒を起こしている猫では、赤血球の造血過程に異常が生じることで赤血球が脆く壊れやすくなり、貧血を起こしています。
また、成長期の若い猫で鉛中毒が起こると、骨の成長線である骨端線に鉛の沈着が起こり、鉛線という骨の硬化が見られます。
猫の鉛中毒の原因とは
鉛を含む物質の経口摂取によっておこります。
鉛中毒は、鉛を含む塗料や絵具、鉛弾、ハンダ、バッテリー、鉛管、釣りのおもりなどが原因となって起こるとされていますが、好奇心旺盛な若い犬でおこることが多いとされ、実際猫での発生はあまり多くはありません。
しかし、生活環境によっては発生の危険性は高まるため注意が必要です。
猫での発生としては、工房などで陶器に着色する絵具が被毛に付着し、それを舐めとったことによって発生した症例などが報告されています。
鉛は皮膚への付着や筋肉内に存在する場合には中毒は起こしませんが、経口摂取すると胃酸と反応して活性化し、体内に吸収されて毒性を示します。
猫が自発的に摂取しなくても、被毛などに付着してしまうとグルーミングの際に摂取してしまうため発症の危険性があります。
猫の鉛中毒の好発品種について
好発する品種はありません。
特にありません。
猫の鉛中毒の予防方法について
環境整備で鉛との接触を極力減らすことが必要です。
鉛中毒を予防するためには鉛との接触機会を減らすことが一番重要です。
被毛への付着や誤食を防ぐために、鉛を含む塗料やハンダを扱う作業場には猫を出入りさせないこと、鉛を含む小物(釣り具など)は猫が遊んで口にしないように管理を徹底することなどが中毒の予防につながります。
猫の鉛中毒の治療方法について
消化管の中に鉛を含む異物がある場合は催吐処置などを行います。
鉛が除去されないままでいると、治療を行っても新たに吸収された鉛の影響によって症状が悪化し重篤化してしまいます。
そのため、レントゲン検査で胃などの消化管内に鉛を含む異物の存在が確認された場合には、催吐処置や内視鏡、場合によっては外科手術などでできるだけ早く消化管内から鉛を除去することが重要です。
摘出できるような固形物ではなく、摂取からある程度時間が経過している場合には硫酸マグネシウムや硫酸ナトリウムというお薬を投与します。
これらのお薬は胃腸管の排泄を促進する作用を持ち、また鉛と結合して鉛を沈殿させ、吸収を阻害する作用も持っています。
体に吸収された鉛に対してはキレート療法を行います。
血液や体に吸収された鉛成分を除去するためにはキレート薬を投与します。
キレート薬とは特定の金属の成分と結合して活性を低下させることで毒性の発現を抑える薬剤のことで、鉛に対してはエデト酸カルシウム二ナトリウムやD-ペニシラミンというお薬がそれにあたります。
また、キレート剤ではありませんが、チアミン(ビタミンB1)を投与すると組織への鉛の沈着を減少させることができるとされています。
対症療法を積極的に行います。
既に何らかの症状が現れている場合には、その症状に対する対症療法も必要です。
痙攣などの神経症状を発症し、脳浮腫などを起こしている場合には脳圧を下げるために利尿剤やステロイド剤を投与し、必要に応じて抗けいれん薬を投与します。
上記のような治療と合わせ、症状に応じて輸液療法を行い、血中の鉛濃度が低下するまで慎重に経過を観察する必要があります。